グッバイ運命

星羽なま

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#7.執着-2-

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 夕方になっても汗が滲むほどの暖かい空気の中、悠透は瀬名社長と萩谷課長と共に、気分は沈みながら目的地へと向かう。
 今日の接待は得意先ではあるが、今まで無理を強いられたこともあり、苦手な相手なのだ。
 加えてこれまでの接待では一人だったが、今日は複数で来るという。
 車は料亭旅館へ到着し、重い腰を上げて車を降りた。車内で冷えた汗のせいか悪寒が走ったが、気持ちを奮い立たせ瀬名社長の後を追った。
 案内された部屋に入ると三人座っていて、この人たち全員が今日相手をする人だと理解する。
 先方の最上社長と後藤部長はおそらく五十代だろう。最上副社長は社長の息子であり、悠透と歳が近い印象を受けた。


 枕営業がある場合、事前に萩谷課長など他の人が接待済みのことが多く、大して取引についての会話はない。
 この日も自己紹介など軽く会話を交わした後、すぐに本題へと移った。

「今日は、萩谷くんも混ざったらどうだ?」

 悠透らが到着した時には既に酒で仕上がっていた、腹黒な最上社長がそう提案した。

「え、いえ、俺は大丈夫です。付き添いなので…」
「そんなつまらないこと言わないでよ~、せっかくの機会だよ?今日は三人希望で来たわけだし、一人増えるくらい…ね?相沢くんも大丈夫でしょ?」

 そう問われ瀬名社長と萩谷課長に目を向けると、二人とも明らかに不安そうな顔をしていた。
 しかしここで断れば、先方の機嫌を損ねることくらい容易に想像できる。
 それならもう、悠透に残された選択肢は一つしかなかった。

「良いですよ。その方が楽しめるならそうしましょう」
「やっ、お前…」
「良いじゃないですか。最上社長が仰ったようにせっかくの機会です。楽しみましょう?」

 萩谷課長の不安を減らせるよう、余裕そうに少し微笑みながら言ってみせた。
 そうして悠透、最上社長、最上副社長、後藤部長、そして萩谷課長五人で隣の部屋の、寝室へと入って扉を閉めた。
 きっと萩谷課長が一番苦痛であろう。無理矢理にでも勃起させ、好きでもない奴とセックスしなければいけないのだから。

「あれ、ローション仕込んで来たのかな?相沢くんは準備がいいね。私から挿れるよ。ほら、タケルは口で相手してもらいなさい」
「ん゙ぐっっ」

 スーツを脱いで全裸になるとすぐに、尻と口、両方とも容赦なく、一気に陰茎を突っ込まれる。
 タケルと呼ばれるのが最上社長の息子だが、最上社長と同じで優しさなど微塵もなく、さすが親子だと感じる。

「ねえもっと喉締しめて」
「ん゙ごっ」
「喉虐められるとケツが締まっていいね。私はもうイキそうだよ。ほらっ、相沢くんもイって。奥突いてあげるから」

 最上社長は必死に腰を振り、息を切らしながら気持ちの悪い言葉を吐く。
 全てが気持ち悪いと頭では感じているのに、身体は快楽を拾ってまんまと感じてしまう。

「ん゙ーっ」
「次タケルか後藤くん挿れていいよ。私は四人の乱交を観戦してようかな。相沢くん、面白いもの見せてね?」

 最上社長は一度射精してしまえば、そう言って部屋の端の方に座った。
 後孔には最上副社長の陰茎を挿入され、口では後藤部長の陰茎を咥えていたが、部長の方はあっけなく射精してしまった。
 そして後藤部長も部屋の端へと避けた。
 大体お偉いの人は年齢が高い人が多く、性交したとしても時間はそれほど長くない。
 とはいえ、今日は若い副社長がいる為長くなりそうである。

「相沢くんだっけ?気持ちいい?」
「んっ、ぅんっ、あぁっ」
「ま、聞くまでもないか」

 最上副社長に後ろを激しく突かれあまり余裕はなかったが、視界に入った最上社長が少し退屈そうにしていることは分かった。
 そして、萩谷課長はこの部屋に入ってからずっと、ドアの近くで立ち尽くし俯いている。
 お得意先をのがさない為だからと、萩谷課長に心の中で謝りつつ声をかける。

「はぎやっさ、ん…こっち…」
「え」
「ほらぁ、きて」
「相沢くん直々に呼んでるよ?ほらほら早く」
「は…い」

 重い足取りで目の前に来た萩谷課長のベルトを外してチャックを下ろし、ズボンとパンツを脱がせた。
 流石にまだ勃起はしておらず、悠透は不安そうな萩谷課長の陰茎を躊躇なく口に含んだ。

「おっ、い」
「課長も、ひもちよく、なって」
「んっ」
「おい、こっちも忘れんなよ。ケツちゃんと締めろ」
「ん゙ぁっ」

 最上副社長に強く尻を叩かれながら、思いっきり後孔の奥を突かれる。その勢いのせいで、萩谷課長の陰茎が喉まで入ってくる。
 容赦なく叩かれている尻も、嗚咽が出るほど陰茎が入ってくる喉にも痛みが走り最悪な状況だが、悠透の身体は何度も絶頂に達してしまう。

「イッく…あっ、悪い。口に…」

 後ろを突かれているせいで口を外す隙もなく、萩谷課長は悠透の口に射精した。
 だけどこんなことは慣れている。むしろ知らない人や、おじさんよりはマシだとさえ感じた。

「んぐっ」
「おい!飲むな」
「美味しい…ですよ」
「おまえ…」

 悠透の発言に萩谷課長は言葉を失い、哀れみとも取れる目を悠透に向けた。
 感情を殺してこの場にいるのに、そんな目で見られると思考が正気に戻りそうになる。
 だから可哀想な目で見ないでくれと、悠透は心の中で思いながら目を逸らした。

「さっきからイチャイチャしてんじゃねーよ、ほら仰向けになって顔見せろ」
「ぅあっ、いたっい…」

 萩谷課長と悠透の会話を不服に感じたらしく、最上副社長は陰茎を一気に抜き、悠透の体を強引に仰向けにさせた。

「今日は俺がたくさん突いてやるから、たくさんイけよ?」
「ん゙ん゙ っ、あ゙ぁ゙ 」
「イくときはちゃんと言え」
「ん゙ぁ゙っ、ゔっ…い゙ぐ…いぎ、ます…ん゙んっ!」
「きったねえ声、メスなんだから可愛く鳴けよ」

 声色から、最上副社長が嘲笑っているのがわかる。
 嘲笑にも、メスだと呼ばれることにも慣れてしまった自分に、少しだけ落胆する。

「でも相沢くんは最初よりたくさん鳴くようになったね?タケルのは気持ちいい?」
「ぎもぢいぃ、れす…あぁっ」
「今日は楽しいなあ」

 その後も、何度も何度も絶頂に達せられ、やっと解放された時には動けない程に疲弊しきっていた。
 起き上がれなかった悠透を放置して、他四人は部屋を後にした。
 親子ともども性格が悪すぎて、精神的にも結構削られる日になってしまった。
 横たわったまま無気力な状態でいると、また部屋の扉が開けられた。

「お疲れ様。大丈夫?」
「あ、はい。それより課長の方が…」
「俺は大丈夫、ありがとな。はい服」

 おそらく先方を見送った後、瀬名社長と萩谷課長が部屋へと戻ってきて、社長に心配そうに声をかけられた。
 萩谷課長は混ざることは初めてだったように見え、優しい人だから自分よりも気持ち的に苦しかったのではないかと、悠透はそちらの方が心配だった。
 だけど終わればいつも通りになっていて、萩谷課長の落ち着いた声に、安心感を覚える。

「ありがとうございます」
「準備できたら帰りますか」

 悠透は帰る準備をしようと、萩谷課長から服を受け取り着替え始める。
 着替え終えた後、ズボンのポケットに入れていたはずのスマートフォンが無いことに気づく。
 部屋を見渡すと脱いだスーツを置いていた辺りに落ちていて、どこかのタイミングでポケットから落ちたのだろうと何の疑いもなく拾った。

『会いたい』

 スマートフォンを拾い上げると画面が勝手につき、通知欄にはその一言だけが表示されていた。
 琉志から久しぶりに送られてきた言葉がそれで、喜ぶ資格などないが安堵はした。
 しかしその通知を押してチャット画面へと移ると、悠透は血の気が引いたように青ざめていく。

「…課長。俺のスマホ、触りました?」
「や、触ってないけど」

 数十分前、琉志からの着信が入っていて、しかも応答になっていたのだ。
 時間を計算せずとも、悠透が性行為真っ只中の時だと分かる。

「何かあった?」
「…友達からの着信に、応答になってて」
「あの社長だ…あいつ相沢の服の近くにいた」
「そう…ですか」
「悪い…俺が同じ部屋にいたのに。クソッ、あいつら性格が悪すぎる。社長!!前も言いましたけど、あの人達の態度は目に余るものがあるって。だからあんな会社とは取引しなくて良いと思いますって…!」
「うん…そう、だね」

 瀬名社長は枕営業に同席しないことも多く、逆に萩谷課長はほとんど同席している。
 青柳さんがいた頃も含めると、最上社長らの悪行を何度も目にしてきたのだろうと思う。
 萩谷課長が社長にそういう話をしていたなんてもちろん知らず、こんなに感情的になっている姿も初めて見た。

「俺は大丈夫なんで。課長も、今回は巻き込んですみませんでした」

 萩谷課長が必死に訴えかけてくれるのは、素直に嬉しいと思った。
 しかし、瀬名社長が取引をやめるという選択をできないことも理解できる。
 それなら自分が我慢をして続けていくのが最善の選択なのだと、悠透は思った。
 それに今回のことは、そもそも琉志にこの事を隠し、騙していた事が悪いのだ。つまりバチが当たったに過ぎない。
 だから瀬名社長も萩谷課長も、そんな自分を責めるような顔を、悠透を可哀想だと思う顔をしないでほしい。
 契約が継続するんだから喜んでくれよ…褒めてくれよ。俺、こんなに頑張ってんのに。



 いつも通り、萩谷課長に送られて家へ着到着した。
 マンションのエントランスの前に人が立っているのが見え、それが誰なのかはすぐに分かった。

「あっ、ユウト。久しぶり」

 少し気まずそうにしながらも、目を逸らすことなく真っ直ぐにこちらを見つめてそう言ったのは、今、悠透が一番会いたくない人だ。
 悠透は琉志以外の人たちと数えきれないほど体を交え、その数の分裏切って騙してきた。
 次の日琉志と会えるように、性交して帰れば何回も何回も、汚れを落とそうと体が痛くなるほどに洗って、汚い自分を必死に隠して…今まで上手くやってきたはずだった。
 知られてしまった上に、一番汚い状態で琉志に会ってしまうなんて…

 あーあ、もう。
 お前のその真っ直ぐな性格が、大好きだったはずなのに…今は正直、大嫌いになりそうだ。
 おまえといると、自分の汚さが、醜さが、情けなさが。余計目立って自分が嫌いになる。
 愛したものを嫌いになるくらいなら、おまえが生きる世界に、俺なんて存在しなければよかった。
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