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第一話

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 今は20XX年。
 私、栗原世衣加せいかは中学二年生。
今日はずっと楽しみにしていた修学旅行に行く……はずだった。
なのに私は、砂浜に横たわっていた。

 これじゃあ修学旅行に行けないじゃないの!
いや、今はそれどころじゃない。とにかく起きなければ。

 朝日が出ているからもう朝だろう。
辺りを見渡すと前は海、後ろは森、横は砂。
 はぁ、私の楽しい修学旅行……。どこへ行った。
 何でこんな事になったんだろう。


 まず、どうしよう。
って!? あそこに誰か倒れてる!?
私は倒れている人の方へすぐさま駆け寄る。
ん? これはゆかりちゃんだ!!

 彼女は高橋ゆかり。
ちょっと言葉はキツイけど、幼稚園の頃からの仲でもあり、私の大親友。一緒の中学なの。

「ゆかりちゃん! どうしたの!? こんな所で寝ちゃだめだよ~!」
大きく体を揺さぶると「んんっ?」と声がする。

「世衣加?」
ゆかりちゃんは砂から起きる。

「無事で良かった~」
私は反射的にゆかりちゃんに抱きつく。


「世衣加、突然で悪いけど、ここってどこ?」
ゆかりちゃんは体についた砂を払いながら辺りを見渡す。

 「私もついさっき意識を取り戻したばかりだから全く分かんないの」
私がそう言うと「そうなの……」と、残念そうにゆかりちゃんが俯く。

「あ。でもね! ゆかりちゃん。私、サバイバルは得意だから安心していいよ! まずは状況を把握することからしようよ!」
私はゆかりちゃんの背中をポンポンと叩いて励ます。

 私はよくお父さんお母さんとキャンプに行くし、サバイバル番組も欠かさず見てるもん!
 だから人よりはサバイバルが得意、と言える……だろう。

 私はゆかりちゃんの手を引き、小走で走ろうとしたら、ゆかりちゃんが急に立ち止まった。

「それじゃあ、サバイバルが得意な世衣加に質問。あそこから走ってきてるのって同じクラスの蒼太じゃない?」
ゆかりちゃんが私の手を振り払って右を指す。

「走ってきてるのって? ――うわぁっ!」
私が言い欠けていると急に人が目の前に走って来ているのに驚いて腰が抜けた。

 彼の名前は広瀬蒼太くん。私達のクラスメイト。
運動全般が得意で女子に人気。いつも休み時間になる度に周りは女子で埋め尽くされる。

 すると急に蒼太くんが声を荒立てる。
「何で俺達、無人島に居んだよ!?」
狼みたいに目の前で吠えられると耳が痛い……。

「急に走って来たと思ったらそんな事言われても……こっちが聞きたいわよ」
突然の言葉にゆかりちゃんが疲れたように言う。

「本当だよ。私達だって全然分かってないんだもん。……って! む、無人島!? こ、ここって人が居ないの?」
ゆかりちゃんに加勢している途中に蒼太くんが言ったことを思い出して私は言葉が止まる。

「そうよ、どうしてここが無人島だって断言するのよ!?」
ゆかりちゃんも問い詰める。

「俺達は一時間くらい前からこの島を調べてたんだよ! その結果分かったことはこの島には人が居ないことだ! この島すんごい狭かったから探しやすかったぞ」
そっか、と私達より先に蒼太くんは起きて調査をしてたんだ。
それなら納得だね。蒼太くん、狼みたいにいつも吠えてるけど根はいい子だから信用して大丈夫。
 
「蒼太。今、俺達って言ったわよね。私達以外にもこの島に人が居ると言う認識でで良いのかしら?」
あ、確かに蒼太くん俺達って言ってたね。
こんなとこまで気がつくなんてゆかりちゃん、いつもに増して鋭い……。

「そうだ! 俺以外にもこの島に数人居るぞ! 今から合流するからついて来い!」

「えぇ、案内を頼むわ」
ゆかりちゃんが蒼太くんについて行く後を私も追っていく。 私達は蒼太くんの案内の下、無人島に居る人が集まっている所に向かっている。
何人くらい居るのかとかどんな人が居るのかは全く聞いてないけど、無人島で三人だけの状況よりマシになるのは間違いないだろう。

 急に横から声がかかってきた。
「蒼太く~ん、遅いよぉ~。あれぇ、もしかして後ろにいるのってぇ、世衣加ちゃんとゆかりちゃん?」
この子、見覚えがある様な……。

「そうだ! 本田! やっと合流できたな!」
本田ってクラスの?

「本田さん!」
ゆかりちゃんがそう言うと私の記憶から彼女のことが思い浮かんできた。

 横から出て来たこの子は本田創ちゃん。
いつもふわふわ笑顔だけど機械が得意という一面も持っている不思議な女の子。
確かゆかりちゃんと一緒に学級委員をしているはず。

「本田さんもこの島に居たのね」

「そうなのぉ、二人も入れて六人来てるみたいなの~」
え、それだけ……? 私のイメージ、もうちょっと居るんだけど……。

「六人って事は私、ゆかりちゃん、蒼太くん、創ちゃん。残りの二人は?」
私が指折り数える。

「男子が二人~。司くんと陽太くんだよぉ」
成程、女子は三人か。半々で丁度いいね。

 えっと、一応名前が挙がった二人の紹介をしとく。
 一人目は再希笑さいきえ陽太くん。
名字が珍しいよね。
何かよく知らないけど分かってることと言えばお金持ちって事くらいかな。
だけどお金とかに関係なく、誰にでも優しいんだよね。
 で、二人目が隅田すみだ司くん。
こっちはもっとお金持ちで陽太くんと仲がいい。
いつもリーダーシップを持って行動している。
生徒会にも入っていて次期生徒会長候補トップらしい。

「現在二人はどこに居るのかしら?」

「えっとねぇ、確かぁ~、向こうの方で食料調達してるはずよぉ~」
そっか、無人島だから食べ物が探さないと無いんだ。
ご飯の事考えると、お腹空いてきたなぁ。

「なにか取れたのか!? 今ものすごく腹が減ってるんだが!」
どうやら蒼太くんもお腹が減っている様だ。
寝起きはお腹空くもんね。

「えっとねぇ、私が探しておいたのはここに置いてるきのみだよ~! 好きなのを取っていいわよぉ~」
私は「やったあ!」と直様食べ物に駆け付ける。

 私が取ったのはりんごの様な感じだ。
明らかに歪な形をしている。

「これは、りんごなのかしら?」
ゆかりちゃんは私が持っているりんごを横からチラチラ見てくる。

「多分そんなんだろ! 食えりゃ何でも良いんだよ!」
と、蒼太くんもりんごらしき物を「シャキッ」と音を立てて食べる。

 私も蒼太くんが食べたのを見て、食べてみる。
すると口の中に甘みと酸味が伝わった気がした。

「うん、甘くて美味しいよ!」
私は創ちゃんに感想を伝え、もう一口食べる。

「嬉しいわぁ~」

 うん、確かに美味しいけどこのりんごって、真っ青で不気味な感じがするなぁ。
味が良い分勿体なく感じる……。
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