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第二話
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あれ? ゆかりちゃん、りんごを手にとったものの口にしていない。
「ゆかりちゃん、食べないのぉ?」
創ちゃんは心配したように声をかける。
「だ、だってこれ、ほんとに無毒だって言えるのかしら? ほら、だってこれ、人が栽培して無いでしょ? 菌とかが付着していたら……。そもそも貴方達、こんな状況下に居て、そんな変なのを口にするのってどうなのかしら……? あぁ、考えるだけでも悍ましい……」
えぇ、まさか……そんな筈無いと思うけど……。
「ちゃんと水洗いしたし大丈夫だよぉ~」
創ちゃんがふわふわ流そうとしていると「でも……」と、ゆかりちゃんが続ける。
「でもでも、水洗いじゃ落ちないかも知れないし……。そもそもその水がキレイだって保証は無いのよ! それに……」
次から次へと不満を打ち込んでいくゆかりちゃんを抑え込む。
「私も蒼太くんも食べたから大丈夫だよ~。 ね、ね?」
私がそう言ってもゆかりちゃんは顔を顰めたままだ。
「でも、ゆかりちゃんが言いたいことも分かる気はするんだよねぇ。だってここの食べ物、どれも美味しいんだもん~」
「え、つまり本田さんはこの島の食べ物に毒が入っているかもと心配もせずに食べたの? しかもどれを食べてもと言える程の量を?」
ゆかりちゃんは鋭い目で創ちゃんを見る。
その目からは軽蔑すらも感じられる様な気がするのは私だけ……?
「私が食べたのはぁ、ここにある物だけだよ~。それを確認したのは司くんと陽太くんの二人と協力してだし~」
創ちゃんは手をブンブン振って「あはは~」と否定を続ける。
その姿からはオーラを感じられる。
ちょっと喧嘩っぽくなって来たのでは……。
「そんなのはどうでもいいがこの島の食べ物って何なんだ?」
蒼太くんが最後の一口を口に放り込みながら言う。
「このりんご、味は申し分無いけど色とか形とかおかしくないか? こんな種類、見たことも聞いたこともないぞ」
「でも青りんごって言うよ」
私はりんごを手にとって観察してみる。
「青りんごって言うけどぉ、緑じゃない~?」
創ちゃんが頬に人差し指を当てる。
「信号とかもそうよね」
うん、確かに。
「それよりも早く二人と合流しないと」
私が言うと蒼太くんはりんごを両手に取った。
「今度こそ二人の所へ案内、お願いするわ」
「海だ~!」
私が両手を広げて大きな声で言うと、ゆかりちゃんが白い目で見てくる。
その後ろに創ちゃんも、うわぁと後退りしている。
うぅ、今は遊べる状況じゃないか。
私達はあれから蒼太くんと創ちゃんの案内で再希笑陽太くんと隅田司くんと合流した。
二人はどうやら川で魚を釣ろうとしていたらしく、海に潜っていた。
いや、陽太くんだけが海に潜って司くんはそんなの嫌、って言ってマイ釣り竿を両手に握りしめていた。どうやって作ったんだか。
収穫は大量にあり、陽太くんが29匹。司くんが28匹。
どっちが多く釣れるか勝負していたらしく、負けていた司くんは悔しがっていた。
かなり取れてると思うんだけど、相手が悪かったね。
二人はいつも勝負してはどちらかが負け、悔しがっている日常を送っているから見慣れてきたなぁ。
「よし、皆揃った所で早速、作戦会議と行こうか」
砂浜に円になって座って、話し合いが始まった。
一応メンバーと顔を照らし合わせよう。
まず私、栗原世衣加。
次に右の高橋ゆかりちゃん。
左に居るのが隅田司くん。話を進めて行く司会的人物だ。
他には本田創ちゃん。
広瀬蒼太くん。
再希笑陽太くん。
この六人で無人島での困難を逃れることになるわけだ。
緊張してくる……。
やっとのことでメンバーが揃ったので話は進んでいく。
「まず話し合うべき事は、なぜ僕らがこの島に居るかだと僕は思う」
司くんは咳払いをしてから言う。
「そうね、まずは私がこの島に居る理由が知りたいわ」
ゆかりちゃんも賛同しているようだ。
私もそう思う。何でこの島に居るんだろう。
それに何故このメンバーになったのかも。
このメンバーって全体で見たら仲良しでは無い。
私とゆかりちゃん、司くんと陽太くんの二組しか仲良しは居ない。
だから仲良しが集まってこうなったとは思えない。
だけど何か共通点があるのかも。頭の隅に何かがあったような記憶がある様な気がしないでも無いけど……。
いや、難しい事を考えるのは辞めだ!
皆が完全にその事について話し合う流れになっている時に創ちゃんが「あのぉ」と恥ずかしそうに手を挙げる。
「確かにぃ、私も何でこの島に来てるのかは気になるんだけどぉ、それよりもぉ、今後について話し合ったほうが良いんじゃあないかなぁ? 食料は確保できてるけど寝泊まりする場所はどうするのよぉ。気候に対策とかも考えたほうが良い気がするぅ」
創ちゃんは手で顔を煽る。
確かに……。
アイス食べたいよぉ。
「確かに睡眠時間は必要だし、その事から考えよう。最初の方に起きた人はもう三時間以上動き続けてるから休憩も取りたいね」
陽太くんが司くんに創ちゃんの意見を伝える。
司くんは頷く。
「二人の言う通り、今後の事についてから考えることにしようか。その事について何か意見がある人は居るかい?」
と、皆の顔を見渡す。
「私、考えたことがあるの」
ゆかりちゃんがそう言うと、皆の視線がゆかりちゃんに集まる。
「一旦話は逸れるけど、この島について考えてみたことはある?」
皆は首をブンブン横にふる。
ゆかりちゃんは「はぁ」とため息を付いて言葉を始める。
「皆はおかしいと思わなかったの?」
「おかしい?」
私は首をかしげる。
「そうよ、この島はおかしい。考えてみて。本田さんが持ってきた食べ物について」
ゆかりちゃんは近くのりんごの山を指す。
「あぁ! そのりんご、美味しかったよな!」
蒼太くんはりんごを見て凄い勢いでりんごを手に取る。
「えぇ、確かに皆に勧められて食べたら意外と美味しかったわ。だけどこんな島に生えている食べ物、どれを食べても大丈夫な事ってあると思う?」
うーん、確かに普通の生活でも食べられない植物いっぱいあるもんね。
推理小説の探偵のようにゆかりちゃんは続ける。
「それに海水よ」
海水?
「ゆかりちゃん、食べないのぉ?」
創ちゃんは心配したように声をかける。
「だ、だってこれ、ほんとに無毒だって言えるのかしら? ほら、だってこれ、人が栽培して無いでしょ? 菌とかが付着していたら……。そもそも貴方達、こんな状況下に居て、そんな変なのを口にするのってどうなのかしら……? あぁ、考えるだけでも悍ましい……」
えぇ、まさか……そんな筈無いと思うけど……。
「ちゃんと水洗いしたし大丈夫だよぉ~」
創ちゃんがふわふわ流そうとしていると「でも……」と、ゆかりちゃんが続ける。
「でもでも、水洗いじゃ落ちないかも知れないし……。そもそもその水がキレイだって保証は無いのよ! それに……」
次から次へと不満を打ち込んでいくゆかりちゃんを抑え込む。
「私も蒼太くんも食べたから大丈夫だよ~。 ね、ね?」
私がそう言ってもゆかりちゃんは顔を顰めたままだ。
「でも、ゆかりちゃんが言いたいことも分かる気はするんだよねぇ。だってここの食べ物、どれも美味しいんだもん~」
「え、つまり本田さんはこの島の食べ物に毒が入っているかもと心配もせずに食べたの? しかもどれを食べてもと言える程の量を?」
ゆかりちゃんは鋭い目で創ちゃんを見る。
その目からは軽蔑すらも感じられる様な気がするのは私だけ……?
「私が食べたのはぁ、ここにある物だけだよ~。それを確認したのは司くんと陽太くんの二人と協力してだし~」
創ちゃんは手をブンブン振って「あはは~」と否定を続ける。
その姿からはオーラを感じられる。
ちょっと喧嘩っぽくなって来たのでは……。
「そんなのはどうでもいいがこの島の食べ物って何なんだ?」
蒼太くんが最後の一口を口に放り込みながら言う。
「このりんご、味は申し分無いけど色とか形とかおかしくないか? こんな種類、見たことも聞いたこともないぞ」
「でも青りんごって言うよ」
私はりんごを手にとって観察してみる。
「青りんごって言うけどぉ、緑じゃない~?」
創ちゃんが頬に人差し指を当てる。
「信号とかもそうよね」
うん、確かに。
「それよりも早く二人と合流しないと」
私が言うと蒼太くんはりんごを両手に取った。
「今度こそ二人の所へ案内、お願いするわ」
「海だ~!」
私が両手を広げて大きな声で言うと、ゆかりちゃんが白い目で見てくる。
その後ろに創ちゃんも、うわぁと後退りしている。
うぅ、今は遊べる状況じゃないか。
私達はあれから蒼太くんと創ちゃんの案内で再希笑陽太くんと隅田司くんと合流した。
二人はどうやら川で魚を釣ろうとしていたらしく、海に潜っていた。
いや、陽太くんだけが海に潜って司くんはそんなの嫌、って言ってマイ釣り竿を両手に握りしめていた。どうやって作ったんだか。
収穫は大量にあり、陽太くんが29匹。司くんが28匹。
どっちが多く釣れるか勝負していたらしく、負けていた司くんは悔しがっていた。
かなり取れてると思うんだけど、相手が悪かったね。
二人はいつも勝負してはどちらかが負け、悔しがっている日常を送っているから見慣れてきたなぁ。
「よし、皆揃った所で早速、作戦会議と行こうか」
砂浜に円になって座って、話し合いが始まった。
一応メンバーと顔を照らし合わせよう。
まず私、栗原世衣加。
次に右の高橋ゆかりちゃん。
左に居るのが隅田司くん。話を進めて行く司会的人物だ。
他には本田創ちゃん。
広瀬蒼太くん。
再希笑陽太くん。
この六人で無人島での困難を逃れることになるわけだ。
緊張してくる……。
やっとのことでメンバーが揃ったので話は進んでいく。
「まず話し合うべき事は、なぜ僕らがこの島に居るかだと僕は思う」
司くんは咳払いをしてから言う。
「そうね、まずは私がこの島に居る理由が知りたいわ」
ゆかりちゃんも賛同しているようだ。
私もそう思う。何でこの島に居るんだろう。
それに何故このメンバーになったのかも。
このメンバーって全体で見たら仲良しでは無い。
私とゆかりちゃん、司くんと陽太くんの二組しか仲良しは居ない。
だから仲良しが集まってこうなったとは思えない。
だけど何か共通点があるのかも。頭の隅に何かがあったような記憶がある様な気がしないでも無いけど……。
いや、難しい事を考えるのは辞めだ!
皆が完全にその事について話し合う流れになっている時に創ちゃんが「あのぉ」と恥ずかしそうに手を挙げる。
「確かにぃ、私も何でこの島に来てるのかは気になるんだけどぉ、それよりもぉ、今後について話し合ったほうが良いんじゃあないかなぁ? 食料は確保できてるけど寝泊まりする場所はどうするのよぉ。気候に対策とかも考えたほうが良い気がするぅ」
創ちゃんは手で顔を煽る。
確かに……。
アイス食べたいよぉ。
「確かに睡眠時間は必要だし、その事から考えよう。最初の方に起きた人はもう三時間以上動き続けてるから休憩も取りたいね」
陽太くんが司くんに創ちゃんの意見を伝える。
司くんは頷く。
「二人の言う通り、今後の事についてから考えることにしようか。その事について何か意見がある人は居るかい?」
と、皆の顔を見渡す。
「私、考えたことがあるの」
ゆかりちゃんがそう言うと、皆の視線がゆかりちゃんに集まる。
「一旦話は逸れるけど、この島について考えてみたことはある?」
皆は首をブンブン横にふる。
ゆかりちゃんは「はぁ」とため息を付いて言葉を始める。
「皆はおかしいと思わなかったの?」
「おかしい?」
私は首をかしげる。
「そうよ、この島はおかしい。考えてみて。本田さんが持ってきた食べ物について」
ゆかりちゃんは近くのりんごの山を指す。
「あぁ! そのりんご、美味しかったよな!」
蒼太くんはりんごを見て凄い勢いでりんごを手に取る。
「えぇ、確かに皆に勧められて食べたら意外と美味しかったわ。だけどこんな島に生えている食べ物、どれを食べても大丈夫な事ってあると思う?」
うーん、確かに普通の生活でも食べられない植物いっぱいあるもんね。
推理小説の探偵のようにゆかりちゃんは続ける。
「それに海水よ」
海水?
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