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55話 除草

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 次の日。

 宿屋を後にして、お昼から開店に向けて準備を進める。

 場所は昨日のところでもいいけど、中心部からかなり離れている。

 中心地は空地がないので、他の空地を探しながら歩き回った。

「ノア~あそこはどうかな?」

 セレナが指差した場所には確かに空地があったけど、建物の間の空地だった。

 異世界でも土地には前世のように持ち主がいる。

 中には持ち主がなく、町が管理する土地があって、そういう場所は一時的に屋台を出しても問題ないとされている。

 シーラー街や昨日屋台を開いた場所なんかがそういう類だ。

 その時、丁度通り掛かった若い女性が不思議そうに僕達を見つめた。

「あの~何が御用でしょうか?」

「実は僕達屋台を開こうと思っているんですが、この土地の持ち主さんは知りませんか?」

「ここは私の父の土地です」

 どうやら手に持った鎌からして、空地の雑草取りに来たようだ。

「もしよければ、今日一日この土地を貸してはもらえませんか?」

「え、えっと……まだ予定とかはないので、汚さなければ問題ありませんが……」

 雑草が伸び放題になっているからか、苦笑いを浮かべた。

「それならついでに僕達が片付けます。使用料は銀貨一枚でどうでしょう」

「そんなに!? 大銅貨一枚とかでいいですよ!」

 一等地の借地料で大銅貨一枚はあまりにも安価な気がする。

「それなら、大銅貨一枚と、除草と、ご家族の昼食をご馳走しましょう」

「はい。それでお願いします!」

 早速話し合いがまとまったので、僕達は除草を始めた。

 意外にもポンちゃんも魔法が得意で、風と雷、そして特別属性の氷に適正があるらしい。

 しかも神獣というだけあって【自然魔法】を意のままに使うことができるとのこと。

 ポンちゃんは背中に大きな刃物っぽい風魔法を展開させて、雑草の中を走り回る。

 伸びた雑草が面白いように倒れていく。

 あっという間に雑草が狩れたので、手分けしてそれぞれ一か所に集める。

 集まった雑草はミレイちゃんに水の壁を作ってもらって横に広がらないようにして、火をつけて燃やした。

 煙に誤解があってはならないので、ポンちゃんの風魔法で極細にして超高速で空に飛ばした。

 魔法って……本当に便利だな。僕も魔法使いになるべきかな……。

 除草が全て終わった頃、僕達がやっていることが面白いのか、周りに人が集まって見つめていた。

 最後にライラさんが優雅に挨拶をする。

「皆様。我々【自由の翼】の演目を楽しんで頂き誠にありがとうございました。本日、お昼から屋台【自由の翼】を開店します。とても美味しい食事を用意しておりますので、ぜひお越しくださいませ」

 しっかり宣伝をしてくれる。

 それにしても以前にもそう思ったけど、ライラさんはこういう演技が非常に上手いし、声も透き通っている。

 すぐに大きな拍手が起きて、見ていた人々が去っていった。

 片付けが終わったので、今度は屋台を建てる。

 せっかく敷地が広いので、道路に面した部分に食堂がくるように、敷地の端に屋台を建てる。

 こうすればお客様が増えても、前に並べられるし、通路の邪魔にはならないはずだ。

 暫く開店の準備を整えて、もしお客様が増えたらテーブルも出せるようにしつつも、来なかった場合は屋台だけで完結できるように色々進めた。

 そして、ティス町で初めての開店の時間になった。
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