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47話 フレンチトースト(三人称視点あり)
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「ノア? 何してるの?」
テントで画面を触っていた僕を不思議そうに見つめるセレナ。
僕の才能【アプリ】は画面操作が必要で、画面は僕以外には見えない。
「明日の朝食に良さそうなレシピがないか探しているんだ」
やっぱり朝食といえば、おにぎりにしたいんだけど、残念ながら米が手に入らない以上、おにぎりを課金しても作れない。
雑炊も米、丼ものも米だな。ここはやっぱり――――これにしよう。
銀貨三枚を投入して新しいレシピを手に入れた。
次の日。
顔を洗って、朝食の準備をする。
バレていそうではあるが、あまり堂々と【一秒クッキング】を見せたくはないので、相変わらずテントの中で【一秒クッキング】を使う。
今回使うのは――――
「フレンチトースト!」
こちらはコムギ粉と卵だけでも作れちゃうのだが、そこにハムの代わりになる肉を追加すれば美味しいフレンチトーストになる。【無限調味料】のおかげで砂糖も使い放題だが、実はここにもう一つ特別な魔法のようなことが起きる。
糖分を摂り過ぎてしまうと、色々病気にかかる恐れがある。
そこで【一秒クッキング】の【無限調味料】の利点。
味のみ追加され、体に栄養としては吸収されないのだ。まあ、異世界だから、そういう理想の調味料になっているとの説明文に書かれているが、詳しいことは僕にもよくわからない。
単純にどれだけ砂糖をたくさん入れても問題ないのだ。まあ、甘くし過ぎても美味しくなくなるので、調味料の量は味以外の心配は必要ないのだ。
プレートに出来上がったふわふわのフレンチトーストが現れて、すぐにテント内に甘い香りが広がっていく。
『ノア! は、早く食べたいニャ!』
外からポンちゃんの大声が聞こえて来る。
つばを飲み込んだミレイちゃんがプレートを運んでいく。
外では、エリナさんとシズルさんの悲鳴にも近い声が聞こえてきた。
僕も前世ではフレンチトーストをよく食べていたから、非常に楽しみでもある。
セレナとポンちゃん分だけは十人前三人前を用意してあげた。
みんなでテーブルについて両手を合わせて「いただきます~!」をして食べ始める。
ふわふわしたパンを、フォークで押し込むだけで綺麗に切れる。
甘い香りに心が躍る。
早速口に運ぶと、口の中に卵の旨さとパンのふわふわした触感が広がっていく。
「「「「うまあああああ~!」」」」
みんな顔が緩んでしまうくらいに美味しいようで、もぐもぐしている姿がとても幸せそうだ。
珍しくセレナもその目を光らせてもぐもぐと食べ続けていた。
やはり甘さは女性にとって最強の武器かも知れない。
朝食はやはり軽めのパンが正義だな。これからもフレンチトーストを朝食にはよく組み込もう。できればここに牛乳があれば最高だな…………次の町で買い込めたら買い込んでおこう。【異空間冷蔵庫】があれば、腐る心配もないからね。
みんな大好評の朝食を食べ終えて、片づけを終えたら三日目の旅を始めた。
◆
ノア達がフレンチトーストを食べていた頃。ティス町では――――
「なぜ【自由の翼】は開店をしないのだあああああ!」
食べていたパンを握りしめて震えるブルグルス子爵。
「あれが……あれが食べたくてご飯も喉を通らないのだ……頼む……もう一度だけ……たれ焼肉を食べさせてくれ……あの時のパンを……たこ焼きを…………」
崩れるように大きな涙を流した子爵に、執事も困った表情を浮かべた。
「ブルグルス様。もしかしたら次の街に向かったのかも知れません」
「次の街?」
「はい。我が国随一の貿易街――――エンガリスアに向かっている可能性がございます」
「っ……あの街は…………だが、あれが食えるなら何だってする! 向かおう! エンガリスア街に!」
「はっ!」
子爵はその足でティス町をさらに東に向かった。
まさか――――ノア達がまだティス町に着けなかったとは思いもしなかったのである。
テントで画面を触っていた僕を不思議そうに見つめるセレナ。
僕の才能【アプリ】は画面操作が必要で、画面は僕以外には見えない。
「明日の朝食に良さそうなレシピがないか探しているんだ」
やっぱり朝食といえば、おにぎりにしたいんだけど、残念ながら米が手に入らない以上、おにぎりを課金しても作れない。
雑炊も米、丼ものも米だな。ここはやっぱり――――これにしよう。
銀貨三枚を投入して新しいレシピを手に入れた。
次の日。
顔を洗って、朝食の準備をする。
バレていそうではあるが、あまり堂々と【一秒クッキング】を見せたくはないので、相変わらずテントの中で【一秒クッキング】を使う。
今回使うのは――――
「フレンチトースト!」
こちらはコムギ粉と卵だけでも作れちゃうのだが、そこにハムの代わりになる肉を追加すれば美味しいフレンチトーストになる。【無限調味料】のおかげで砂糖も使い放題だが、実はここにもう一つ特別な魔法のようなことが起きる。
糖分を摂り過ぎてしまうと、色々病気にかかる恐れがある。
そこで【一秒クッキング】の【無限調味料】の利点。
味のみ追加され、体に栄養としては吸収されないのだ。まあ、異世界だから、そういう理想の調味料になっているとの説明文に書かれているが、詳しいことは僕にもよくわからない。
単純にどれだけ砂糖をたくさん入れても問題ないのだ。まあ、甘くし過ぎても美味しくなくなるので、調味料の量は味以外の心配は必要ないのだ。
プレートに出来上がったふわふわのフレンチトーストが現れて、すぐにテント内に甘い香りが広がっていく。
『ノア! は、早く食べたいニャ!』
外からポンちゃんの大声が聞こえて来る。
つばを飲み込んだミレイちゃんがプレートを運んでいく。
外では、エリナさんとシズルさんの悲鳴にも近い声が聞こえてきた。
僕も前世ではフレンチトーストをよく食べていたから、非常に楽しみでもある。
セレナとポンちゃん分だけは十人前三人前を用意してあげた。
みんなでテーブルについて両手を合わせて「いただきます~!」をして食べ始める。
ふわふわしたパンを、フォークで押し込むだけで綺麗に切れる。
甘い香りに心が躍る。
早速口に運ぶと、口の中に卵の旨さとパンのふわふわした触感が広がっていく。
「「「「うまあああああ~!」」」」
みんな顔が緩んでしまうくらいに美味しいようで、もぐもぐしている姿がとても幸せそうだ。
珍しくセレナもその目を光らせてもぐもぐと食べ続けていた。
やはり甘さは女性にとって最強の武器かも知れない。
朝食はやはり軽めのパンが正義だな。これからもフレンチトーストを朝食にはよく組み込もう。できればここに牛乳があれば最高だな…………次の町で買い込めたら買い込んでおこう。【異空間冷蔵庫】があれば、腐る心配もないからね。
みんな大好評の朝食を食べ終えて、片づけを終えたら三日目の旅を始めた。
◆
ノア達がフレンチトーストを食べていた頃。ティス町では――――
「なぜ【自由の翼】は開店をしないのだあああああ!」
食べていたパンを握りしめて震えるブルグルス子爵。
「あれが……あれが食べたくてご飯も喉を通らないのだ……頼む……もう一度だけ……たれ焼肉を食べさせてくれ……あの時のパンを……たこ焼きを…………」
崩れるように大きな涙を流した子爵に、執事も困った表情を浮かべた。
「ブルグルス様。もしかしたら次の街に向かったのかも知れません」
「次の街?」
「はい。我が国随一の貿易街――――エンガリスアに向かっている可能性がございます」
「っ……あの街は…………だが、あれが食えるなら何だってする! 向かおう! エンガリスア街に!」
「はっ!」
子爵はその足でティス町をさらに東に向かった。
まさか――――ノア達がまだティス町に着けなかったとは思いもしなかったのである。
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