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41話 初野外販売?

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 もし魔物の気配や殺気を感じていたはずだが、セレナもポンちゃんもポカーンと見つめる茂み。

 ガサガサと音を立てて中から現れたのは――――三人の大人達だった。

 男性一人、女性二人の彼らは、服装から冒険者だとすぐに分かる。

「あ、あの! すまない! 俺達は怪しいものではないんだ!」

 いや、十分怪しいというか、まあ、魔物でないのは確実だな。

「あはは……」

 冴えないおじさんと、若い女性二人。

 うん。怪しい。

 その時、勢いよく三人同時に「ぐ~」と音が鳴り響く。

『もぐもぐ』

 僕達の間に無言の時間が流れるが、ポンちゃんが焼肉を食べる音が広がる。

「あ、あの!」

 後ろにいた若い女性が声をあげた。

「はい?」

「そ、その美味しそうなお肉はどこで買うことができますか!?」

 目を光らせる彼女と他二人も同じくつばを飲み込みながら、僕達の食卓を見つめた。

「これは【自由の翼】という屋台で売っています」

「【自由の翼】……? ごめんなさい。聞いたことがない名前で……」

「まだ開店して間もないですし、移動しているので」

「そ、そうですか…………」

 セレナが焼肉の皿を右に動かすと、彼らの視線が焼肉の皿に釘付けになる。

 やはり……焼肉の匂いに釣られてここに来たようだ。

「ノアさん。せっかくだから、みなさんにも振る舞われてはどうですか?」

 ミレイちゃんの優しい言葉に、彼らの表情が一気に明るくなった。

 だが、それはできない! 働かざる者食うべからずだ。

 僕が難しそうな表情を浮かべていると、セレナがクスクスを笑う。

「みなさん。臨時ではありますが、【自由の翼】のメニューです」

 そう言いながらメニューを持って彼らの下に向かった。

「ノア? 販売なら問題ないでしょう?」

「うん? そうだな。販売なら問題ないか」

 セレナがメニューについて丁寧に冒険者達に説明し始めた。

「ん? どうしたんだい?」

 ミレイちゃんが不思議そうに僕を見上げていた。

「いえ。てっきり助けるのかと思いました」

「あ~何というか、僕は誰彼構わず助けたいとか、そういう聖者みたいな人じゃないから」

「そうですか? 私には十分そう見えますけど」

「そりゃ、本当に困ってるなら手を差し伸べたくはなるが、彼らは冒険者で少なくともリュックの中に食料は入っているから、困っているわけじゃないでしょう?」

「あ~」

 むしろ、冒険者になって、こういう街道で困っているなら、それは準備不足というか実力不足というか、自業自得というか。

「これなら払います! お願いします! その美味しそうな、たれ焼肉というのをください!」

 冒険者達とセレナの視線が僕に向く。

「店長~たれ焼肉三人前入りました~」

「か、かしこっ~!」

 ううっ……条件反射でポージングするが、店でもないところでやるとちょっと恥ずかしいかも……。

 すぐにテーブルと椅子を三つ取り出す。

「じゃあ、ちょっと作って来るよ」

 あまり【一秒クッキング】を他人に見られたくないので、テントの中にミレイちゃんとライラさんと一緒に入った。

 すぐにプレートを出して、甘口たれ焼肉とコッペパンを三つ作り出す。

 それぞれプレートを持って外に出た。

「「「はやっ!?」」」

「うちは提供速度にも自信があるんです! えっへん!」

「え、えっと……テントの中にもう一人料理長がいるとか……?」

「いえ? いませんよ?」

「そ、そうなんですね……」

 彼らの前にプレートを上げると、三人とも手を合わせて「いただきます!」と声を上げて食べ始めた。

「はい。店長。先払いしてもらったよ」

 そう言いながら大銅貨三枚を僕に渡してくれた。

「店長~スープが余ったんで、サービスしてもいいですよね?」

「大丈夫です~」

 ライラさんが手際よく、まだ暖かいスープを冒険者達に運んだ。

「「「美味いいいいい~!」」」

 何だか賑わうキャンプみたいになったな。

 その時、ポンちゃんがかばって起きて、テーブルから飛び降りて森の向こうに走って行った。

 少しして何かが強打される音が聞こえてきて、ポンちゃんが帰って来た。

「ポンちゃん。お疲れ~」

『任せてなのニャ!』

 魔物を倒して帰って来たポンちゃんをわしゃわしゃと撫でてあげる。

 相変わらず、気持ちよさそうに撫でられるポンちゃんだ。
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