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32話 初めてのイベント
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屋台を開いて六日目。
予定しているのは七日間。つまり、明後日僕達はシーラー街を出る予定だ。
僕達の目的はあくまで旅である。第一にポンちゃんを故郷まで届けること。第二に各地の美味しい素材を使って美味しいご飯を食べること。第三に実家から遠ざかることだ。
屋台にも、開催は明日までと宣伝している。
毎日食べに来てくれる子供達がとても残念そうにしていた。
そして、本日。
【自由の翼】初めての――――イベントを開くことにする!
「いらっしゃいませ~! 本日は【自由の翼】のイベント――――大食いセレナちゃんの挑戦でございます~!」
ライラさんの声が響く。
開店前なのに、既に並んでいる大勢のお客様達から拍手が鳴り響いた。
屋台厨房の前に設置された特等席にセレナが座って、右手にはフォークを握ってワクワクした表情で笑顔を浮かべている。
「本日イベントの目的ですが、【自由の翼】の新しいメニュー【たこ焼き】の発売を祝して、これからセレナちゃんに沢山食べてもらいます! 一体彼女の底なしの腹にいくつ入るのか~ぜひ見届けくださいませ~!」
ライラさんって元々喋るのが上手だったのか?
綺麗な声が屋台前に響き渡る。発音も非常に聞き心地が良くて、前世でいうアナウンサーみたいだ。
セレナ用のたこ焼きは特注大皿を使ってたこ焼きを大量に乗せているので、ミレイちゃんにはまだ大きくて、僕が運ぶ。
「ありがとう。ノア」
「あまり無理はするなよ?」
「もっちろん♪」
セレナの前に大皿と大量に積み重なったたこ焼き。八個が一人前で、大皿に乗っているのは十五人前だ。
お客様達から「おお~」と驚きの声が響く。
「こちらのたこ焼きでございますが、一人前八個で銅貨三枚となっております! さらに味を追加することができ、銅貨一枚となります。今回は初めての販売ということもあり、こちらのたこ焼きをなんと! 味見セットにしまして、【通常】【青海苔】【マヨネーズ】【ぽん酢】【だし】【ラー油】の六つを、なんと銅貨二枚で販売致します~! とても美味しいのでぜひご堪能ください~!」
青海苔は通常二つって感じだが、嫌いな人は嫌いだからな。味見セットはそれぞれ味を大量に作って、六つずつに分けている。分ける手間はあるけど、いつも【一秒クッキング】で手間はほとんどないので、大した手間にはならない。
その時、厨房の外からこちらを覗く大勢の子供達が見えた。
「ノアさん! それ、僕達にやらせてくれませんか!」
「ん?」
「毎日美味しいご飯をご馳走してくださっていますから、僕達も力になりたいんです!」
「あれはみんなからちゃんと対価を貰ってるから、気にすることはないよ?」
「「「僕達が力になりたいんです!」」」
困っているとミレイちゃんと目が合う。彼女は笑顔で首を縦に振った。
「分かった。では仕分けは任せるよ。それぞれ味を一つずつにして六つを一セットにしてね」
「「「はいっ!」」」
いつもみんなが使っているテーブルを厨房の横に出して、そこに味付きたこ焼きを運ぶ。
それを彼らがスプーンを使い、一つ一つ仕分けして、六つ一セットを作っていく。
「では、セレナちゃんによる【たこ焼き大食い】イベントの始まりです~!」
ライラさんの合図で、「いっただきます~!」と大きな声を上げたセレナが、目の前のたこ焼き山を食べ始める。
すぐにお客様達から拍手と「頑張れ~!」というエールが届く。
セレナの気合が入った後ろ姿を見守りながら、僕はたこ焼きを作り続けた。
すぐにお店も始まり、たれ焼肉の注文も届いて、忙しい時間を過ごした。
予定しているのは七日間。つまり、明後日僕達はシーラー街を出る予定だ。
僕達の目的はあくまで旅である。第一にポンちゃんを故郷まで届けること。第二に各地の美味しい素材を使って美味しいご飯を食べること。第三に実家から遠ざかることだ。
屋台にも、開催は明日までと宣伝している。
毎日食べに来てくれる子供達がとても残念そうにしていた。
そして、本日。
【自由の翼】初めての――――イベントを開くことにする!
「いらっしゃいませ~! 本日は【自由の翼】のイベント――――大食いセレナちゃんの挑戦でございます~!」
ライラさんの声が響く。
開店前なのに、既に並んでいる大勢のお客様達から拍手が鳴り響いた。
屋台厨房の前に設置された特等席にセレナが座って、右手にはフォークを握ってワクワクした表情で笑顔を浮かべている。
「本日イベントの目的ですが、【自由の翼】の新しいメニュー【たこ焼き】の発売を祝して、これからセレナちゃんに沢山食べてもらいます! 一体彼女の底なしの腹にいくつ入るのか~ぜひ見届けくださいませ~!」
ライラさんって元々喋るのが上手だったのか?
綺麗な声が屋台前に響き渡る。発音も非常に聞き心地が良くて、前世でいうアナウンサーみたいだ。
セレナ用のたこ焼きは特注大皿を使ってたこ焼きを大量に乗せているので、ミレイちゃんにはまだ大きくて、僕が運ぶ。
「ありがとう。ノア」
「あまり無理はするなよ?」
「もっちろん♪」
セレナの前に大皿と大量に積み重なったたこ焼き。八個が一人前で、大皿に乗っているのは十五人前だ。
お客様達から「おお~」と驚きの声が響く。
「こちらのたこ焼きでございますが、一人前八個で銅貨三枚となっております! さらに味を追加することができ、銅貨一枚となります。今回は初めての販売ということもあり、こちらのたこ焼きをなんと! 味見セットにしまして、【通常】【青海苔】【マヨネーズ】【ぽん酢】【だし】【ラー油】の六つを、なんと銅貨二枚で販売致します~! とても美味しいのでぜひご堪能ください~!」
青海苔は通常二つって感じだが、嫌いな人は嫌いだからな。味見セットはそれぞれ味を大量に作って、六つずつに分けている。分ける手間はあるけど、いつも【一秒クッキング】で手間はほとんどないので、大した手間にはならない。
その時、厨房の外からこちらを覗く大勢の子供達が見えた。
「ノアさん! それ、僕達にやらせてくれませんか!」
「ん?」
「毎日美味しいご飯をご馳走してくださっていますから、僕達も力になりたいんです!」
「あれはみんなからちゃんと対価を貰ってるから、気にすることはないよ?」
「「「僕達が力になりたいんです!」」」
困っているとミレイちゃんと目が合う。彼女は笑顔で首を縦に振った。
「分かった。では仕分けは任せるよ。それぞれ味を一つずつにして六つを一セットにしてね」
「「「はいっ!」」」
いつもみんなが使っているテーブルを厨房の横に出して、そこに味付きたこ焼きを運ぶ。
それを彼らがスプーンを使い、一つ一つ仕分けして、六つ一セットを作っていく。
「では、セレナちゃんによる【たこ焼き大食い】イベントの始まりです~!」
ライラさんの合図で、「いっただきます~!」と大きな声を上げたセレナが、目の前のたこ焼き山を食べ始める。
すぐにお客様達から拍手と「頑張れ~!」というエールが届く。
セレナの気合が入った後ろ姿を見守りながら、僕はたこ焼きを作り続けた。
すぐにお店も始まり、たれ焼肉の注文も届いて、忙しい時間を過ごした。
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