35 / 62
33話 お給金体制
しおりを挟む
「みんなありがとう!」
開店時間が終わり、大盛況だったイベントを手伝ってくれたみんなに感謝を伝える。
今日はイベントということもあり、とんでもない利益を上げることができた。
当然、手伝ってくれた彼らにはお給金を渡すと「こんなに貰えません!」と断られたが、みんなで説得して何とか押し付けることができた。
もちろん、賄いはたれ焼肉とたこ焼き、帰りはパンとたこ焼きも付けてあげた。
何度も感謝を言われたけど、こちらこそだ。
その理由というのも、たこ焼きの売り方にある。
うちは屋台といえ、基本的に食事にフォーカスしてきた。それは焼肉だからというのもある。
しかし、たこ焼きは食事というよりは間食。歩いても食べられるように、皿ではなく安価の包み葉っぱと、大工セビルさんにお願いして作って貰った爪楊枝で渡している。
これがヒットした理由で、待っていたお客様全員がたこ焼きを食べながら待ったのだ。
焼肉を食べて残ったコッペパンはそのまま三つ持ち帰りしていくから、みんな得した気分と話していた。
ということもあって、銅貨二枚の味見セットはとんでもない売れ行きで、仕分けを手伝ってくれなかったらどうなったことか…………こればかりは僕の考えが甘かったなと反省した。
それともう一つ変わったことと言えば、ポンちゃん人気が凄まじい。
食べ終わったお客様がうちの番犬――――ごほん。仲間のポンちゃんと触れ合ってから帰るようになった。
『キュフフ~くすぐったいニャ~』
と、まんざらでもなさそうに喜んでいるポンちゃんが可愛かった。ただ、君…………腹を見せて足をバタバタして気持ちよさそうにしてもいいけど、一応店の守り神だからね?
六日目も無事に終わって、夕飯は宿屋ホワイトテールでいただく。
いつも同じ味ばかりだと飽きるからね。
無限調味料の弱点があるとするなら、召喚することはできず、あくまで【一秒クッキング】で作る時に追加するしかできない。
なので、こうして出された料理の味のアクセントが足りないと思った時に、取り出して掛けることができないのだ。
「さて、これは今日のお給金だよ」
「あれ!? いつもより多いよ?」
「今日の売り上げは良かったからね。うちは分配制だし、稼げないと減ったりするからね」
「う~ん…………」
不満そうに顔にしわを寄せるセレナ。
「ねえ。メニューを増やすにもお金が必要で、メニューが増えたらその分材料費も上がるんだよね?」
「ま、まあね……でもそれは稼ぎで十分――――」
「それなら、お給金は決まった額がいい。もしどれだけ売り上げがよくても、銀貨三枚まで。売り上げが芳しくないなかったら減ってもいい」
「はいはい!」
「どうぞ。ミレイちゃん」
「銀貨三枚も多いと思います!」
それに賛同するように手を上げて「同意見です」とライラさん。
「はい。私も同じ意見です。衛兵さんでさえ、一日給金が銀貨一枚なのに、私達がその三倍はおかしいと思います。これじゃ他の人と公平じゃありません」
僕が喋る隙を与えずに、セレナが話をどんどん進める。
「なので、ここで【自由の翼】のお給金決めをします。店長のノアには発言権はありません!」
ええええ!? 僕、店長なのに!?
「お給金をぐっと下げたいところですが、それでは店長が納得しなさそうなので、ここ五日間私がずっと考えた案を発表します。お給金の体制は最大額を銀貨一枚とします。これは街を守ってくださる衛兵さんと同額でとんでもなく多い額になります」
銀貨一枚は日本円換算なら一万円。だが、宿屋ホワイトテールのツインルームで大銅貨五枚なのを鑑みると、銀貨一枚でも随分と高い。
ちなみに僕達が入っているツインルームだが、後からセイナちゃんから聞いたところ、どうやら宿屋内で一番高い部屋らしい。つまり、一種のスイートルームだ。
シングルの安い部屋となると、大銅貨一枚とかだそう。
つまり、銀貨一枚は平民から見ると凄い額になるのだ。
「そこで、屋台の開き方でお給金を三段階にします。朝、昼、夜。今は昼しか開いていませんが、いつか朝開店や夜開店があるかも知れません。それぞれにお給金判定をして、朝昼夜で働いた場合のみ、最大額の銀貨三枚とします」
な……るほど?
「ただし、これもあくまで最大。売り上げ次第では下がります」
「「はいっ」」
「まずこれで店長は納得してくださったことでしょう!」
有無を言わさないつもりのようだ。
「これで残った全てのお金は店長のものになります! それを店長がどう使おうが店長の自由です!」
「ま、待っ――」
「レシピ一つひとつが値段が高く、その上で色んな食材が必要になるので、それらを買ってくれることを祈りながら、【自由の翼】のお給金体制会議を終わりとします~! これは決定事項です!」
最後に三人がテーブルを軽く叩きながら、僕に顔を寄せてきた。
開店時間が終わり、大盛況だったイベントを手伝ってくれたみんなに感謝を伝える。
今日はイベントということもあり、とんでもない利益を上げることができた。
当然、手伝ってくれた彼らにはお給金を渡すと「こんなに貰えません!」と断られたが、みんなで説得して何とか押し付けることができた。
もちろん、賄いはたれ焼肉とたこ焼き、帰りはパンとたこ焼きも付けてあげた。
何度も感謝を言われたけど、こちらこそだ。
その理由というのも、たこ焼きの売り方にある。
うちは屋台といえ、基本的に食事にフォーカスしてきた。それは焼肉だからというのもある。
しかし、たこ焼きは食事というよりは間食。歩いても食べられるように、皿ではなく安価の包み葉っぱと、大工セビルさんにお願いして作って貰った爪楊枝で渡している。
これがヒットした理由で、待っていたお客様全員がたこ焼きを食べながら待ったのだ。
焼肉を食べて残ったコッペパンはそのまま三つ持ち帰りしていくから、みんな得した気分と話していた。
ということもあって、銅貨二枚の味見セットはとんでもない売れ行きで、仕分けを手伝ってくれなかったらどうなったことか…………こればかりは僕の考えが甘かったなと反省した。
それともう一つ変わったことと言えば、ポンちゃん人気が凄まじい。
食べ終わったお客様がうちの番犬――――ごほん。仲間のポンちゃんと触れ合ってから帰るようになった。
『キュフフ~くすぐったいニャ~』
と、まんざらでもなさそうに喜んでいるポンちゃんが可愛かった。ただ、君…………腹を見せて足をバタバタして気持ちよさそうにしてもいいけど、一応店の守り神だからね?
六日目も無事に終わって、夕飯は宿屋ホワイトテールでいただく。
いつも同じ味ばかりだと飽きるからね。
無限調味料の弱点があるとするなら、召喚することはできず、あくまで【一秒クッキング】で作る時に追加するしかできない。
なので、こうして出された料理の味のアクセントが足りないと思った時に、取り出して掛けることができないのだ。
「さて、これは今日のお給金だよ」
「あれ!? いつもより多いよ?」
「今日の売り上げは良かったからね。うちは分配制だし、稼げないと減ったりするからね」
「う~ん…………」
不満そうに顔にしわを寄せるセレナ。
「ねえ。メニューを増やすにもお金が必要で、メニューが増えたらその分材料費も上がるんだよね?」
「ま、まあね……でもそれは稼ぎで十分――――」
「それなら、お給金は決まった額がいい。もしどれだけ売り上げがよくても、銀貨三枚まで。売り上げが芳しくないなかったら減ってもいい」
「はいはい!」
「どうぞ。ミレイちゃん」
「銀貨三枚も多いと思います!」
それに賛同するように手を上げて「同意見です」とライラさん。
「はい。私も同じ意見です。衛兵さんでさえ、一日給金が銀貨一枚なのに、私達がその三倍はおかしいと思います。これじゃ他の人と公平じゃありません」
僕が喋る隙を与えずに、セレナが話をどんどん進める。
「なので、ここで【自由の翼】のお給金決めをします。店長のノアには発言権はありません!」
ええええ!? 僕、店長なのに!?
「お給金をぐっと下げたいところですが、それでは店長が納得しなさそうなので、ここ五日間私がずっと考えた案を発表します。お給金の体制は最大額を銀貨一枚とします。これは街を守ってくださる衛兵さんと同額でとんでもなく多い額になります」
銀貨一枚は日本円換算なら一万円。だが、宿屋ホワイトテールのツインルームで大銅貨五枚なのを鑑みると、銀貨一枚でも随分と高い。
ちなみに僕達が入っているツインルームだが、後からセイナちゃんから聞いたところ、どうやら宿屋内で一番高い部屋らしい。つまり、一種のスイートルームだ。
シングルの安い部屋となると、大銅貨一枚とかだそう。
つまり、銀貨一枚は平民から見ると凄い額になるのだ。
「そこで、屋台の開き方でお給金を三段階にします。朝、昼、夜。今は昼しか開いていませんが、いつか朝開店や夜開店があるかも知れません。それぞれにお給金判定をして、朝昼夜で働いた場合のみ、最大額の銀貨三枚とします」
な……るほど?
「ただし、これもあくまで最大。売り上げ次第では下がります」
「「はいっ」」
「まずこれで店長は納得してくださったことでしょう!」
有無を言わさないつもりのようだ。
「これで残った全てのお金は店長のものになります! それを店長がどう使おうが店長の自由です!」
「ま、待っ――」
「レシピ一つひとつが値段が高く、その上で色んな食材が必要になるので、それらを買ってくれることを祈りながら、【自由の翼】のお給金体制会議を終わりとします~! これは決定事項です!」
最後に三人がテーブルを軽く叩きながら、僕に顔を寄せてきた。
14
お気に入りに追加
744
あなたにおすすめの小説

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる