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30話 たこ焼き

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 遂に……遂に来た!

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【レシピ】
・たこ焼き……銀貨十枚
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 レシピの値段が思っていたよりもずっと高くて、銀貨を貯めるのに時間がかかってしまった。

 セレナ達の頑張りのおかげもあって【自由の翼】は大盛況だ。

 屋台を作ってくれた大工のセビルさんとメイナさんもとても喜んでくれた。

 大工関係者にも広めてくれたみたいで、お昼しか開いてない屋台でも大盛況になった。

 二日目の時点で行列が多すぎて、急いでテーブルと椅子を特注すると、僕達のためにたった一日でテーブルと椅子をさらに十組も作ってくれた。

 というのも初日に訪れた時点で、回転率はいいのにテーブル数が足りないのを見て、必要になると思って作り始めていたとのこと。

 セビルさんとの出会いに感謝だ。

 それから数日が経過して四日目の営業が終わって、ようやく銀貨十枚を使ってレシピを増やすことができた。

「ノアがニヤニヤしてる」

「まあな!」

「銀貨がたくさん消えたけど、やっぱり【レシピ】って高いのね?」

「う~ん。高いといえば高いけど、効果を思えば、とても安い気がする」

 そう話すと、セレナが何かを考え始めた。

 どうかしたのかな?

 ライラさん達は服を買いに行くと出かけている。毎日のように服を買いに行ってるから、二人は服を買うのが大好きなのかも知れないな。

 早速購入した【たこ焼き】を確認してみる。

 どれどれ……。

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【たこ焼き】
・【必須】コムギ粉(小)
・【必須】肉類、魚類(小)
・【必須】卵類(小)
・【追加】野菜類(小)
・【追加】節類
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 これが【一秒クッキング】で作れる【たこ焼き】のレシピだ。

 レシピの【必須】という部分は、絶対に必要な食材のことで、【追加】はあってもなくても問題ない上に追加した場合、美味しく調理できるというものだ。

 例えば、ここに鰹節かつおぶしを直接掛けるのと、追加したのでは味の差がまるで違う。これが【一秒クッキング】の強みの一つだ。

 それと、レシピの必要なモノは、大体があいまい・・・・に表記されている。

 たこ焼きと言えば、一番大事な部分って【タコ】だろうけど、異世界に【タコ】は存在せず、タコに似た魔物とかになる。だからなのか、指定はして来ず、肉類ですら作れちゃったりする。

 さらに量も小とか中とか大とか特大とかしか書かれていない。これは小が1だとするなら中が2、大が3、特大が4になる感じだ。

 これならコーンラビットの肉を使えば作れそうだ。あとは卵が欲しいから、早速買いに行こうと思う。

 セレナも付いて来てくれて、ポンちゃんもワクワクするのか尻尾をふりふりしながら僕の横を歩く。

 ポンちゃん…………その尻尾を毎回僕の足に当ててるのってわざとよね……?

 ポンちゃんに急かされながら辿り着いた商会で、卵を銀貨二枚分購入する。

 これで僕の四日間のお給金は底を尽きた。もちろん――――後悔はしていないっ!

 その時、大通りの向こうにライラさんとミレイちゃんが大量の服を両手に持って、嬉しそうに歩いているのが見えた。

 毎日服を買っているのは知っていたけど、荷物が増えているようには見えなかったのに、あんなに服を買っているんだ?

「ライラさん達。自分達の服じゃなくて、困っている人達のために服を買ってあげているんだって」

「えっ!?」

 セレナからまかさの言葉に驚いてしまった。

「自分達が困ってた時、服がボロボロになって困っていたから、少しでも困った人達のためになればと、服を買ってあげているみたい」

 てっきり自分達の服を買っていると思っていたのに…………ライラさんもミレイちゃんもどこまでも優しい人達なんだね。

「二人がしっかりやりたいことに使ってくれて嬉しいな」

「やりたいこと…………うん。私も自分のお金。使い道を見つけたよ」

 セレナが笑顔で僕を見つめた。

 大通りを大勢の人が行き交う中、彼女の笑顔だけがとびっきり輝いていた。
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