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6話 襲来!子犬ニャ

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「セレナっ! 気を付けろ!」

「うん! ノアは私の後ろに!」

 すぐに僕を守るように前に立つセレナ。

 正直、少し情けないと思う。普通なら男性が女性を守るべきものだというのに、才能の差があり、彼女の強さに頼ってしまう。

 【風渡り】で運ばれたと思われた白いそれが僕達の前に姿を現した。

 一言でいえば――――――、一匹の子犬だった。

「子犬!?」

「ううん。魔物だよ。気を付けて。ものすごく強いよ」

 ああ。僕も剣聖家系の端くれとして、今まで多くの強者と対峙していたからわかる。あの子犬はめちゃくちゃ強い。

 小さい体の後ろには、猛獣を遥かに超えた圧倒的なオーラが見える。

「――グルルルルルル」

 子犬は僕達に向かって威嚇し始めた。僕達の間に緊張が走る。

 そんな中、悲痛な声が聞こえてきた。



『お腹空いたニャ…………』



 ん? お腹空いたニャ? あれ? そもそも今喋ったのは、あの子犬か? 子犬なのにニャ!?

「セレナ。ギリギリまで様子見だ。近づいてきても先に手出しはしないでくれ」

「えっ!?」

 急いで皿を取り出して、コーンラビットを乗せる。

「焼肉!」

 コーンラビットが焼肉に変わる。

『!?』

 子犬の口からおびただしい量のよだれが落ち始めた。

「お~い! この肉を食べたいか?」

『!? た、食べたいニャ!』

「じゃあ、僕達に危害を加えないと約束しろ!」

『ニャんだと!』

「ここにいるセレナはものすごく強いぞ! 君と戦っている間にこの焼肉を僕が食べちゃってもいいのか!?」

『わ、わかったニャ! なんでも言うことを聞くから、その旨そうな肉をくれニャ!』

「よし。こちらにゆっくり来るんだ」

 子犬が威圧的な態度を解いて、ゆっくりと僕に向かって歩いてくる。

 セレナが見守る中、子犬が焼肉の前にやってきた。

「お手」

 僕が前に出した右手のひらに、ちょこんと左前脚を乗せる子犬。

「か、可愛い~!」

 セレナが思わず声をあげた。

「よし。食べていいよ」

『!! 頂きますニャ!』

 子犬は目の前の焼肉を無我夢中で食べ始めた。

「まだ肉あるからもっと食べたかったら言ってね」

『もっと食べたいニャ~!』

「ふふっ。はいよ」

 二匹目のコーンラビットを皿に乗せて焼肉に調理変換する。

『にょおおおおお! ありがとぉおおおおニャ! めちゃくちゃお腹空いてたんだニャ!』

「そうだったんだな。よしよし」

 嬉しそうに尻尾を振りながら肉を食べている子犬の背中を優しく撫でる。

「セレナも撫でてみる?」

「い、いいの?」

「ああ。どうやらお腹が空いて気が立ってたみたい」

「じゃあ、ちょっとだけ失礼します――――――わああああ! 柔らかい~! ふかふか!」

 どうやらセレナも気に入ったようだ。

 焼肉を美味しそうに頬張る子犬と、子犬を愛でる僕達。これはお互いにwinwinの関係だ。
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