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第17話 採取クエスト

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 次の日。

 相変わらず、こちらを見て笑みを浮かべる女の子に、顔が真っ赤になるシャリーと共に宿屋を後にして、冒険者ギルドにやってきた。

 ミールさんと挨拶を交わして、依頼掲示板の前にやってくる。

 昨日は依頼を受ける事ができなかったので、今日初めて冒険者として依頼を受ける事にする。

 並んでいる依頼書を眺め、自分ができそうな依頼を取った。

「あ、アルマくん……」

「ん?」

「そんなに沢山取って大丈夫なの?」

「ん~大丈夫じゃないかな?」

「…………」

 シャリーの心配をよそに、俺は掲示板に並んでいる依頼書を二十件程取った。

 ミールさんに提示したら、口には出さないが「ああ、そうですか。そう来ましたか」と言わんばかりの視線を送ってくる。

「アルマくん。依頼って達成できないとペナルティが発生するけど、いいの?」

「はい。問題ありません」

 また同じ視線を送ってくるミールさん。

 でも本当に問題ない。そこに書かれている依頼は全て予定通り・・・・の依頼ばかりだ。

「それにしても、初めての依頼なのに――――――魔物狩りが入ってないわね?」

「ええ。最初は採取からこなすべきだろうと思いまして」

「…………アルマくんは問題ないと思うよ?」

「いえ、こういうのは順序よくやるべきですから」

「そう…………いいわ。こちらに止める権限は今のところ・・・・・ないし、受理するわ」

 素早く依頼書に判子はんこを押すと、カウンターに置かれた小さな『理のクリスタル』が小さく光った。

「はい。全て受理したわ。全て期間が決まっているので注意してね?」

「ありがとうございます」

 20件の依頼書を持って冒険者ギルドを後にする。

 シャリーは暫くの間、俺の道案内をするとの事で一緒に行く事になった。

 俺としても土地勘のある仲間がいてくれるのはありがたい。

 彼女に案内を頼んで、王都から出てアルキバガン森の反対側を目指していく。

 暫く道なりを進んでいると、ちらほら魔物が見えたけど、視界に入った魔物は全てクレアとルークが交互に倒した。

 運動不足だったようで、クレアに限っては中々乱暴な言葉を吐きながら大きな猪の魔物を一撃で倒していた。

 それにしてもアルキバガン森の魔物と比べると遥かに弱いんだな?

 周りでは複数人でパーティーを組んで魔物を討伐している。

 素材の解体とかも大変そうだ。

 道を進むと、俺達の前に広大な森が現れた。

 今日の目標の場所、エンガリア森という場所で、こちらの森は植物の楽園と言われていて、採取の聖地として有名らしい。

 この森だけで多くの植物が手に入るので、ここで生計を立てる人も多かったり、冒険者ギルドの依頼も多かったりする。

「アルマくん? これから採取頑張ろうね!」

「ん? 頑張る?」

「えっ? 20件も受けてしまったんだから、頑張らないと今日中に終わらないよ?」

「なるほど。でもそれこそ――――――探し回ったら今日帰れなくなるからね」

 シャリーが不思議がる表情を浮かべて首を傾げる。

 赤い髪が波を打つ。ふとした仕草でドキッとしてしまう程に、降り注ぐ光を受けて、彼女の美しさがより際立つ。

 でも今はそれに目を奪われている場合ではない。

 通常視界とは違う、究極スキル『道しるべ』の地図に集中する。

 俺が経っている場所から半径20メートルの部分が『開拓』判定となり、特定場所『エンガリア森』が選択できるようになった。さらにそこに生息する植物を詳細に見る事ができる。

 その状態で、映っている植物の採取・・を行う。感覚的には採取したい植物をワンタッチするような感じ。

 狙っていた植物が一つ地図上から消える。

 そして、植物収納リスト欄に新しい植物が収納されたのを確認する。

 あとは――――――全力で映っている植物を連打して取るだけだ!



 十分後。

 思っていたよりもずっと多くて、森にある全ての植物を採取するのに十分も掛かってしまった。

 アルキバガン森の採取は毎日行っていたから数十秒で終わったんだけどな~。

「よし、帰ろう」

「ええええ!? あ、アルマくん!?」

「うん?」

「えっとね! 受けた依頼をこなさないとペナルティがあるの! いくらCランク冒険者とは言っても、依頼を守れないと、そこから下げられてしまうよ?」

「うんうん。知ってるよ?」

「えっ?」

「採取も終わったし、大丈夫でしょう」

 シャリーが困惑した表情を浮かべていたけど、採取も終わったし、森に入る事なく俺達は王都に戻って行った。



 ◆



「…………た、確かに受領したわ。ちょ、ちょっとだけ待っていてね」

 ミールさんに依頼書と依頼を全て渡して、暫く待つ。

 シャリーはずっと変な顔になって魂が飛んでいるけど気にしたら負けかも知れない。

 珍しくクレアが面白そうにシャリーの頭を突いたりして遊び始めた。

 最近クレアがシャリーに心を開きかけている気がする。

 でも、もふもふはさせないんだからっ……!

「お、お待たせ。ちゃんと数分あったわ」

 ミールさんが報酬が入っていると思われる重そうな袋を持ってきてくれた。

「でもどうやってこんなに早く? 時間的に森に行って帰って来たくらいじゃ……?」

「まあ、色々ありまして――――――ミールさん。俺達これから猫ノ手に行くんですけど、一緒に行きます?」

「あら、いいの?」

「もちろんです。じゃあお仕事終わるまで待ってますね」

「分かったわ。あと一時間くらいだからゆっくりしていてね」

 俺がミールさんを誘うのには理由がある。

 いまポンコツみたいに魂が飛んでいるシャリーは、やはり見た目がとんでもない美少女だ。

 こんな美少女とずっと二人で食事をしていると、めんどくさいことに巻き込まれ兼ねない。

 ここにミールさんを誘う事によって、シャリーと二人っきりではなく、シャリーとミールさんの食事に俺が混ざっているように見えるはずだ。

 これならきっとめんどくさい事に巻き込まれないだろう。
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