上 下
10 / 48

第10話 冒険者ギルドと無能先輩

しおりを挟む
 次の日。

 支度をして宿屋を後にする。

 宿屋を出る時も、怪しい笑みを浮かべた女の子が俺達に手を振っていた。

 …………最近の女の子って色々悟るのが早いのか?

 少し気まずさもあり、シャリーとは必要最低限の会話だけで、冒険者ギルドにやってきた。



 外観は絵にかいたような洋風建物で、扉を開けて中に入ると、吹き抜け作りとなっていて、1階にカウンターや掲示板、食事スペースがあって、2階からは下が見下ろせるようになっているが、面積的には1階の半分なので一定の者しか入れないとかありそうな雰囲気だ。

「アルマくん。こっち」

 昨日は散々手を引いていたシャリーだったが、今日は俺との間に一人分のスペースを常に開けている。

 そんな彼女が呼んだ方に向かうと、カウンターには大きな眼鏡をした緑髪を三つ編みにした女性が、優しい笑みを浮かべてこちらに一礼した。

「初めまして。冒険者ギルド、セラオル王国本部でございます。私は受付担当のミールと申します。以後お見知りおきを」

「どうも」

「ミールさん。この子を冒険者にしてほしいんだけど~」

「もちろん構いませんわ。見た感じ『魔物使い』の中でも相当上位の方だと思われますので。むしろ、今まで冒険者にならなかったのが不思議なくらいですわね」

 ミールさんは俺の両肩に乗って大人しくしている妹弟を一目見てそう話す。

 聞いた話では、なにやら才能と呼ばれている神から与えられた特別な力があるそうで、その才能で人生が大きく変わるという。

 才能は15歳になった時、教会や冒険者ギルド、お城などにある『鑑定のクリスタル』を使う事で開花させる事ができるそうだ。

 しかも、出て来た才能なら自ら選ぶことができるようで、選ばれしものはいくつも出てきて自由に選べるという。

「ではこちらの紙に記入してください。その情報は『理のクリスタル』に登録されますので」

 『理のクリスタル』。

 その実情は誰も知らない代物だが、どうやら世界を司ると言われている女神様が授けたモノだそうだ。

 例えば、王都の入口で俺が手をかざしたクリスタルも『理のクリスタル』というモノで、世界の至る場所に設置されている。

 これを一言で単純に言うなら――――前世でいう『身分証明機』というべきか。

 一度『理のクリスタル』に登録した人物の情報は未来永劫記録される事となり、その人の記録がずっと更新され続けるという。

 例えば、犯罪を犯した者で烙印が押された場合、罪人となるので『理のクリスタル』に手をかざす度に罪人だと知らされる。

 さらに王国は技術を進歩させて、街中に強制的に『理のクリスタル』の光を照射させて、犯罪者が隠れて侵入してもすぐに見つけられるようにしたという。

 おかげでセラオル王国の全ての街は治安が良いそうだ。

 と、この世界の事をシャリーから散々聞いて、昨日の一日は殆ど消えてしまったのだから、シャリーには感謝しなくちゃな。

 渡された少し分厚い紙に名前と年齢と色々書き進めていく。

「ええええ!? アルマくんって15歳なの!?」

「ん? どうしたの?」

「てっきり……成人してないと思ってた…………」

「成人? 何歳から成人になるんだ?」

「15歳からだよ? 才能の儀を行えるからね」

 ふむふむ……才能の儀というのは、例のクリスタルで才能を得られるようになるあれか。

 それにしても成人していると何かダメなのか? 冒険者になるなら成人していた方が便利な気がするが。

「わ、私……てっきり、まだ未成年だと思ったから……同じベッドで…………」

 恥ずかしそうに話すシャリーにミールさんの目が光る。

「同じベッド? シャリーちゃん? 詳しく聞きたいな~」

「えっ!? な、な、なんでも、ないです!」

「本当に? 顔が真っ赤だよ?」

「違うんです!」

 シャリーって感情が顔に出やすいタイプらしい。

 とりあえず、書き終えたので提出する。

 才能の欄には便宜上『魔物使い』と書いて出した。

「はい。少しだけ待ってね~Eランクだと銀貨1枚、Dランクの場合試験を受けて合格すればタダになるんだけど、どうする?」

「じゃあ、試験で」

「ふふっ。余程自信があるのね。すぐに準備するので待っていてね」

 そう話すミールさんは紙を持って裏に消えていった。

 もじもじしているシャリーが可愛い。

 …………あっ! 美少女にこれ以上関わっては…………。

 その時。

 俺を囲う影が三つ。

「おいおい、初心者く~ん」

 見た目だけで嫌らしいというか。

 首に掲げられているのは冒険者プレートだが、全員が黄色だ。

 少なくともCランク冒険者であるのは間違いないな。

「何か御用でしょうか?」

「あんたたち、何の用よ!」

 すぐに俺の前に割り込むシャリー。

 どうやら知り合いらしい。

「おいおいシャリーちゃ~ん。こんな弱そうなのと組むくらいなら、俺達と組んでくれよ~」

「何度も断ってるでしょう! いい加減にして」

「おいおい~それでいいのか? 後輩くんがどんな目・・・・に遭ってもいいのか?」

 あれか。典型的な新人社員をいびり散らかす無能先輩のあれか。

 前世でもいたな~こういうの。

 しかし、この人達から伝わってくる強さは、アルキバガン森の魔物に比べるとずっと弱いのだが、大した自信だな。

 もしかしたら実力を隠しているのか?

 シャリーと無能先輩達が睨み合っている中、ミールさんがとあるおっさんと共に現れた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...