吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

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第一部

36、吸血鬼と人狼執事

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「最近浮かない顔をしているな。」

 マーカスが、王宮で話しかけて来た。

「イライザ夫人どうだった?」

「それがどんどん疑惑は深まる一方だと言うより、イライザに秘密があるのは確実だ。」

「そうなのか?
 イライザ夫人に限って、そんなことあるのか?」

「僕も信じたくないけれど、イライザは、昼間御者を木の下で待たせて、どこかへ行っている。

 さらには、渡している給金も何かに注ぎ込んでいるし、医師とのことも認めない。

 今はそんな状況だ。

 僕が追求しようとすると、キスをして来て、それ以上は話してくれない。

 イライザには男がいる、多分。
 僕を誤魔化したいほどの大切な男が。」

「待てよ。
 でも普通そんな感じなら、リカルドとキスしたり、色々しないだろ?」

「誤魔化すためだよ。
 僕は頭がおかしくなりそうだ。」

 僕はたまらず頭を抱える。

「結論づけるのは、まだ早いぞ。
 まだ、浮気していると決まったわけじゃないだろ?」

「ああ、今邸の私兵に探らせているところだ。」

「なら、最後まで希望を捨てるな。」

「なぁ、僕達に子供ができなかったからだと思うか?

 いや、今のは聞かなかったことにしてくれ。」

「子供がいてもいなくても、するやつはするし、しないやつはしない。

 でも、イライザ夫人がする人とはまだ思えないんだ。」

「僕もそう思っていた。」

 僕は、疑惑が大きくなればなるほど、不安だし、疑心暗鬼になっていく。

 最近は、王宮に行っても、心ここにあらずで、何も言わないけれど、多分僕の異変に王子も勘付いている。

 侯爵当主として情けないが、イライザを愛している分、僕はどんどん不安定になって行く。





「ねぇ、聞いているの?」

「聞いているよ、母上。」

 母がいる棟の庭園で、日課の母のお茶に付き合っている。

 同じ邸の中だけど、こちらは、父が亡くなってから、ますます静かになり、母のキンキン声だけが響く。

「もう、リカルドだけなんだから、私の話を聞いてくれるのは。

 旦那様が亡くなってからは、あなたしかいないのよ。」

 そう言うが、イライザを拒否したのは、母だ。

 もし、子供ができなくともイライザを認めていたならば、こんなに一人寂しい思いをしなくても済んだのに、自分のせいだとは、母は気づいていない。

「ねぇ、そろそろ、第二夫人でも娶ったら?」

「何度も言わせないでくれ。
 母上だって、父上に認めなかっただろ?」

「一緒にしないで。
 私はあなたを産んだわ。
 あの人とは違うわ。」

「そうだとしても、嫌な気持ちは一緒だろ?

 どうして、自分がされたくないことを人には求める?」

「仕方ないでしょ。
 後継は必要なんだから。」

「その話は、親族の者をもらうと言うことで、決着がついている。」

「嫌なものは嫌なの。
 あなたにそっくりな孫が欲しいのよ。」

「すまないが、それは果たせない。」

 父が亡くなってから、母はますます孫を欲しがるようになった。

 いつもなら、それを受け流すこともできたが、最近は僕にも余裕がない。

 大声で、無理なんだよ。と叫んでしまう日がいつか来そうで、自分でも怖い。

 感情的になることは、貴族として、とっくに無くして来たのに。

 僕は最近自分が嫌いだ。





「どうぞ、入って。」

 執務室で仕事をしていると、イライザの尾行を頼んだべモートが入って来る。

「リカルド様、報告があります。」

「ああ、待っていたよ。
 話してくれ。」

 僕とライナスはその話に聞き入る。

「イライザ様が、馬車から離れ向かった先は、ある邸でした。

 こじんまりとしてはいますが、誰かの別邸と言う感じで、建物は立派です。」

「なるほど。」

「そして、イライザ様がその邸に消えた後、邸に入った者は、ノーマン医師ただ一人です。

 後は使用人の出入りがあるだけです。」

「何と。
 では、ノーマン医師との密会場所なのか?」

「それがそうではなく、ノーマン医師も長くいたわけではありません。

 多分、どなたかを診察してすぐに帰られたと思います。

 そして、イライザ様以外、あの邸に出入りはありません。

 なので、イライザ様は誰かの看病をしているのではないでしょうか?」

「なるほど。
 イライザは、父の看病もしてくれていたしね。」

 母は父が倒れてからは、お茶会だとか、友人と出かけるなどと言って、父に寄り付かなかったから、その隙にイライザは父を心配して、父のいる棟を訪れていた。

「はい、私がキャサリン様がいない時、イライザ様をご案内しておりました。

 旦那様は、いつもイライザ様が来てくれるのを、楽しみに待っておられましたから。」

 ライナスは、思い出して微笑む。

 「だとしてただの看病なら、わざわざ僕に隠す相手とは誰だろう?」

「わかりません。
 そうなると、やはり男かもしれませんね。
 残念ですが。」

 ライナスは諦め顔で首を振る。

「とにかく、イライザ様がもうあの邸に通わせないようにするのは、大変なことでしょうね。

 いっそのこと、目をつぶったらいかがですか?

 下手に追い詰めると、イライザ様がリカルド様に離縁を申し出るかもしれませんよ。」

「そんなことが?」

「その相手と無理矢理引き離すのですから、覚悟がいります。

 反対に子供ができなかったから身を引くと言われたら、こちらとしても離縁を認めざるを得ないでしょう。

 不貞の証拠を掴んでいれば、話は変わりますが。

 だからと言って、イライザ夫人の不貞がキャサリン夫人に知られたら、大騒ぎでしょうし。

 よく考えてみられたらいかがですか?」

「ああ、そうするよ。」

 ライナスとべモートが、部屋を出た後、しばらく一人で強い酒を飲んだ。

 この前までは、十年経っても新婚生活などと浮かれていたのに、あっと言う間にどん底だ。

 人生わからないものだ。

 僕はいつ間違ったのだろう。

 イライザが、僕以外の男を求めるなど、今でも信じたくないし、受け入れられない。

 しかも僕はこうなるまで、全く気がつかないほどの鈍感な男で、それでも、イライザを失いたくないから、動けない。

 でも、それならどうしてイライザは変わらず僕を受け入れる?

 好きな男がいるとしたら、普通は嫌なものでないのか?

 秘密にするためなら、僕に抱かれても我慢するのか?

 僕は沼にハマって動けないように、酒に溺れ、そのまま執務室で寝てしまった。

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