吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

文字の大きさ
上 下
36 / 40
第一部

35、吸血鬼と王太子(2)

しおりを挟む
 
 
「ぐえあぼっ!!」

 気持ち悪い意味不明な悲鳴と共に、レイオンが床に倒れ込んだ。股間に手を当てて気を失ってることから、痛みは私の股間蹴りの方が強かったということだろう。ざまぁ!

 気絶に至ったのは、目の前に立つ存在の一撃だろうが。

「えっと……」

 戸惑って見上げてると、ニッコリと微笑まれた──その笑顔だけなら、公爵に匹敵するほどの美形なんだろうけど。いかんせん、私の目は公爵を贔屓しすぎていて、全くもってときめかない。

「我が名はゼンソン。以後お見知りおきを、美しいお嬢さん」
「ああはい、全損王子。……フィーリアラと申します」
「(?なんか発音がおかしいな……)危ないところだったね」
「ええ。助けてくださりありがとうござ……って、貴方が私をさらったからこうなったんでしょうが!」

 思わず礼を言いかけたわ!

 そもそもお前が私を公爵邸から引っさらったから!
 私をこんなとこに連れて来たから!
 そしてよりによってレイオンなんかを呼ぶから!

 相手が王太子だろうと関係ないわ!文句は言わせてもらいます!

「あはは、気付いたか!」
「気付かんでか!」

 くっくっく、と笑う様は、公爵より幼げで表情豊かだ。
 そりゃそうか、公爵はいつ生まれたかも分からない年齢だけど、王太子は確実に今の国王夫妻から生まれたわけで。

 吸血鬼としては赤子同然とも言えるし、人間としてもまだ青年な年齢──のはずだ。
 興味ないから王太子の年齢なぞ知らん。

「太陽より眩い美しさで、あの公爵の心を掴んだのかと思ったが。どうしてどうして……キミはとても面白い、珍しいタイプで魅力たっぷりの女性のようだね」
「それはどうも」

 全然褒められてる気がしないし嬉しくもない。

 生まれてこの方18年間、容姿に騙されて寄ってきた男は数多いたけれど、この性格を気に入ってくれたのはゼル様くらいだった。
 が、ここに来て私はモテ期が来たようだ。
 吸血鬼の好みはちょっと人間とずれてるのだろうか……って自分で言ってて悲しくなるわ!

「そういえばこの男は元婚約者なんだろう?色々あったのかい?」
「何もございません」

 王太子が足でゲシゲシ蹴りながら、レイオンを指さして聞いてきた。
 本当に何も無かったので即答。
 本当にねえ……デートや手を繋ぐどころか、二人きりで会話したことあったっけ?てくらいの関係でしたよ。

「そうか、それは良かった」

 何が良かった、どう良かった。

 聞きたいけど、それより私は逃げの体制に入る方に意識がいく。

「近いです」
「そりゃ近づいてるからね」

 ベッドの端まで来たけれど、ギシリと音をたてて王太子もベッドに乗ってきた。

 いやいやいやいや
 これではレイオンと変わらんではないか。

「ちなみに」

 私の髪に指をからめて言葉を紡ぐ。ぞわっと寒気するからやめて!

 髪を取り戻して睨んだら、ニヤッと笑われた。

「ゼルストアとは、どこまでしたの?」

 言うか!誰がゼル様との大切な思い出を語るか!
 口を堅く結んでいたら、また髪を絡めとられて……髪に口づけられた。

 いいいいいやああああああ!!!!!

 なにこれナニコレ何これ!!!



 ……気持ち悪い!!!



 なるほど。
 好きな相手にされたら真っ赤になるシチュエーションも、そうじゃない相手にされると砂を吐きたくなるほどに気持ち悪くなるわけだ。
 恋愛経験なかったから知らなかったよ!

「ひょっとして」

 ちぃかぁづぅくぅなぁ!!!

 その距離はもう鼻と鼻がくっ付きそうな距離。
 ちなみに私は限界まで体をのけぞらせてるんだけどね。
 これ以上後退するとベッドから落ちる。降りようにも体制が悪くて動けない……けど、これ以上近づかれるようなら、痛みを覚悟して後頭部から床に落ちる!

「キスもまだしてないとか?」

 グッと王太子が顔を近づけてきた。王太子の胸に手を当てて押し戻そうとしても、吸血鬼の力を持つ彼には到底敵わない。

「や……い、いや……!わ、私は……私が──」

「うん?」

 唇が私のそれに触れそうになる直前──私は、あらん限りの叫びを上げた!

「私が好きなのはゼル様だけなんだからぁぁ!!!!」

 直後。

 耳をつんざく轟音が、部屋を満たした──




 

    
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

幼馴染の婚約者ともう1人の幼馴染

仏白目
恋愛
3人の子供達がいた、男の子リアムと2人の女の子アメリアとミア 家も近く家格も同じいつも一緒に遊び、仲良しだった、リアムとアメリアの両親は仲の良い友達どうし、自分達の子供を結婚させたいね、と意気投合し赤ちゃんの時に婚約者になった、それを知ったミア なんだかずるい!私だけ仲間外れだわと思っていた、私だって彼と婚約したかったと、親にごねてもそれは無理な話だよと言い聞かされた それじゃあ、結婚するまでは、リアムはミアのものね?そう、勝手に思い込んだミアは段々アメリアを邪魔者扱いをするようになって・・・ *作者ご都合主義の世界観のフィクションです

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

処理中です...