幽閉塔の早贄

大田ネクロマンサー

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1部 ヤギと奇跡の器

第39話 決意(ルイス視点)

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アシュレイはあの日を境に顔を見せなくなった。そしてノアはあの日を境に熱が続き、ベッドから起き上がれなくなった。

今日はノアの体調が心配だったので朝早めに出てきた。朝霧の奥に塔が不気味に浮かぶ。湖面も一本道も霧で見えず、塔だけがボウと浮かび上がっているようだった。

もう3日も経つが一向に回復しないこの全ての状況に、僕は僕なりに責任の一端を担っている気がしている。もっといい方法がなかったのかとアシュレイが最後に訪れた日を何度も思い出した。

あの時、ノアがアシュレイのことを特別に思っていることを最後まで言えなかった。

あそこまで言えば気がつくだろうと高を括っていた部分もある。それにこんなことを僕から言うのはおかしい気もした。

でも、アシュレイがノアのことを受け入れられる雰囲気ではなかったから言えなかった、というのが本音だった。


塔の鍵を開け買った食材を台所に置く。ふと見ると、魔力量の針がゆっくり上昇した。今、ノアが責務を果たしたのだ。だから僕はお湯を沸かして紅茶を淹れた。

熱があるにもかかわらず、毎日責務を果たしているのだ。その心中を察すると心が波立つが、僕にはそれを労うことくらいしかできない。

淹れた紅茶を持って階上に上がる。ノアの部屋の戸をノックするが返事はなかった。ゆっくりと扉を開けて中の様子を窺うと、ノアはベッドに横たわっている。

「ノア、おはよう。紅茶を持ってきたよ」

返事がないのを不審に思い、ベッドに近づく。

ノアはうなされながらも寝ていた。僕はこの時初めてノアが毎日夢精をしているのだと気づいた。

いいようのない痛みが胸に突き刺さる。今までもずっと夢精をしていたのだ。晩に一度だけ針が振れたことがあった。でもそれ以降朝塔に出向いたならば針は移動していた。

ノアは手淫で責務を果たしていない。それはどこかその行為に罪悪があるからなのだろう。

それなのにアシュレイはあの模型をノアに渡した。ご丁寧にも1人でできるよう軟膏まで渡して。

どうして僕はここまで考えの至らない浅はかな人間なのだろう。

16歳で成人したばかりの、ましてや精通もしていない子に、なんて残酷な仕打ちをし続けたのだ。

紅茶を机に置いた。雑然としている机上はアシュレイが最後に来た日からそのままになっていた。

呻き声が聞こえたから、ノアの方に駆け寄る。汗で前髪が額に張り付いている。僕はそれを左右に分けて、そこにキスをする。

「ノア……ノア……」

ノアの長い睫毛に日に光が差し込む。そこに僕はキスを落とし、悪魔からも、それ以外の残酷な仕打ちからもノアを守り抜くことを決意した。
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