特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
上 下
269 / 413
閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -73話-[黄竜と魔石と新たな武器と④]

しおりを挟む
 精霊使いとしての訓練内容を知るゼノウPT/トワイン=エリアルスに助手セーバーPT/ディテウス=マレマールを付け、エルダードワーフ達の訓練はお任せして手が空いたのでさっそくゲートを繋げてドラゴドワーフの村に移動した。

「おはようございまーす。水無月みなづきです」
「勝手に入ってきな!こっちはもう作業に入ってるからねぇ!」

 一応先日の訪問時にどういう物が欲しいと伝えてはいたけど惰眠姫がすでに働き始めているとはこれ如何に?
 ネフィリナの声に従い扉を開けて中へ進むとそこにはアンバードラゴンラーツァグリアニスを侍らせた彼女は並べたインゴットの山を前に胡坐を組んで座り込んでいた。

「どうもぉ~。今は何をしているんですか?」
「今はアンタが持ち込んだ魔石と相性の良いインゴットを調べてる所だよ。
 あれ? ソニューザは一緒じゃないのかい?」
「あいつは近い将来貴女を守れるようになる為に訓練中ですよ。
 夕方頃には一度顔を出すと言ってました」
「そう…」

 おぉ!口調は男勝りでもソニューザが恋しいのか!愛されてるよ、ソニューザ!

「っていうか、敬語じゃなくていいよ。
 仕事は受け合うけど島外からの依頼なんて初めてだし身内でしか基本的に仕事やらないから敬語が痒いんだよ」
「あー、わかった。ネフィリナさんがそう言うならタメ口にするよ」
「こっちは時間がまだまだ時間が掛かりそうだ。
 この魔石は相当なじゃじゃ馬だよ、50以上のインゴットがフラれてる」

 依頼内容は籠手に出来ればって話だったが、
 魔石をそのまま加工するのではなくて実際は相性の良いインゴットと合成して出来上がった新しいインゴットから籠手を作成してくれるらしい。
 この魔石と鉱物の合成と新インゴットの加工の2つがドラゴドワーフにしか出来ない技術とのことだ。
 都会ドワーフが出来ると聞いたことが無いからやっぱり違うんだなぁ。

「爺様、青の守り人をグリュエザール様の元へ案内するんでしょ。
 ここに居ても邪魔だから連れてってよ」
『そうであったな。昨日伝えたのだし数年は放置でも気づかれんと思ったのだが』

 こちらを振り向くことなく魔石とインゴットのお見合いを続けるネフィリナの一声にアンバードラゴンラーツァグリアニスがのそりと起き上がった。
 長命種あるあるなスケジューリングは定命の俺たちにとっては大問題なのだから、
 そこはちゃんと貴方たちに合わせられない俺たちに合わせて欲しいもんですがね。

『付いて参れ、青の守り人よ。
 外で待っている青竜も連れて来ていいそうだ』
「あ、はい。じゃあ加工の方はよろしく」
「はいよ~」

 心の篭らぬ相槌を最後にネフィリナの家を出ればすぐにフリューネが駆け寄って来た。

『どうだった?』
「魔石と相性の良いインゴット選びのまだまだ初期段階だな。
 今日はアンバードラゴンラーツァグリアニスの案内で黄竜にお目通りだ」
『へぇ~、昨日は下っ端があんな態度取ってたんだ。
 黄竜からどんな謝罪が貰えるのか楽しみだね』
「フリューネも意外とプライドが残ってたんだな」

 俺が雑に扱っても怒らないからもうペットとして生きていく覚悟を決めたのかと思っていたのに、
 同族からの失礼な態度には失っていたプライドも再建されるのか。
 グルルルルゥ♪
 しかし、煽った後にその態度は如何かな、青竜様?


 * * * * *
 道中はある意味地獄だった。
 ドラゴドワーフの村から少し離れた所に巣へ繋がる洞穴に移動した俺たちはアンバードラゴンラーツァグリアニスに付いて中へと突入した。
 そんな俺たちを出迎えてくれたのはそこ等辺に寝転びながらもフリューネに殺気を飛ばしまくるアースドラゴン達。

『青の守り人は人間だからわからぬだろう。
 青竜と言っても勢力が違うからな、下位竜のアースでも普通にケンカ腰なのは当然なのだぞ』
「青竜にケンカを売っても負ける未来しかないでしょうに……」
『勝ち負けなど関係ない。王以外は本能に抗えず他勢力竜には声高になるのだ』
『僕の巣に黄竜が来ても同じ状況になるからわかってるんだけどね…良い気はしないね…』

 逆に生存本能はどこに忘れてきたのだろうか?
 道中の俺はフリューネの意識を俺に向けさせることに苦心して撫でまわしながら進む羽目になった。
 ここで殺っちまえばマジで全面戦争待ったなしだもん。

 外から見ただけではわからなかったけれど、
 意外と奥に進めるだけの広さがあったのか続いて登場したのは地竜アースよりデカイ琥珀竜アンバー達からの殺気であった。
 はぁ…、君たちさぁ…。
 これまでに無い程にケンカを売られてブチ切れ半分、
 これまでに無い程俺に構われて喜び半分で忙しいフリューネの精神がこれ以上は持たないよ!

 それに地竜アース程度の殺気なら危機意識を持つまでもいかなかったけど、
 流石に琥珀竜アンバーにもなれば俺も心穏やかではいられない。
 常に巣内部でどのように立ち回れば被弾なく倒せるかを計算しながらフリューネの相手も強要されて、
 俺の精神的にのダメージが蓄積していくから早く黄竜のところに辿り着いてくれぇ!

『この奥でイエロードラゴングリュエザールが待っている』
「わかりました。気配がイエロードラゴンだけですけど、世話役とか居ないんですか?」
竜玉りゅうぎょくを後継して100年程度なら世話役も居るであろうが、すでにその時期は過ぎている』

 竜はそんな生態になってるんだな。
 フリューネは角もしっかりしているし参謀のように誰かが傍にいるのは当たり前だと思っていたけど、
 もっと成長すればフロストドラゴンのエルレイニアとムグンダールもお役御免になる予定だったのか。
 ってか、今現在すでに俺にお世話を任せっきりになっている件については後で文句言ってやる!

「魔力濃度が高いな」
『基本的に巣にする場所は[マギウスヴェスル]の吹き出し口の近くに作るものだしね』

 巣に入ってからここまで進む道中にも各所に魔石が生え散らかしていた。
 魔石は採掘しなければその場の魔力濃度により光源となるのだが、
 入ってすぐは仄かに光っている程度だったのが黄竜イエロードラゴンが居るこの最奥にもなると整備されたトンネル並みに視界は良好となっている。

「マギウスヴェスルって循環される自然魔力の事でいいんだよな?」
『そうそう。使用された個の魔力を星が吸収して、
 綺麗な魔力に浄化してから一定量を超えれば決まった場所が開いて高濃度魔力が噴き出すんだ。
 噴出場所の特定は大変だけど分かればあとは移住するだけだしね』

 竜も特定に苦労するならやっぱり世界を構成するシステムに組み込まれているのだろう。
 亜空間から噴き出すということは港町アクアポッツォで確認していたけれど、
 あれだけの高濃度魔力の流れが見つけられないってことは本来あり得ない。
 おそらく自然魔力が流れる用の特別な空間を見つけて枯らすことも魔神族の目標のひとつなんだろうな…。

 やがて、地下へと続く道も直線を残すだけとなり、
 その最奥には大きな竜が待ち受けているのが見えた。
 近づくにつれ、細部まで視認出来るようになるとなるほど青竜とは種族が違うというのは納得がいった。

『遠路遥々よく参られた、青竜よ』
『黄竜よ、こちらこそ受け入れてもらえて感謝している』
『青の守り人も顔を上げてください。
 我は地竜アース琥珀竜アンバーと違って聞く耳は持っております。
 我が名はグリュエザール、今代のイエロー・ドラゴンを担っている竜です』
「ありがとうございます。
 青竜の守り人、並びに精霊使いの水無月宗八みなづきそうはちと申します」

 土属性の面々は温厚なのか、顔を上げて黄竜の瞳を見やれば確かに先ほどまでに見て来た竜とは違うらしい。
 ティターン様と同様に存在としての大きさを感じつつも安心して話が出来る相手だと認識出来た。
 ボディの方もブルー・ドラゴンフリューネの本来の姿が想像しやすい竜に近しいものに対し、
 黄竜は筋肉量も凄ければ鱗も鎧と言っても良いほどに守りを重視していることがわかる。

『魔石は見せてもらった。あれほど高濃度の魔石は色持ちしか精製出来ないでしょう。
 瘴気に関わりのある集団と戦って居るとも伺いましたがそこまでの力が必要なのでしょうか?
 守り人を選ぶ程なのですから厄介なのは理解していますが、
 やはり竜として生来の傲慢な気質が危機意識を歪ませてしまうので貴方達の口から詳しく聞きたいと思ったのです』

 イエロー・ドラゴングリュエザールはフリューネの様に幼くなくかなりの知性を備えているようだ。
 生物のひとつの頂点である竜種のさらにひとつの頂点である黄竜にもなればそりゃ傲慢になっても仕方ないと思うが、
 それを気質だからだの言い訳もせずあくまで理性的に話を聞いてくれようとする姿勢は大変にありがたい。

 俺とフリューネはこの世界で起こっている[破滅]についての説明と、
 逐次挟まる質問に回答しつつ俺たちの希望もイエロー・ドラゴングリュエザールに嘆願した。
 何せ現時点で一緒に居ることが多いのは第二長女ノイだから地属性の竜の魔石は喉から手が出るほど欲しいからね!

『では既に魔石は加工に入っているのですね?』
「ここに来る前の進捗はインゴットとの相性選びでしたからまだまだ完成には時間が掛かりそうです」
『魔石は青の守り人の分だけでよろしいのでしょうか?』
「出来れば複数人分をお願いしたいところです。
 戦力が今後も増えると考えて10人以上にはなってくるかと……」

 人間だけでなく精霊の分も合わせれば魔力供給も威力も格段に改善するからな。
 今の時点で俺、ノイ、セプテマ氏、契約精霊ファレーノ、タルテューフォ、マクライン、契約精霊タイラスと6人分は確実に精製してほしい。

『協力は致しましょう。魔力量によっては精製回数を増やす必要があります。
 まずはその者たちをこちらへ連れて来てもらえますか? 我が口添えをして眷族たちに協力させましょう』
「ありがとうございます!」
『感謝する、黄竜よ。
 しかし、宗八そうはちの魔力は加護もあって普段から鍛えている分かなり多い。
 これは黄竜か琥珀竜アンバーでなければならないのではないか?』
『島にしばらく滞在するならばラーツァグリアニスに協力させましょう。
 アレの子孫も無職を卒業したのであればアレの子離れも卒業させないといけませんから』

 先代黄竜をアレ呼ばわりとは…。苦労してんだな、この人。

「他の魔石精製が必要なメンバーへ確認を取りますので少々お待ちいただいてもいいでしょうか?
 それとここで闇魔法を使う事もお許し願いたいのですが……」
『島で時々反応があったのは青の守り人でしたか。どちらも構いませんよ、早くに動き始めるのは良いことです』
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

異世界に転生したゴブリン、地球に戻る

丘野 優
ファンタジー
ある日交通事故に遭って死亡した主人公。気づけば不思議な場所にいて、神を名乗る存在から転生を持ちかけられる。すわチートか、異世界無双か、と思って一瞬喜ぶが、話を聞くとそこまで有利なことはなさそうだった。しかし、もう死亡してしまった以上、言われた通りにするしかないと覚悟を決める。そして異世界に転生するのだが……。その後、神の事情によって異世界から現実世界に戻ってきた主人公は、そこで以前と同じように日本で、しかしゴブリンの姿で生活をすることになる。

処理中です...