特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -74話-[黄竜と魔石と新たな武器と⑤]

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 闇魔法の使用許可もいただけたのでまず初めにセプテマ氏を呼び出してイエロー・ドラゴングリュエザールを紹介した。

「こちらはイエロー・ドラゴンのグリュエザールです。
 俺のついでに竜の魔石精製の依頼を快く受け入れてくださったので、
 近場に居たセプテマ氏をまずは引き合わせることにしました」
「お、お初にお目に掛かる地竜の王よ。
 上位者と対面する機会も少なかったため不出来な挨拶はご容赦してほしいですぞ…」

 手順としては、イエロー・ドラゴングリュエザールが面談して性格や魔力が合いそうな眷族を選定し、
 その竜と共に一旦元の生活に戻すことになる。
 地竜は土属性なのでノイ達土精と同じくクリエイトな集団であるため、
 人化の術や小型化もうちのフリューネ並みにやってのけるらしい。

 そんなわけでセプテマ氏が面談している間に俺はフォレストトーレで頑張っている他の候補者とアクセスを取ってみることにした。

「《コール:アインス》」
 ピリリリリリリリ、ピリリリリポロン♪

〔はい、アインスです。いかがされましたか水無月みなづき様?〕
「イエロー・ドラゴンとの接触に成功しまして、
 勇者PTのマクラインと契約精霊を貸してもらいたくて」
〔教国のギルドと連携を取りますのでしばらくお待ちください。
 マクライン様の確保が出来ましたら改めてこちらから折り返します〕
「お願いします」

 アスペラルダのギルドだけで済む内容ならアインスさんはものの一分で大抵のことは準備して見せるが、
 流石に教国所属扱いになっていて勇者PTの生き残りたるマクラインを呼び出すのは簡単じゃないらしい。
 それでも詳しく聞かないうちから[連携取ります]っては凄いな。有能過ぎて怖い。

「《ゲート:土精霊の里》」

 次はマリエルがやってもらった加護の前借と後日の正式な祝福を打診しにティターン様に会いに行こう。

「セプテマ氏、ちょっと出てきます」
「え!?なっ!!? 儂を残してどどど、どこへ行こうと言うのかね!?」
「土精の王、ティターン様に謁見してきます。
 そこまで時間を使うわけでは無いと思いますが一応声掛けだけでもと思ったんですけど…。
 イエロー・ドラゴングリュエザールは優しい竜でしょう? 何をそんなに…」
水無月みなづき殿は分かっていない様だが竜は物語に出ては来ても人前に姿を現したことはないのですぞ!
 そんな竜の長と二人は流石に恐れ多いわ!」

 いや、でも俺も行かないと。
 マクラインは加護を持ってないから先に話を通しておかないと地属性の魔石精製の話も進まなくなるし。

「じゃあブルー・ドラゴンフリューネ残します?」
『嫌!』
「鬼か!」
「対面式が終わったらここで待っててください。
 戻って来た時に村にお送りしますんで。じゃ」

 置いて行かれまいと密着して来たフリューネをそのままに、
 子犬の様な顔で訴えかけてくる剣聖おっさんを無視して俺は島から出て行った。
 土精霊の里に着いたらおっさんが着いて来ないようにゲートは早々に閉ざさせていただいた。


 * * * * *
 光源に[ライトボール]を使用して通路を抜けると、
 すでに俺が訪問したことを察していたティターン様と里に住む精霊たちが歓迎してくれた。

「ご無沙汰しております、ティターン様」
『精霊からしてみれば高頻度で顔を出してくれている。今日はどのような用向きだ?』
「実は――」

 なんだかんだで知り合った精霊王の元へは菓子折りなどを持参してちょくちょく顔を出している。
 そんな俺の根回しも功を奏してか、
 すんなりと話を聞く態勢になってくださったティターン様を相手に俺は計画と確認を含めてすべてを伝えた。

「というわけで、今後真なる加護持ちを増やしていきたいのですが、
 祝福を与える条件や期間的な制約はありますか?」
『真なる加護を祝福する条件は確かに存在する。
 細々としたものがいくつかあるが内容を人に伝えたところで判断は我々で行うので口にはしない。
 期間で言えばそうだな……、半年に一人に真なる加護を祝福することは可能だろう』

 半年か……。
 今のところ芽が出ているのはマクラインだけだからまだいいが、う~む。
 タルテューフォはひとまず魔法に慣れさせることから始めている状況だから、
 最悪一閃などの基本技は使えなくても防御力を上げる魔法だけ使わせるでも十分な戦力になるか?

「これからマクラインという勇者PTで守護騎士を担っている男を見てもらいたいのですが可能でしょうか?」
水無月宗八みなづきそうはちの推薦であれば期待は出来るか…。
 わかっていると思うが祝福は本来おいそれと行うものでは無いぞ。
 現在は事情も加味して協力できる部分はしているに過ぎない事は理解しておいてくれ』
「重々理解しております。
 無精も連れて来ますのでもし合格であれば染めていただいて構いません」
『あいわかった』

 あ、そうだ聞いておかないといけないのがあったな。

「俺の身内の話なのですが、
 大風精テンペスト様から1日限定の祝福をしてもらっている間に正式な真なる加護を慣らすという事がありました。
 ティターン様も同じことは出来るのでしょうか?」
『よくもまぁあの最古参がそんな面倒な事をしたものだな。
 それは緊急的な処置にしても力をかなり消耗する荒業だろうに……、私も可能であるがやろうとは思わないな』
「そうですか……」

 マクラインが祝福を受けて真なる加護が適用されるにはマリエルと同じく1日掛かるだろう。
 実際に加護が無い状態でマクラインとイエロー・ドラゴングリュエザールを合わせるのは失礼に当たるかもしれないな……。
 土属性の魔力を持たない人間と地竜との相性を判断することが出来るか先に聞いておいて、
 ダメそうなら明日に再度マクラインを借りて地竜を連れ帰ってもらおう。

「では、一度戻ります。
 今日中にマクラインは連れて来ますのでご対応よろしくお願いします」


 * * * * *
「というわけで連れて来ました。先ほど話を通していたマクラインです」
水無月みなづき殿の紹介に預かりました、マクライン=ハウランドです。
 お会い出来て光栄です。四神、精霊王ティターン様』

 マクラインの本名をいま初めて知ったわ。
 さっそくアポの取れたアインスさんから折電をもらいすぐに連れて来たマクラインは、
 軽く説明されていたにも関わらずここにきて一番の緊張を見せている。

『顔を上げてくれマクライン。
 今回の縁は特例である事だけはしっかり理解しておいてもらえればいい』
「ははっ!」

 まるで自分が仕える国の王様にでもかしづくかの様な低姿勢な態度で返答するなぁ…。
 いや、立場的には王様よりも上なんだろう。この世界は精霊信仰があるからな。
 っていうか、その信仰が原因で神と王が同じ存在になってますが人間は大丈夫だろうか?

「お願いしていた件ですが…」
『いくつか質問もしたい。契約精霊の具合も観察する時間も欲しい』
「では、ひとまず1時間ほど預けます」

 と、踵を返す俺を呼び止める声あり。

「え!?なっ!!? 自分を残してどどど、どこへ行こうとしているのですか!?」
「用があるのはマイクライン氏だけで俺がここに残ってもやる事ないし。
 その時間が勿体ないから黄竜の巣に戻るんですけど…」

 どこぞの剣聖けんせいみたいな反応しやがって。
 あっちでも緊張しいのおじさんが待ってるからお世話しに行かないといけないのよ。

水無月みなづき殿は分かっていない様だが精霊王は物語に出ては来ても人前に姿を現したことはないのですよ!
 そんな土精王と二人は流石に恐れ多いです!」
「自分の契約精霊も居るしいっぱい土精も居るじゃないですか。
 今後お世話になるでしょうしこの場でしっかりと自分をアピールしておいてくださいね。じゃ」

 普段は勇者を前に立たせて歩かせてとしているからこういう時に不安になるのだ。
 俺は全部をアルシェに任せていないから前に出なきゃいけない場面もある。
 今後は勇者PTのメンバーとしてメリオに負けないくらいガンガンこういう場に連れ出して自覚を持たせよう。
 ゲートを通り抜けて焼き直しの如くマクラインが続かない様にさっさと閉じる。

「あれ? セプテマ氏はどちらです?」
『青の守り人が遅いからと自分の足で帰って行きましたよ。
 彼は魔力操作に慣れていませんでしたから地竜アースを付けることにしました』
「そうですか。 《召喚サモン:ノイティミル》」
『第二長女ノイティミル、お父さんの呼び掛けに応え護らせていただくです』

 セプテマ氏のお見合いが終わったなら次はタルテューフォかノイのどちらかだけど、
 ひとまずは即戦力に繋がるうちの第二長女の魔石をおねだりするかね。
 召喚サモン時の決め台詞と共にクー監修のカーテシーを見せつけたノイを背後から抱き上げる。

『お父さん、タルテューフォより先でいいんです?』
「Chu♪ あいつはセプテマ氏と同じで魔石が成長するまで時間が掛かるからな。
 ノイが魔石を取得出来れば一緒に戦う時に俺も恩恵を得られる」
『次はその精霊と相性が良い竜を選べばいいのですか?』
「お願いします。愛娘ですので特に相性が良い竜をお願いします」

 元陰キャの俺が人前に出るストレスを解消する為に最近は娘に甘える頻度が増えている気がする…。
 そのおかげでノイも甘えられる事に慣れて頬へのKissも寛容になった。
 あとは四女アニマを篭絡させるだけよ!

『(Kissは許しません!)』
「(だが、断る!)」
『うわっ!? は、放しなさい宗八そうはち!』
「お父様と呼んでくれアニマ。Chu♪」
『あ~~~~~~!!?ワタクシにキスしたぁ~~!』

 無精の鎧からアニマを分離しての意図一緒に抱きながら愛が篭るチッスをすると、
 真っ赤になって騒ぎ立てるアニマのなんと愛らしい事か。

『青の守り人の愛は歪んでいるのではないですか?』
『あれは娘たちだけだよ。アルカンシェに対しては普通の愛を示してる』
『アルカンシェ?』
『水精王シヴァの娘で宗八そうはちの大事な女だよ』

 娘とのコミュニケーションを取っている間にペットが勝手に暴露しているなど思いもしない宗八そうはちであった。
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