68 / 88
66話 怠惰
しおりを挟む
「プールかぁ……」
スマホのカレンダーを眺めながら俺は二日後のイベントに胸を踊らせていた。
去年は色々あって楽しさよりも驚愕の方が大きかった出来事が沢山あった。
プールならばそうそう変なイベントは起きないし、起きてもどうにかなる範疇だ。
「………フラグにならないことを祈ろう」
冷房の恩恵を心から感じるこの頃。もはや部屋から出ることすら億劫だ。ずっと冷房の効いた部屋に閉じこもっていたい。出来ることなら一生出たくない。
でも、ベッドの上と言うのも飽きるものなのだ。ゲームもそろそろ飽きてきて、ついにやることが無くなった。
まぁ、宿題はあるが、まだお盆前。故に時間はまだ全然あるわけだ。お盆前に終わらせられれば良い、今年はそう決めている。だからまだ焦る時間じゃない。
「蓮翔……?」
「瑠魅?どうかしたのか?」
心配そうな顔をして顔を覗かせる瑠魅。あの小動物感が良い!っと、このままじゃ危ないヤツになっちまう。収まれ、俺の中の危ないヤツよ。
「寒くないの?ここだけ極寒だよ?」
「このぐらいが調度良いのさ」
「そう?実はさ、お願いがあるんだけど……良い?」
「お願い?」
「うん。明日、買い物に付き合って欲しいの」
そんな目で俺を見つめないでくれ。貧弱メンタルな俺は、そんなふうに見られるだけでコロッと落ちてしまうのだ。
「わかった。明日は暇だし行こっか」
「ありがと」
そう言って瑠魅は去っていった。
たまに思うけど、瑠魅はかなり変わったと思う。
初めて出会った時はどこか弱々しくて自信のなさそうな子だった。でも、最近は明るくなってきて、性格もだいぶ変わってきている。
まぁ、俺もだいぶ変わったし、人のことは言えないけど。
「明日、瑠魅との買い物……これ、デート?」
俺はクローゼットを勢いよく開けた。残念なことにほとんど服は入っていない。昨日、天気が良いからと調子に乗ってほとんどの衣類は洗濯に出していた。
洗濯物を取り込むのは夕方前になるだろうけど、俺は今すぐに明日着ていく服を決めたい。
俺は勢いよく扉を開けて外へと一歩踏み出した。
「あっつ。溶けるわ」
俺は一歩だけ踏み出し、すぐに部屋に帰還した。
玄関までそう距離はない。安全を確保しつつのダッシュでも十秒程度だろう。
だが、その間に溶けないという保証は無いのだ。こんなに暑いのに出なければならないなんて……。
「まさか……冷房のせいなのか!?」
やられた……!冷房は初めからこれを狙っていたのか!俺をこの部屋に閉じ込めて出れないようにするために!
「こんなモヤモヤしたままひたすらに時間を待つしかないのか?なにか方法は……」
俺の脳にある方法が思いつく。俺はすぐさま窓を覗いた。
「くぅ……見えそうで見えないぞ!」
もう少しで洗濯物が見えそうだが、どうもギリギリ隠れてしまっている。
やる気があるうちにこういうのをやっておきたいタイプの俺としては、この時間は苦痛だ。
取り込んだ後、もしやる気がなくなっていたら、いつものような適当な服になってしまう。那乃との買い物の時のように最低限一緒に居て恥ずかしくないような服装はしたい。
「記憶に頼るしかない」
神との一件で人並みの記憶力を手に入れた俺に不可能は無い。さぁ、思い出せ。
俺はベッドの上に座り込んで、目をつぶり、頭を抱えながらどんな服があったかを思い浮かべていく。
~~~~
「はっ……!」
頭が少し痛い。記憶も曖昧だ。
「うそ、だろ……」
時計は午後一時を差していた。考え始めたのが十時程度。つまり、三時間も寝ていたことになる。
夏休みの弊害だ。ついつい寝てしまう。このまま惰眠を貪るのは宜しくないぞ。
頭痛のせいか、はたまた時間経過のせいか、服を選ぶ気力がもうない。
「そうだな。人並みの記憶力があるならファッションセンスだって人並みにあるだろ。洗濯物を取り込んでからでも遅くは無いだろ」
スマホを取り出して昨日見ていたアニメの続きをかけた。所詮まだ一時。三時ぐらいから宿題はやれば良い。
「あぁ……夏休みって良いな」
スマホのカレンダーを眺めながら俺は二日後のイベントに胸を踊らせていた。
去年は色々あって楽しさよりも驚愕の方が大きかった出来事が沢山あった。
プールならばそうそう変なイベントは起きないし、起きてもどうにかなる範疇だ。
「………フラグにならないことを祈ろう」
冷房の恩恵を心から感じるこの頃。もはや部屋から出ることすら億劫だ。ずっと冷房の効いた部屋に閉じこもっていたい。出来ることなら一生出たくない。
でも、ベッドの上と言うのも飽きるものなのだ。ゲームもそろそろ飽きてきて、ついにやることが無くなった。
まぁ、宿題はあるが、まだお盆前。故に時間はまだ全然あるわけだ。お盆前に終わらせられれば良い、今年はそう決めている。だからまだ焦る時間じゃない。
「蓮翔……?」
「瑠魅?どうかしたのか?」
心配そうな顔をして顔を覗かせる瑠魅。あの小動物感が良い!っと、このままじゃ危ないヤツになっちまう。収まれ、俺の中の危ないヤツよ。
「寒くないの?ここだけ極寒だよ?」
「このぐらいが調度良いのさ」
「そう?実はさ、お願いがあるんだけど……良い?」
「お願い?」
「うん。明日、買い物に付き合って欲しいの」
そんな目で俺を見つめないでくれ。貧弱メンタルな俺は、そんなふうに見られるだけでコロッと落ちてしまうのだ。
「わかった。明日は暇だし行こっか」
「ありがと」
そう言って瑠魅は去っていった。
たまに思うけど、瑠魅はかなり変わったと思う。
初めて出会った時はどこか弱々しくて自信のなさそうな子だった。でも、最近は明るくなってきて、性格もだいぶ変わってきている。
まぁ、俺もだいぶ変わったし、人のことは言えないけど。
「明日、瑠魅との買い物……これ、デート?」
俺はクローゼットを勢いよく開けた。残念なことにほとんど服は入っていない。昨日、天気が良いからと調子に乗ってほとんどの衣類は洗濯に出していた。
洗濯物を取り込むのは夕方前になるだろうけど、俺は今すぐに明日着ていく服を決めたい。
俺は勢いよく扉を開けて外へと一歩踏み出した。
「あっつ。溶けるわ」
俺は一歩だけ踏み出し、すぐに部屋に帰還した。
玄関までそう距離はない。安全を確保しつつのダッシュでも十秒程度だろう。
だが、その間に溶けないという保証は無いのだ。こんなに暑いのに出なければならないなんて……。
「まさか……冷房のせいなのか!?」
やられた……!冷房は初めからこれを狙っていたのか!俺をこの部屋に閉じ込めて出れないようにするために!
「こんなモヤモヤしたままひたすらに時間を待つしかないのか?なにか方法は……」
俺の脳にある方法が思いつく。俺はすぐさま窓を覗いた。
「くぅ……見えそうで見えないぞ!」
もう少しで洗濯物が見えそうだが、どうもギリギリ隠れてしまっている。
やる気があるうちにこういうのをやっておきたいタイプの俺としては、この時間は苦痛だ。
取り込んだ後、もしやる気がなくなっていたら、いつものような適当な服になってしまう。那乃との買い物の時のように最低限一緒に居て恥ずかしくないような服装はしたい。
「記憶に頼るしかない」
神との一件で人並みの記憶力を手に入れた俺に不可能は無い。さぁ、思い出せ。
俺はベッドの上に座り込んで、目をつぶり、頭を抱えながらどんな服があったかを思い浮かべていく。
~~~~
「はっ……!」
頭が少し痛い。記憶も曖昧だ。
「うそ、だろ……」
時計は午後一時を差していた。考え始めたのが十時程度。つまり、三時間も寝ていたことになる。
夏休みの弊害だ。ついつい寝てしまう。このまま惰眠を貪るのは宜しくないぞ。
頭痛のせいか、はたまた時間経過のせいか、服を選ぶ気力がもうない。
「そうだな。人並みの記憶力があるならファッションセンスだって人並みにあるだろ。洗濯物を取り込んでからでも遅くは無いだろ」
スマホを取り出して昨日見ていたアニメの続きをかけた。所詮まだ一時。三時ぐらいから宿題はやれば良い。
「あぁ……夏休みって良いな」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
幼なじみはイケメン関西人!
美和優希
恋愛
幼い頃、関西へ引っ越してしまった幼なじみとであり初恋の相手、こうちゃんと10年越しに再会した千紗。
こうちゃんは、記憶の中にある姿よりずっとかっこよく意地悪になっていた。
家も隣同士で学校でも、千紗は大きくなったこうちゃんにドキドキさせられっぱなし。
それなのに、ひょんなことから突然こうちゃんと同居まですることになってしまって……!?
初回公開・完結*2015.04.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2019.10.27(加筆修正 2019.11.19)
*表紙イラストは、イラストAC(小平帆乃佳様)のイラスト素材に文字入れをして使わせていただいてます。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる