余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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65話 思い出作り

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「ふぁぁ……眠い」

  亮たちをデートさせてから二日後。俺は今駅前で那乃を待っていた。

  それはそうと、約束の時間まであと十分ほどあるし、仮眠をとっても良いかもしれない。

「お待たせ、待たせちゃった?」

「いや、全然」

  そんな事を思っていると、前から那乃が小走りで近付いてきていた。

  那乃とはあの日、埋め合わせも兼ねて遊びに行く約束をしていた。

「どう?似合ってる?」

「あぁ。良いと思うぞ」

  オシャレだから良いのだけど、夏にガーディガンって暑くないのか?

  下がスカートだから実はそこまで暑くは無いのかもしれない。俺にオシャレは分からないから何とも言えないな。

「よし。じゃあ早速行こっか」

  今日の目的はショッピングだ。遊ぶこともできるし、お詫びの品も一緒に渡せる。何より那乃が行きたがっていた。

  こうして二人きりで遊びに行くのは去年ぶりだろうか。最近は大勢で行くことが多く、瑠魅のこともあってなかなか行けなかった。

  この二人だけの時間、嫌いじゃないな。

~~~~

「申し訳ないが、さすがにこの先は行きにくい」

「あ、そうだよね。じゃあちょっとだけ待ってて」

  ショッピングモールに着いてそうそうに買いたいものがあると言われて着いた先は水着売り場だった。恋人同士ならまだしも、さすがに今の俺では入りにくいし、周りの視線を集めて居ずらい。

  那乃を見送り、ずっと立っているのも疲れるし椅子に座る。

  それからどれほど経ったのだろうか。ボケっとして座っていると、不意に前から那乃が歩いてきているのが目に映った。紙袋を下げてるし、どうやら買い物はできたらしい。

「ごめん、待たせちゃって」

「気にすんな。それ、俺が持とうか?」

「いや、さすがに申し訳ないよ。待たせた上に荷物まで持ってもらうなんて」

「これは遊びでもあるけど、俺からの埋め合わせだし、お詫びなんだ。だからそう言うのは気にしなくて良い」

「そう……?じゃあ、お願いしても良いかな?」

  那乃に何かをしてあげている。これだけで俺の中にある罪悪感や後ろめたさは幾分か緩和される。

  あの日、陽斗は那乃に告白してフラれたらしい。二人とも表面的にはいつも通りだったけど、やっぱり気まずく感じる部分は少なからずあると思う。

  那乃のため、陽斗のためと思ってやった事がこんな結果になるなんて………。当分、変なことは考えないでおこう。

「次、あの店に入ろ!」

「分かったって……そんなに急いでいくなよ」

  最近、心が揺れる。俺は瑠魅が好きだ。まるで妹が出来たように感じて、一緒に居るだけで心が落ち着く。でも、最近は那乃の笑顔を見る度に意識が那乃に向いてしまう。

「見て、これ可愛くない?」

「そうだな。似合ってるよ」

「っ……そ、そうかな?」

「これ、俺が買って良い?」

「えっ?」

「お詫びの品としてさ」

  この瞬間だけは俺が那乃を独占できてる。俺はその事実が、証拠が、思い出が欲しかった。

  俺が居なくなった後も俺の事を覚えていられるような何かを俺は欲していた。

「ほら。プレゼント」

「ありがと、蓮くん!」

  今の俺と那乃の関係性じゃ、このストラップはただのストラップ、なんの意味も持たない。でも、俺が死んだあとならば、このプレゼントには何かきっと意味が宿るはずだ。

「よし、今度はゲーセンに行こうよ」

「あぁ」
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