余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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61話 進展 1

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「いやぁ、あんな最後だとは思いもしなかったぜ」

「それな。あんなどんでん返しで終わるなんてな」

  夏休みが始まり早一週間。俺は今、海斗、陽斗、亮の四人で映画館に来ている。

  海斗と陽斗は楽しく映画の感想を言い合っているが、亮は朝からずっと浮き足立っていて、何かを話したいのかウズウズしているように見えた。

  まぁ、だいたい予想はつくから海斗たちはあえてスルーしてるようだが、少し亮が可哀想に思える。

「亮から映画の誘いなんて珍しいな。何かあったのか?」

「聞いちゃう?」

「そんなに勿体ぶることか?どうせ冬華関連だろ?」

「どうせ惚気話だろ?蓮は良いとして、海斗と俺はどんな気持ちで聞いてりゃ良いんだよ」

  前を歩いていた二人が振り返り、陽斗はウンザリしたような顔を浮かべた。海斗にいたっては睨んで来てやがる。

「いやぁね?実はさ……ついにね?ついにさ、苗字呼びから名前呼びになったんだよ!」

「「「…………」」」

  その発言で陽斗と海斗の瞳から怒りの感情が消えて哀れみが生まれたように見えた。

  俺もまさかあんな堂々としてそんな事を言われるとは思わなかった。俺も海斗も陽斗も冬華は名前呼びだし、彼氏の亮が名前呼びと聞いても違和感しかない。

「………なにさ?みんな言いたげだね?はぁ……そうだよ、僕からの提案じゃないよ。アッチからお互い名前呼びにしないって言ってきてもらったのさ」

「「「…………」」」

  違う。そういう事を言いたいんじゃないんだ。もっと根本的な問題なんだよ。亮からすればものすごい進歩なのかもしれない。でも、それの報告のために映画館まで呼んで直接話そうと思うか?

  映画館なんて電車を使わないと行けないんだ。確かに映画は面白かったし、こうして集まれて楽しいと思うけど、それなら別に家でも良かったんじゃないかと思ってしまう自分が居る。

「名前呼び、ね。呼び捨てってことで良いんだよな?」

  謎の沈黙を破ったのは陽斗だ。だが、陽斗の顔はその質問の答えを知ってるかのように諦めの色が伺えた。まぁ、かくいう俺も亮の答えは何となく分かるが……。

「そ、そんな恐れ多いこと……普通に冬華ちゃんって呼ぶことにした……」

「「「…………」」」

  普通、そこで恥じらうかなぁ?もうなんかお腹いっぱいだ。何この初々しさは?今どき中学生の恋愛でもこうにはならないんじゃないか?

「………亮はさ、冬華のこと好きなんだよな?」

「そ、それは……も、もちろん!こんな僕を好きになってくれて……僕も好きになれた人だもん」

「ならさ。貰ってばっかじゃイケないと思う」

  珍しく海斗が真面目な事を言ってる。さっき見た映画にでも影響されたのか?

「そう、かも。でも、どうすれば良いかわかんないよ」

「だろうな。俺も知らん」

  良かった、どうやらいつも海斗に戻ったみたいだ。

「遊びに誘うとかでも良いんじゃないか?他には時々連絡してみるとか」

「遊びに……?そういうので良いの?」

「逆に何があんだよ?最初はそんなもんだろ」

  やばい、今度は陽斗まで真面目モードだ。こんな陽斗、部活の時ぐらいしか見ないぞ。

  でも、遊びか。それなら俺にも出来ることがありそうだ。

「亮は冬華と遊びたい?」

「ま、まぁ……。できるなら。でも、まだちょっと連絡する勇気がさ」

「そっか。なら、俺が冬華とか誘うから二人で遊ぶってのは?」

「えっ?」

「良いじゃん。それで最後に次の予定まで決めれば永久機関やん」

「海斗……お前はたまに俺以上にバカになるよな」

「俺がバカだと?永久機関なんて響き、かっけぇだろ?」

「………で、どうする?」

  海斗と陽斗はこの際無視だ。耳を貸すと変な方向に話がズレて進まなくなる。

「お願いするよ。僕、冬華ちゃんと遊びたい」

「分かった。じゃあ連絡してみるわ。あっちの予定もあるからどうなるか分からないけど」

  まだ昼前だし遊ぶにしても充分な時間はある。あとは冬華の予定次第だな。

  でも、せっかくならサプライズみたいなものをしても良いかもしれない。

  そうと決まれば、連絡相手は一人しか居ない。

「あ、もしもし、那乃か?」
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