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60話 心境変化
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~姫野那乃視点~
「改めて、おめでとう、冬華!」
「うん、おめでとう、冬華ちゃん」
「アハハハ、ありがと!」
今日は冬華の成就祝いのようなものをわたしの家で行ってる最中。冬華は自分の気持ちに気付いてからかなりのアピールで、そんなに時間をかけないで亮君と恋人同士になっている。
わたしも……こんな行動力があれば、変わっていたのかもしれない。わたしは隣に座る瑠魅ちゃんを横目でそっと見る。
明るく目立つ茶色で艶のある綺麗な髪、日本じゃあまり見ない青色の瞳、細くハッキリとしたクビレに、主張はないもののしっかりと存在感のある胸、スラッと伸びる足。何よりもわたしよりも数センチ高く、百六十はある身長。
モデルと言われても信じてしまいそうな彼女。片や一緒に過ごした時間でしか勝てないわたし。
「…………」
なんでこんな事考えちゃうんだろ……。今は冬華を祝うための時間なのに。ダメだな、わたし。冬華はわたしの大事な友達なのに、そんな幸せそうに笑ってるのを見てるのは……辛い。ダメなのに、友達なのに、イケないと分かってるのに……冬華が妬ましい、憎いと思っちゃってる。
こんな女の子、蓮君は好きじゃないよね。
「どうしたの、那乃?」
「あ、ううん、なんでもないよ。あ、それよりもお祝いのお菓子を作ったの。今持ってくるね!」
ダメ、今は冬華の顔を見れないよ。一旦落ち着かないと。いつ落ち込んでも良いけど、今だけはダメ。冬華を心の底からお祝いしないと。
「はぁ………」
昨日に戻りたい。こんな気持ちで冬華に会いたくなかった。こんな自分、見たくなかった。二人に見せたくなかった。
友達の幸せをもっと祝福出来ると思ってたのに、実際のわたしはこの有様。
「あんまり遅いと怪しまれるよね」
テーブルに用意していたカップケーキを三つお盆に乗せて、二階にあるわたしの部屋に向かう。
自分の部屋に向かってるのに、こんなに憂鬱な気分なんて……。
「ふぅ……よし」
ドアの前で一息つく。これからのわたしはいつのもわたし。明るくて、友人の幸せを自分の幸せのように喜べる、そんなわたし。
「おまたせ、カップケーキだよ!」
良かった、笑えてる。冬華の顔も瑠魅ちゃんの顔もちゃんと見れる。これなら大丈夫。
「それで亮君とはどうなの?」
カップケーキを二人の前に置いてわたしは当たり障りのない、無難な話題を出す。
何もしない時間を作ってしまうと、またダメなことを考えそうで、わたしはそれから逃げるように口走っていた。
「私も参考までに聞きたい」
「参考に?い、いやぁ……私たち付き合ったと言ってもまだまだだよ?」
「だとしても、何かないの?惚気の一つや二つなら聞くよ」
「うぅん……そうだなぁ。今はお互いのことを話してるだけ、かな。私たちまだお互いの事あんまり知らないからね」
「いいね、そういうの。とっても楽しそう。他には何かないの?」
「………瑠魅ちゃん、今日は積極的だね」
何か話さないと。考えないようにしないと。
私の笑み、不自然じゃないかな?
笑うって、笑顔って、楽しい時に自然と出るものだと思ってた。こんなに辛い気持ちを隠す笑顔もあるんだ。
わたし、なんでいつもこうなのかな……。多分あの時、逃げちゃったから。あの時、言えば良かった。そうすれば、こんなに引きずることも無かったし、昨日だって蓮君のこと避けずに済んだのかもしれない。
「あとは特にないかな?私と橋も……りょ、亮君……の関係的に?一緒にいるだけで、まぁ?幸せかなって?思うし?」
「名前呼び、恥ずかしいの?本人居ないのに?」
「……瑠魅ちゃんは少し距離感を覚えた方が良いと思うよ。蓮翔君との距離感を見てるとコッチがハラハラしちゃうもん」
「でも、やっぱり冬華は慣れた方が良いんじゃない?やっぱり苗字呼びよりも名前呼びの方が良いと思うんだよね」
「うぅ……私には無理だよ。恥ずかしいよ。どうすれば良いかなぁ?」
ふふっ。やっぱり冬華は可愛いな。こういう無防備なところが冬華の魅力だと思う。
「そうだなぁ……亮君は女の子との関わりが少ないし、冬華が積極的になった方が進展するかも?」
「そうかな?」
「でも、焦りすぎは良くないと思う。地道に頑張ろ」
「そうだよね……ありがと、二人とも!」
もしかしたら、わたしは焦っていたのかもしれない。今すぐ付き合いたいって気持ちが先走っちゃってるのかもしれない。
だとしたら、今はまだこの関係でも良いのかな。だってわたし達はまだ高校生だもんね。
蓮君は大学進学も考えてるって言ってた。わたしももっと頑張って蓮君と瑠魅ちゃんと同じ大学に行きたい。そして、もっと沢山のことを共有する。それからでもきっと遅くはない。
わたしも地道に頑張ろう。いつか蓮君がわたしに……わたし達に振り向いてくれるように。
「わたし達も頑張ろ、瑠魅ちゃん」
「……そうだね、私たちもがんばろ」
「改めて、おめでとう、冬華!」
「うん、おめでとう、冬華ちゃん」
「アハハハ、ありがと!」
今日は冬華の成就祝いのようなものをわたしの家で行ってる最中。冬華は自分の気持ちに気付いてからかなりのアピールで、そんなに時間をかけないで亮君と恋人同士になっている。
わたしも……こんな行動力があれば、変わっていたのかもしれない。わたしは隣に座る瑠魅ちゃんを横目でそっと見る。
明るく目立つ茶色で艶のある綺麗な髪、日本じゃあまり見ない青色の瞳、細くハッキリとしたクビレに、主張はないもののしっかりと存在感のある胸、スラッと伸びる足。何よりもわたしよりも数センチ高く、百六十はある身長。
モデルと言われても信じてしまいそうな彼女。片や一緒に過ごした時間でしか勝てないわたし。
「…………」
なんでこんな事考えちゃうんだろ……。今は冬華を祝うための時間なのに。ダメだな、わたし。冬華はわたしの大事な友達なのに、そんな幸せそうに笑ってるのを見てるのは……辛い。ダメなのに、友達なのに、イケないと分かってるのに……冬華が妬ましい、憎いと思っちゃってる。
こんな女の子、蓮君は好きじゃないよね。
「どうしたの、那乃?」
「あ、ううん、なんでもないよ。あ、それよりもお祝いのお菓子を作ったの。今持ってくるね!」
ダメ、今は冬華の顔を見れないよ。一旦落ち着かないと。いつ落ち込んでも良いけど、今だけはダメ。冬華を心の底からお祝いしないと。
「はぁ………」
昨日に戻りたい。こんな気持ちで冬華に会いたくなかった。こんな自分、見たくなかった。二人に見せたくなかった。
友達の幸せをもっと祝福出来ると思ってたのに、実際のわたしはこの有様。
「あんまり遅いと怪しまれるよね」
テーブルに用意していたカップケーキを三つお盆に乗せて、二階にあるわたしの部屋に向かう。
自分の部屋に向かってるのに、こんなに憂鬱な気分なんて……。
「ふぅ……よし」
ドアの前で一息つく。これからのわたしはいつのもわたし。明るくて、友人の幸せを自分の幸せのように喜べる、そんなわたし。
「おまたせ、カップケーキだよ!」
良かった、笑えてる。冬華の顔も瑠魅ちゃんの顔もちゃんと見れる。これなら大丈夫。
「それで亮君とはどうなの?」
カップケーキを二人の前に置いてわたしは当たり障りのない、無難な話題を出す。
何もしない時間を作ってしまうと、またダメなことを考えそうで、わたしはそれから逃げるように口走っていた。
「私も参考までに聞きたい」
「参考に?い、いやぁ……私たち付き合ったと言ってもまだまだだよ?」
「だとしても、何かないの?惚気の一つや二つなら聞くよ」
「うぅん……そうだなぁ。今はお互いのことを話してるだけ、かな。私たちまだお互いの事あんまり知らないからね」
「いいね、そういうの。とっても楽しそう。他には何かないの?」
「………瑠魅ちゃん、今日は積極的だね」
何か話さないと。考えないようにしないと。
私の笑み、不自然じゃないかな?
笑うって、笑顔って、楽しい時に自然と出るものだと思ってた。こんなに辛い気持ちを隠す笑顔もあるんだ。
わたし、なんでいつもこうなのかな……。多分あの時、逃げちゃったから。あの時、言えば良かった。そうすれば、こんなに引きずることも無かったし、昨日だって蓮君のこと避けずに済んだのかもしれない。
「あとは特にないかな?私と橋も……りょ、亮君……の関係的に?一緒にいるだけで、まぁ?幸せかなって?思うし?」
「名前呼び、恥ずかしいの?本人居ないのに?」
「……瑠魅ちゃんは少し距離感を覚えた方が良いと思うよ。蓮翔君との距離感を見てるとコッチがハラハラしちゃうもん」
「でも、やっぱり冬華は慣れた方が良いんじゃない?やっぱり苗字呼びよりも名前呼びの方が良いと思うんだよね」
「うぅ……私には無理だよ。恥ずかしいよ。どうすれば良いかなぁ?」
ふふっ。やっぱり冬華は可愛いな。こういう無防備なところが冬華の魅力だと思う。
「そうだなぁ……亮君は女の子との関わりが少ないし、冬華が積極的になった方が進展するかも?」
「そうかな?」
「でも、焦りすぎは良くないと思う。地道に頑張ろ」
「そうだよね……ありがと、二人とも!」
もしかしたら、わたしは焦っていたのかもしれない。今すぐ付き合いたいって気持ちが先走っちゃってるのかもしれない。
だとしたら、今はまだこの関係でも良いのかな。だってわたし達はまだ高校生だもんね。
蓮君は大学進学も考えてるって言ってた。わたしももっと頑張って蓮君と瑠魅ちゃんと同じ大学に行きたい。そして、もっと沢山のことを共有する。それからでもきっと遅くはない。
わたしも地道に頑張ろう。いつか蓮君がわたしに……わたし達に振り向いてくれるように。
「わたし達も頑張ろ、瑠魅ちゃん」
「……そうだね、私たちもがんばろ」
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