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第二十四話〜姉リリアナ〜
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第二十四話~姉リリアナ~
「なっ…!?リコリスなのか?」
「まぁ!お父様はもう娘の顔もお忘れですか?それもそうですね、私は要らない娘ですから。」
リコリスを護るように将軍はその腰を抱き、まるで仲睦まじい恋人同士のように二人は見つめ合いました。
なに?なんなのこれは?なんであの娘が私達を見下ろしているの?
「バーミリオン公爵。まずひとつ質問させていただきたい。彼女、リコリス・バーミリオンが貴女の娘であることは間違いありませんね?」
「は、……はい、私の娘です。」
イアン殿下からの質問にお父様は戸惑いながら答えました。これは一体なにが始まったの?
「彼女の祖母もリコリスさんと同じ黒髪の持ち主だった。これに間違いは?」
「…間違いありません。」
どうしてお祖母様の話が出てくるのかしら?私には殿下がなにを知りたいのかサッパリ分かりません。
「バーミリオン家には何代かに一人、黒髪の娘が生まれる。当主はその娘を別邸と呼ばれる離れに閉じ込め一生をそこで過ごさせた。その理由を貴方はご存知ですか?」
お父様の肩がビクリと震えました。私はお父様から聞いた『呪い』という言葉を思い出しました。この状況がその呪いのせいだというの?
「…黒髪の娘は呪いだと。そう伝えられております。」
「ほぉ…呪いですか。ではその呪いとは一体何なのでしょう?」
「………、………。存知上げません。」
お父様は顔を伏せブルブルと震え始めました。いつの間にかその顔は真っ青です。
「質問を変えましょうか。此度のドラガニア皇国のアスタリオへの侵略戦争。その目的を貴方はご存知ですか?」
侵略の目的?そんなもの略奪以外のなんだというのかしら。
「…アスタリオは長い間ドラガニアといがみ合っておりました。それに決着をつけたかったのでは…。」
「我々はある本を探していました。」
本?たかが本のために戦争をしたというの?どれだけ顔が美しくてもやはり蛮族は蛮族なのかしら?
「残念ながらその本はまだ見つかっていませんが、我々はそれ以上のものを見つけることができました。なんだかお分かりですね?」
イアン殿下は慈しむようにリコリスを見つめ、あの娘はそれに頷き返したのです。あの娘が一体なんだというの!まるで王族にでもなったような振る舞いをして!
「…分かりません。殿下の仰る本のことも呪いの理由も私は何も存知上げません!本当です!」
「お父様。イアン殿下の前で嘘を吐くような見苦しいことはしないでください。」
「…!お前!いつから私に命令ができる立場になった!!」
立ち上がり、リコリスに近づこうとするお父様を護衛の騎士たちが取り押さえました。首を押さえつけられ、顔が床にこすりつけられます。
「やめて!お父様にひどいことしないで!」
「ひどいことをしたのは一体どちらですか?」
その瞬間ゾワリと鳥肌が立ちました。イアン殿下の鋭い視線。今までの微笑みがまるで嘘のようです。
「お父様が一体なにをしたというのですか?!」
「公爵が、というのは語弊がありますね。アスタリオ島国がと言うべきでしょうか。
貴方達はね泥棒なんです。この国から大切なものを盗んだんですよ。言葉では言い尽くせないほど大切なものをね。」
「一体なにを…、泥棒だなんて知りません!アスタリオにあるものならお返しします!もう占領したんだから、勝手に持っていけばいいじゃない!」
「えぇ、だから返していただきました。」
そう言ったイアン殿下の視線の先にあるのは…。
「こうしてリコリスさんがこの国に戻られたこと、心から嬉しく思います。知っていたら私が迎えに行ったのに。」
「…イアン。リコリスはやらん。絶対にだ。」
私は彼らが一体なんの話をしているのか、理解することができなかったのです。
「なっ…!?リコリスなのか?」
「まぁ!お父様はもう娘の顔もお忘れですか?それもそうですね、私は要らない娘ですから。」
リコリスを護るように将軍はその腰を抱き、まるで仲睦まじい恋人同士のように二人は見つめ合いました。
なに?なんなのこれは?なんであの娘が私達を見下ろしているの?
「バーミリオン公爵。まずひとつ質問させていただきたい。彼女、リコリス・バーミリオンが貴女の娘であることは間違いありませんね?」
「は、……はい、私の娘です。」
イアン殿下からの質問にお父様は戸惑いながら答えました。これは一体なにが始まったの?
「彼女の祖母もリコリスさんと同じ黒髪の持ち主だった。これに間違いは?」
「…間違いありません。」
どうしてお祖母様の話が出てくるのかしら?私には殿下がなにを知りたいのかサッパリ分かりません。
「バーミリオン家には何代かに一人、黒髪の娘が生まれる。当主はその娘を別邸と呼ばれる離れに閉じ込め一生をそこで過ごさせた。その理由を貴方はご存知ですか?」
お父様の肩がビクリと震えました。私はお父様から聞いた『呪い』という言葉を思い出しました。この状況がその呪いのせいだというの?
「…黒髪の娘は呪いだと。そう伝えられております。」
「ほぉ…呪いですか。ではその呪いとは一体何なのでしょう?」
「………、………。存知上げません。」
お父様は顔を伏せブルブルと震え始めました。いつの間にかその顔は真っ青です。
「質問を変えましょうか。此度のドラガニア皇国のアスタリオへの侵略戦争。その目的を貴方はご存知ですか?」
侵略の目的?そんなもの略奪以外のなんだというのかしら。
「…アスタリオは長い間ドラガニアといがみ合っておりました。それに決着をつけたかったのでは…。」
「我々はある本を探していました。」
本?たかが本のために戦争をしたというの?どれだけ顔が美しくてもやはり蛮族は蛮族なのかしら?
「残念ながらその本はまだ見つかっていませんが、我々はそれ以上のものを見つけることができました。なんだかお分かりですね?」
イアン殿下は慈しむようにリコリスを見つめ、あの娘はそれに頷き返したのです。あの娘が一体なんだというの!まるで王族にでもなったような振る舞いをして!
「…分かりません。殿下の仰る本のことも呪いの理由も私は何も存知上げません!本当です!」
「お父様。イアン殿下の前で嘘を吐くような見苦しいことはしないでください。」
「…!お前!いつから私に命令ができる立場になった!!」
立ち上がり、リコリスに近づこうとするお父様を護衛の騎士たちが取り押さえました。首を押さえつけられ、顔が床にこすりつけられます。
「やめて!お父様にひどいことしないで!」
「ひどいことをしたのは一体どちらですか?」
その瞬間ゾワリと鳥肌が立ちました。イアン殿下の鋭い視線。今までの微笑みがまるで嘘のようです。
「お父様が一体なにをしたというのですか?!」
「公爵が、というのは語弊がありますね。アスタリオ島国がと言うべきでしょうか。
貴方達はね泥棒なんです。この国から大切なものを盗んだんですよ。言葉では言い尽くせないほど大切なものをね。」
「一体なにを…、泥棒だなんて知りません!アスタリオにあるものならお返しします!もう占領したんだから、勝手に持っていけばいいじゃない!」
「えぇ、だから返していただきました。」
そう言ったイアン殿下の視線の先にあるのは…。
「こうしてリコリスさんがこの国に戻られたこと、心から嬉しく思います。知っていたら私が迎えに行ったのに。」
「…イアン。リコリスはやらん。絶対にだ。」
私は彼らが一体なんの話をしているのか、理解することができなかったのです。
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