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第二章 ツル
09.飲み込まれる白い羽 ※
しおりを挟む展開が早すぎて、クレインは戸惑うばかりだ。
最終的にはこうなるだろう、とは思っていたし自分自身も望んでいたけれど、まさかピィの身体を触るのもそこそこに乗っかってこられるとは思いもしなかった。
いや。
思いもしなかった、などと、悠長に考えている場合ではない。
事実、目の前では自分の勃ちあがったものが、ピィの尻の間にゆっくりと飲み込まれていこうとしているのだから。
敏感な先端部分はねちねちと粘着質な音をたててピィの後孔に飲み込まれ……はせず、ほんの少しだけ出たり入ったりを繰り返し、まるで気まぐれなお遊びでただただ敏感な部分をねぶられているようだ。
飲み込まれようとするたびに、自身の陰茎が快楽に反応してぴくりと震えるのを感じる。早く全てが飲み込まれたら良いと思うのに、それは叶えられず、すぐにまた出てきてしまう。
何度かそれを繰り返され、ピィにいい加減遊ぶのをやめるように言おうかと思い始めた頃、ピィがクレインの胸に両手をついて言った。
「早く、入れてほしい、入れたいのに、……入れるのがもったいないんです」
そう言ったピィの瞳には、よく見るとなぜか涙すら浮かんでいる。
寝転がっていた上半身を後ろ手に肘をついて少しだけ起き上がり、片手で自分の身体を支えながらクレインは右手をピィへと伸ばした。
「おい……人のモノで散々遊んでおいて、何感傷的になってんだ。入れれば、いいだろ……これから、何回だって好きなときに好きなだけ、……入れたらいいだろ。最初に好きなだけ好きな所にって言ったのはお前だぞ、ピィ」
流れてきてはいない涙を、その右手で拭う。指についた涙をぺろりと舐めたら、なぜだか少し甘い味がした。
「ふふ、そう、ですね……では、いきま「ちょっと待て」
「なんですか、入れればって言ったの、クレインですよ」
「……そうだけど、ちょっと、……交代して」
少し起き上がったことで見えてしまった、ピィの陰茎を戒めている銀色に輝く細工の見事な貞操帯。このまま入れて、自分の腹との間で潰されたら、いくら勃たないとはいえ痛くなってしまいそうでかわいそうに思ってしまった。
「後ろから、入れても良いか……?」
「いやです、顔を見て入れたいです」
「おい」
「絶対、絶ッ対に! いやです」
ピィは動かない。
側から見たら、いや、当事者であっても、何とも滑稽なクレインとピィの初体験だ。発情期の高まった熱がすぐそこにあって、今にも手が届きそうな所にいる上、遮るものは何もないのに全然うまく進まない。
「お前、……それ、俺との間に挟まったら痛くないの? 一応気を使ったんだけど」
仕方なく指を指しながら理由を話せば、ピィは頬を赤らめながらも満面の笑みだ。
「クレイン」
「なに」
「クレイン……」
「……なんだよ」
ぬるり、と、亀頭が生暖かいものに包まれた。さっきまでほんの先端だけを刺激されていた、その先に。ゆっくり、ゆっくりと、今度こそ飲み込まれていく。
「……ん、っ、……すき、すきです、クレイン、あなたがこの世界で、一番……! すき……!」
「く、っ……おれ、も、すき」
自身の陰茎が、狭くてぬるぬるした孔に飲み込まれていく様を見ていた。根元まで入った直後、ピィが一際高い声をあげる。
目の前で行われているいやらしい光景に触発されたのか、それともその高い声に引きずられるようにしてか、快感が陰茎から腰を通り全身に広がり、ああこれもう戻れないな、と頭のどこかで思う。
ピィの言う通りだ。
正気でいられる間に入れて良かった。
今すぐにも頭の中がどうにかなってしまうような快楽に埋め尽くされていきながらも、ピィの顔を見る。酷く嬉しそうな、気持ちよさそうな、とにかく幸せそうな表情でこちらを見下ろしていた。
クレインも、満たされて行くのを感じた。
「俺……お前が、居てくれたらもう、満足」
思わず口にした。紛れもない本音だ。他に欲しいものなんて、クレインには無かったんだと心底から思った。
「私も、っ……クレイン、私もです、クレイン……!」
ピィがクレインの上に倒れ込み、唇を開きながら合わせてくる。
舌を食むように歯を立てると、ピィがぴくりと反応するのが楽しくて何度も何度も甘噛みをした。ピィの唾液がクレインの口腔内へと落ちてきても、それすら幸せだった。
「ごめんこれ、俺、絶対発情期はじ、まるっ……発情期、終わったらっ、ピィ、……一緒に、国の外……行こうっ」
我慢できずに下から腰を突き上げた。
「んあ、あっ、一緒、一緒にっ? クレインと、ああ、あ、一緒にっ?」
「そ、う、一緒に」
その時のピィの笑顔を、何と表現すればいいのかクレインにはわからない。
だけど、晴々とした吹っ切れたような顔で、うれしい、と小さく呟いてまた唇を合わせてくるから、その後はもう、余計な話しは必要ないとばかりに快楽を貪ることにした。
ピィの身体は凄い。
どこを触っても、クレインの掌に馴染んで気持ちが良い。口当たりも良いので、舐めて噛んで吸ってしまう。特に首、肩、それから乳首の周りが感じるようでそこを刺激すると酷く高い声をあげて震える。
身体を起こして上下を入れ替えたクレインは、ピィの太腿の間でゆるゆると動きながら先程まで舐め歯を立てていた乳首を優しく撫でた。
「ん、んんっや、もっともっと強く、して、クレイン!」
言われて、撫でていた乳首をぎゅっと摘む。ピィは「ああっ」と高い声をあげながら腰をびくっと震わせる。
クレインが見下ろす先、ピィの陰茎は本人が言うように、最初から今に至るまで確かに力なくだらりとしたままだ。
もっと強く腰を使っても大丈夫だろうか。
ゆるゆるとピィの腸壁を自身の先端で撫でつけるように動き続けるのも気持ちが良いが、もっと前後に強く動きたい。
このままではどこかのゆるいタイミングで出てしまう。こんなに気持ちよくて、目の前にはこんなにかわいいピィが痴態を晒していて、よく出さずに自分は我慢している。身体からの刺激と、目から入る刺激に気持ちよさの余り、背中にある自身の羽がバサリバサリと意思に反して勝手に動こうとしてしまう。どうしよう。
「っ……、ピィ……もっと強く動いて平気か……っ?」
少し腰を速めながらお伺いをたてる。
まだ良いとも言われていないのに、律動は徐々に速くなる。
涙で潤んだ目でピィがこちらを見つめる。唇が開いて舌が見えている。堪らず舌を指で摘んだ。親指で、人差し指で、舌を摘んで撫でる。反対の手は乳首を同じ動きで摘んで撫でる。ピィがそれぞれの動きに反応して、がくがくと頷きながらも一際高く鳴く。
「ああ、あああ、んあ、クレひん、ついて、ついてもっとおふ、おく、あっあ、ついてたくさ……んっ……! も、もっと、もっとほし、い、っ……!」
舌をクレインに押さえられている事で舌足らずになりながらも、必死にもっともっとと強請る様を見て、クレインは衝動を抑えることをやめた。
太腿あたりを両腕でがっと持ち上げるように固定して、言われた通りに奥を突くように腰を強く進める。これ以上は進めない所までクレインの先端が到達すると、ピィは涙をこぼして善がった。
腰を浮かしたことで隙間ができたせいか、だらりと力なく広がっていた大きな羽がばさりと布団に広がった。その羽が、まるで堪らないとでも言うように、2度3度と動く様を見せつけられる。
「ピィ……お前も、イくの……?」
「ん、んうん、んんんあ、あっも、うそ、う、……そ、っいくとか、いける、とか、しんじな、こんな……うそ、っ……きもちいぃ、……!」
「……ん、くっそ、もたない……中が、いいのかっ……? ピィ…?」
「はい、は、い、いいです、いい、なか、こんな、こんないく、のかな、いくの? きもちい、ついてそこついてたくさんっ、クレインっい、く、あ、いくなか、っい、……く……!」
「どこ、っ? ここ? この、あたりっ……?」
「んんん、んんうんうん、そこそ、こ、そこいい、ついて、ついてぇっ、い、きたい、いく、いく、いくから、ああ、……クレイン、い、……くっ」
ああ、いって、とは口にしたつもりだったけど、もしかしたら声にはなってなかったかもしれない。
我慢できずに、闇雲に奥を突くように動いた。太腿を押さえつけて、抱え上げるように、何度もついた。そのうちピィの腸内の痙攣が激しくなりクレインの陰茎がぎゅうぎゅう締め付けられるから。
「ごめ、ん……でるっ」
ピィの高い喘ぎ声を聞きながら、クレインはその胎内に精液を放った。何度かに分けて放出されるその感覚を反射のように震えながら味わう。
思わず、と言ったようにピィの上に倒れ込むと、ピィは真っ赤な顔で腰を小刻みに痙攣させながら、視線を動かすこともなくただ宙を見ているようだ。
力を入れて掴んでいたピィの脚を、そっと下ろし、下を見ると、挿入する前に一番の懸念だったピィの股間は本人が言っていた通りにだらりとしたまま、ただ、先走りのような少量の体液で濡れているようだ。怪我をしなくて良かった、とクレインは安堵した。
ちゅ、と、赤くなっているその頬に口をつける。それから唇を舐めながら指を入れてピィの口を開けさせ、更に舌を絡めた。指と舌に触れるピィの舌の感触が気持ちが良くて癖になりそうだ。
「んん、ん、クレイン……あの」
そっと距離を開けてピィが声を上げる。なんだ? と返し目を合わせながら、口に入れていた指で目の前の首筋をぬるりと撫でた。
「んっ……あの、……気持ち良かった、です。私こんなにこの行為が気持ちが良いものとは知りませんでした……」
「ああ、……俺も。身体平気か? 一度、抜くか?」
そっと腰を引こうとしたら、クレインの腰に絡まる脚に止められた。
顔をあげると、まだ冷めやらない熱に浮かされたような顔でゆるりと視線をよこすピィと目があう。
「いやです、……もっと、ほし……」
きゅっと後孔に力を入れたらしく、クレインは自分の陰茎が刺激されるのを感じた。冷め切っていない熱は、すぐにまた上がる。簡単に硬さを増したそれを少し動かすと、ぐちゅりと自身が放った精液が混ざる音が聞こえる。
「たくさん出したのに、またすぐ、ここ動かしたい」
ここ、と言いながらピィの後孔を優しく撫でる。ピィは気持ち良さそうな顔を隠しもせずに微笑んだ。
「はい、好きなだけ、好きなところを、……触って、舐めて、愛してください」
そのまま、クレインとピィは、一体どれだけの時間を愛し合ったかなんて。
とても長かったようにも思うし、後から思い返してみれば、ほんの少しの時間だったようにも思えた。長い人生の中の、ほんの少しの時間という意味では正解だったのだろうけど。
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