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第137話:優秀な異世界人とマヌケな人

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「ようやくスラムから街らしくなってきたな...」

殺風景な街並みから少しづつ活気が戻っていっているケルダンを見ながら俺は感慨の声を漏らす...

それもその筈・・・なんと!異世界の人々は思った以上に優秀だったのだ!

初めは国の技術者達にボイラーから始まり蒸気機関から玉突きエンジンを作って見せて――その後はディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの機関の説明を製作しようと思っていたが彼らの理解は思った以上に速く...

既に元の世界の2サイクルエンジンや4サイクルエンジンの機構を元に――この世界、独自の技術である自立型ゴーレムの技術を使いゴーレムエンジンなるモノを作り出すなど彼らはコチラが驚愕するモノを作り出したのだ!

このゴーレムエンジンはエルフの国であるルクルサ神権国産の高価な魔石を使用するが――なんと!

元の世界のガソリンエンジンとは違い二酸化炭素を排出しないばかりか騒音も電気自動車のモーターなみに静粛性に優れておりオーバーヒートもしないなど驚くべき物品だったのだ!天才か?!お前ら?!

勿論、欠点もあり元の世界のエンジンと違ってトルクは強いがスピードが出なかったり高価な魔石を使う割にエネルギー効率が悪く燃料切れになるなどの難があるとは言え――正直ここまでの成果を出してくれるとは思わなかった...

資金を集め指示しただけで俺の想像通りか想像以上の成果を出してくれる彼らには本当に驚愕する!

他にもボイラーなどの蒸気機関技術を流用・発展が発展したアンモニア生成炉を中心する窒素化合物合成施設を試験段階まで作り上げる事に成功した!

これも、ユガンの知識人たちが元の世界のパラゴムノキゴムの木に似たルクルサ原産の樹脂を教えてくれたお陰で、もし教えてくれなければ人海戦術でタンポポからラテックスを採取しなければイケないところだった...

このゴムの木に似た植物樹皮を傷つけると乳白色のゲル化したラテックスが採取できる。これに石油精製施設で副産物として発生する硫黄を硫黄回収装置で脱硫して回収した硫酸を混ぜて加熱すればエボナイトというシリコンゴムに似た物質を作る事ができるだろう...

これで磁鉄鉱を触媒にして高温高圧化で水素と窒素を合成しアンモニアをハーバー・ボッシュ法で作る目途がたった。つまりワザワザ非常に手間のかかる腐葉土や発酵・発熱させて有害微生物や寄生虫など殺す必要があり失敗のリスクも常にある堆肥肥料を作らなくて済むという事だ...

しかも異世界の人々が思ったよりも優秀だった事もありアユムの想像以上に非常に完成度の高い石油精製所が完成したお陰で冷蔵庫の方もアンモニアではなくイソブタンを冷媒にした冷蔵庫やエアコンが作れそうで嬉しい限りである...

ちなみに――つい最近、国家の信頼を利用した宝くじを始めた。勿論――最初は、みんな宝くじに対し半信半疑だったが大金を本当に貰う人々が現れるとケルダンの宝くじは、あっと言う間に人気を博した。

勿論――ユガンの中でも真似する奴が出て来たが...
そういう連中は欲深すぎて当選金を減らしたり当選確率をイジって人々の購買意欲を削いだり当選金をごまかして持ち逃げしたりして捕まったり殺されたりして自滅した...

まあ・・・そういう連中のお陰でケルダンの宝くじの信頼が上がり結果的に沢山の人々がコチラの宝くじを買ってくれるようになったので良かったが...

それと宝くじは皆さんも知っての通り公共事業をおこなう際に集められる寄付金であり――その集められた寄付金から当たりを引いたラッキーな人に配当を配る公的な制度だ。宝くじの内訳はこうである...

発行の経費が15%で宝くじの資金の40%はケルダンに入り寄付という形で資金を公共工事に充て振り――残りの金銭を当選者に配る方式でお隣の州都リヴォニアから資金を調達している...

おかげさまで――そこら中に工場で予め作られるプレハブ工法を使った集合住宅が郊外に完成しつつある。無論――集合住宅だけに財源を使っている訳でもないが...

ちなみに、そのせいで――なんか、ユガンの地はもともとロシアや東ヨーロッパぽっかったのだがフルシチョフカやブレジネフカのような建物を郊外に建てたせいで余計にケルダンがソヴィエトぽっい街並みの景観になってしまった...

一応、念の為に倒壊の危険などがないよう建築家達の力を借りたのだが当の建築家達からは『簡易アパートなんかより、もっと自由に設計してもいい建物が作りたかったです』と文句を言われ繊細な俺は、とても傷つきました!(泣)

余談だが簡易アパートにはベンジャミン・フランクリンが発明した暖炉としては熱効率の良いフランクリン・ストーブ(別名ペンシルバニア・ストーブ)が各部屋に標準装備されていて素晴らしい出来だ!

それと――ある程度、準備が整って来たので梨島をコチラに呼び寄せる事にした。
彼女に不便な生活をさせる訳にはいかないと思い彼女にはケルダンが安定するまで宮廷の方で預かっていて貰っていたのだ

定期的に会う度に『ねぇ?真井君、まだ、ここから出られないの...』っと言われ困っていたのだが...

やはり宮廷で窮屈に感じていたのだろう――だが宮廷にいれば余り物の白パンが食べられるし薪などの燃料がいる身体を拭うお湯は贅沢品なので仕方が無かったのだ...

あの時のケルダンでは身体を拭うお湯どころか日々の食事すらままならなかったし何より梨島が犯罪組織に誘拐される可能性は十分あるほど治安が大変悪かった...

しかも領主である俺ですら初日は何も食べられなかったうえにユガンの宮廷やヴァレンドドワーフ王宮で食べられた王侯貴族の余りモノや豪勢な残飯が如何に贅沢だった思い知らされるほど――ほぼ毎日雑草の入った麦粥を食べる有り様だったのだ...

梨島を呼び寄せても良いほど状況が整い始めたのは本当に、つい最近の話しで食料事情が黒パンと肉クズのスープを食べれらるほど改善したのとネオジム磁石の製作に目途がついて発電施設用小型モーターが調達できた事や上記にも紹介したようにゴムの木が手に入ったのでシリコンシーリングによる海水から逆浸透膜の大量の水が調達可能になったのでお風呂やシャワーに入れて挙げられるようになった事が大きい

アーレ皇太子の時に必要だったモーターは直径1μmまでフェライトを砕く必要のあるフェライト磁石が製作出来るか、どうか微妙だったので雷により鉄が磁性を帯びた天然の磁石を使用したのだがネルレイア聖女国で産出されたホウ砂が手に入ったので、これからホウ素を抽出できた事もあり直径3~4μm程度に砕けば良いネオジムからネオジム磁石を作る目途がたった

これにより皆も理科実験でやった事があるコイルに向けて磁石を出し入れしてコイルに起電力が生じる電磁誘導現象を利用した発電機の製作に取りかかったのだが...

ネオジム磁石の製作では材料のネオジムは酸化しやすく錆びたり発火したりするなど取り扱いが難しく製作は困難を極めたのだが異世界の技術者の知恵と手も借りながら二酸化炭素ガスを充填した容器の中でネオジムの酸化を防ぐという特殊な作り方や錆を防ぐ為のメッキ処理を施すなどして何とか製作する事ができた

何故――そこまでネオジムにこだわったかと言うと発電用のモーターは永久磁石の磁気が強ければ強いほど小型化と高出力が図れるからで発電機を作るにあたっては、どうしても作る必要があった為だ...

余談だが――ここで作られた電力はテスラコイルの原理を利用した無線送電方式で人体に影響のない程度のマイクロ波周波数を飛ばすワイヤレス方式で各施設に給電する為の受信機を取り付け給電するつもりである

無論――将来的には各家庭にも電力供給用の受信機を取り付ける事もできるだろう

「街の景観も大切だからね!」

(街の景観まで考えられる俺って、なんて有能なんだろう...)っと心の中で自画自賛するアユムであったが・・・しかし元の世界で何故、電線が幅を利かせているのか彼は考えていなかった...

アユムは抜けている人間である...

のちに人体に影響のない程度の電波にしようと設計したアユムであったが彼の頭脳を持ってしても電力損失の激しい無線送電方式では電波は二キロ圏内にしか届かない事が判明し結局、二キロ圏内ごとに有線の高圧電線を設置し対応するハメになったのは、また後の話であった...

「しまったぁぁあああ!!!こんなハズではー!!素直に電線張っとけばよかったぁあああ!!!」

・・・本当に詰めの甘い奴である...

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*あとがき
次回は日常パートを書く予定です
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