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第78話閑話;お詫びにひとつ、どうぞ...
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〖ヴァレンド洞窟国〗へ向かう道中・・・馬車の荷台に揺られながら俺はリヴォニア市を発つ前に石窯で作っておいたキッシュを頬張っていた...
うむ、旨い...手間は掛かるが自分で作って食べる料理が一番旨い!
パイ生地の器の中には何の卵か分からない鳥?卵にひき肉・チーズ・なんか分からないけどカブぽい野菜やレタス?みたいな葉物野菜、玉ねぎ?を入れてみたので結構・・・具だくさんだ...
ちなみに焼く前に砕いたナッツ類をまぶしていたので、すこし焦げたナッツ類とチーズの香ばしさが良い塩梅を醸し出している...
「ヤバい・・・おれ料理の天才かも知れない...」と自身の手前味噌を褒めていると「うん?美味しそうな匂いが・・・サナイ殿?何か召し上がっているのですか?」とヨルミネイト・アデレイドが話かけてきた...彼女はラインス師匠と同じくエレンダの出身でユガン騎士団に所属する騎士だが今回は上層部からの命令で護衛として随伴してくれている人物だ...
容姿は後ろに結んだポニーテールの金髪にアメジスト色の目が特徴の美しい可憐な同年代の少女にしか見えないが、ユガンの騎士団員の中では新米ながら優秀で騎士見習いの時にはトップの成績を残したと聞き及んでいた心強い人物だ...
「あ、はい・・・そうです...リヴォニアを発つ前に自身で料理した特製のキッシュを食べながら馬車から流れる風景を楽しんでいました...仕事中にごめんなさい...ワザとじゃないです...すいません...調子に乗りました...勘弁して下さい...」
ブツブツと謝罪の言葉を口にするのは常に馬車に近づいてくるかもしれない不審な人影や人物を警戒している彼女の存在を忘れ呑気にも飯を食っている自分への罪悪感からだった...いや、ほんと...すいません...
「お詫びにひとつ、どうぞ...」
俺はお詫びに切り取ってあるキッシュの一切れを差し出すと彼女は「???あっ・・・ありがとうございます。頂きます。」と反射的にキッシュを受け取ると口にした。
うん?彼女は――もしかして良家の出身なのだろうか?「お、おいしい・・・」と口元を手で抑えながら女性らしく呟く姿が気品を感じさせる動作だ...
幸いにもキッシュは彼女の口に合ったらしく暫くするとあげたキッシュを食べ終わっていた...食べ終わった直後、ヨルミネイトは不思議そうな顔で「何故、サナイ殿は男性なのに料理が出来るのですか?」と質問をしてきた...
あっれぇ~?と思って・・・思い返してみる...確かに――よくよく考えて見れば|この世界の連中の自炊と言えば塩水で切ったカブとハーブみたいなのを茹でるだけだった...しかも男性の異世界人は肉体労働者が多く働いてばかりで、くそマズい外食が基本だった...しかも、そのマズい料理のレシピですら大切な食い扶持であるため各店はタダで他人に教えたりはしない...
う~ん、しまった...久しぶりに宮殿の外に出られて心が浮ついていたのかもしれない。すこし迂闊だったか?
別に...亜人大陸では異教の女神ヴィネスに召喚された異世界人だと触れ回ってもいいが如何せん、その結果どのような反応が相手から返ってくるかも分からないうえ――宮殿の騎士たちから好意的な受け止められ方をされなかったし...
仕方がない・・・別の事実で納得させよう...嘘はいけない。なにも道義的な事を説こうとしているのではない。安心して欲しい。俺は聖人ではないから人間として嘘は罪であると上から目線で説いたりしない。単に嘘はバレるからだ。
「あっ、その事でしたか...実は俺はエレンダ商会に料理レシピするほど料理も得意なんです。母親は料理が得意ではありませんでしたが幸いにも料理に関する書物が家にはあったので14歳くらいから趣味で自炊する事が多かったんですよ。」
嘘は言っていない...エレンダ商会にレシピを提供しているのも本当だしDV親父が離婚した母親に養育費が振り込まれないせいで母親が水商売に出るハメになった上に母親も料理が得意ではなかったので14歳からネットを参考に自炊したのも本当だ...
ヨルミネイトは「そうでしたか。家に書物があるという事は裕福な家庭のご出身だったのですね。――あっ、すいません。男性が料理をするのは珍しかったものなので、つい立ち入った事を聞いてしまいました。」と言うと『話は終わった』と言わんばかりに彼女は元の任務に戻っていったのだった...
何ともあれ・・・ヨルミネイトさんも任務に戻った事だし俺も宮殿に連れて来られる前から日課となった魔力量を増幅させる訓練をしよう...
出来れば、ずっと戦闘なんてなければいいが――このまま平和な時間が続くとも限らない...この世界は些か危険すぎる...
元の世界の有名なラテン語の諺でも『汝平和を欲するならば戦争に備えよ』という警句もあったくらいだ...自身の命を守る為に常に戦いに備えるべきだろう...そう、身を守る為に武装するのは恥ではないのだから...特にこの危険な異世界においては...
アユムは幌の付いた馬車の中で魔力量を増幅させる訓練を開始した...
こうして訓練の最中も安定性に欠ける揺れる馬車は順調に〖ヴァレンド洞窟国〗への入国を目指して最寄りの入り口へ進んでいく...
まだ見ぬ〖ヴァレンド洞窟国〗を目指して...
うむ、旨い...手間は掛かるが自分で作って食べる料理が一番旨い!
パイ生地の器の中には何の卵か分からない鳥?卵にひき肉・チーズ・なんか分からないけどカブぽい野菜やレタス?みたいな葉物野菜、玉ねぎ?を入れてみたので結構・・・具だくさんだ...
ちなみに焼く前に砕いたナッツ類をまぶしていたので、すこし焦げたナッツ類とチーズの香ばしさが良い塩梅を醸し出している...
「ヤバい・・・おれ料理の天才かも知れない...」と自身の手前味噌を褒めていると「うん?美味しそうな匂いが・・・サナイ殿?何か召し上がっているのですか?」とヨルミネイト・アデレイドが話かけてきた...彼女はラインス師匠と同じくエレンダの出身でユガン騎士団に所属する騎士だが今回は上層部からの命令で護衛として随伴してくれている人物だ...
容姿は後ろに結んだポニーテールの金髪にアメジスト色の目が特徴の美しい可憐な同年代の少女にしか見えないが、ユガンの騎士団員の中では新米ながら優秀で騎士見習いの時にはトップの成績を残したと聞き及んでいた心強い人物だ...
「あ、はい・・・そうです...リヴォニアを発つ前に自身で料理した特製のキッシュを食べながら馬車から流れる風景を楽しんでいました...仕事中にごめんなさい...ワザとじゃないです...すいません...調子に乗りました...勘弁して下さい...」
ブツブツと謝罪の言葉を口にするのは常に馬車に近づいてくるかもしれない不審な人影や人物を警戒している彼女の存在を忘れ呑気にも飯を食っている自分への罪悪感からだった...いや、ほんと...すいません...
「お詫びにひとつ、どうぞ...」
俺はお詫びに切り取ってあるキッシュの一切れを差し出すと彼女は「???あっ・・・ありがとうございます。頂きます。」と反射的にキッシュを受け取ると口にした。
うん?彼女は――もしかして良家の出身なのだろうか?「お、おいしい・・・」と口元を手で抑えながら女性らしく呟く姿が気品を感じさせる動作だ...
幸いにもキッシュは彼女の口に合ったらしく暫くするとあげたキッシュを食べ終わっていた...食べ終わった直後、ヨルミネイトは不思議そうな顔で「何故、サナイ殿は男性なのに料理が出来るのですか?」と質問をしてきた...
あっれぇ~?と思って・・・思い返してみる...確かに――よくよく考えて見れば|この世界の連中の自炊と言えば塩水で切ったカブとハーブみたいなのを茹でるだけだった...しかも男性の異世界人は肉体労働者が多く働いてばかりで、くそマズい外食が基本だった...しかも、そのマズい料理のレシピですら大切な食い扶持であるため各店はタダで他人に教えたりはしない...
う~ん、しまった...久しぶりに宮殿の外に出られて心が浮ついていたのかもしれない。すこし迂闊だったか?
別に...亜人大陸では異教の女神ヴィネスに召喚された異世界人だと触れ回ってもいいが如何せん、その結果どのような反応が相手から返ってくるかも分からないうえ――宮殿の騎士たちから好意的な受け止められ方をされなかったし...
仕方がない・・・別の事実で納得させよう...嘘はいけない。なにも道義的な事を説こうとしているのではない。安心して欲しい。俺は聖人ではないから人間として嘘は罪であると上から目線で説いたりしない。単に嘘はバレるからだ。
「あっ、その事でしたか...実は俺はエレンダ商会に料理レシピするほど料理も得意なんです。母親は料理が得意ではありませんでしたが幸いにも料理に関する書物が家にはあったので14歳くらいから趣味で自炊する事が多かったんですよ。」
嘘は言っていない...エレンダ商会にレシピを提供しているのも本当だしDV親父が離婚した母親に養育費が振り込まれないせいで母親が水商売に出るハメになった上に母親も料理が得意ではなかったので14歳からネットを参考に自炊したのも本当だ...
ヨルミネイトは「そうでしたか。家に書物があるという事は裕福な家庭のご出身だったのですね。――あっ、すいません。男性が料理をするのは珍しかったものなので、つい立ち入った事を聞いてしまいました。」と言うと『話は終わった』と言わんばかりに彼女は元の任務に戻っていったのだった...
何ともあれ・・・ヨルミネイトさんも任務に戻った事だし俺も宮殿に連れて来られる前から日課となった魔力量を増幅させる訓練をしよう...
出来れば、ずっと戦闘なんてなければいいが――このまま平和な時間が続くとも限らない...この世界は些か危険すぎる...
元の世界の有名なラテン語の諺でも『汝平和を欲するならば戦争に備えよ』という警句もあったくらいだ...自身の命を守る為に常に戦いに備えるべきだろう...そう、身を守る為に武装するのは恥ではないのだから...特にこの危険な異世界においては...
アユムは幌の付いた馬車の中で魔力量を増幅させる訓練を開始した...
こうして訓練の最中も安定性に欠ける揺れる馬車は順調に〖ヴァレンド洞窟国〗への入国を目指して最寄りの入り口へ進んでいく...
まだ見ぬ〖ヴァレンド洞窟国〗を目指して...
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