クラス転移したけど能力が低いのでリセマラされる前にバックレる

第77話；辞令書

アユムは今、官吏かんりから渡された辞令書じれいしょを見て愕然がくぜんとしていた．．辞令書には――このように書かれている．．．

【辞令――魔道技術部門　主任研究員　宮廷付き錬金術士　サナイ・アユム殿】
【貴殿は皇太子アーレ様の為にユガン全体の技術レベルを高めるべく〖ヴァレンド洞窟国〗へ出向しゅっこうされたし・・・】

「ちょっぉおおおおーーーー！！！えっええー？！なんで？なんで、いきなり転勤？！！」

アユムは懸命に――【なぜ、いきなり転勤になったのか？】記憶を辿って行く・・・

「……あっ！そう言えばサレンドラ皇后が気絶する前に．．．」

思い出した！そう言えばサレンドラ皇后が気絶する前に『今、世界に現存している技術力では血友病は治りませんよ？』と恐らく言ったせいだろう．．．サレンドラ皇后が――どうしてもアーレ皇太子を完治させたいなら、このような辞令を出してもおかしくない．．．

「まあ、乗りかかった舟ふねだしなぁ～」

アユムとしても〖ヴァレンド洞窟国〗へ行くのは別にイヤではない．．．何せドワーフの国だ．．．聞き及んだ話ではドワーフは元の世界のおとぎ話しに出てくるドワーフと大差ないらしい．．．

彼らは人間ほど大きくはないが膂力りょりょくが強く、高い冶金やきん技術を有しているのだという．．．だが彼らが――その優れた技術を外部に教える事は、ほとんどなく・・・それゆえに彼らの技術は謎のベールに包まれているのだという．．．

「ヤバい・・・遊びに行く訳じゃないのにワクワクしてきた．．．」

〖ヴァレンド洞窟国〗・・・いったいどんな所だろうか？元の世界の伝承ではドワーフは女性も立派なヒゲを生やしていたそうだが．．．色々と楽しみだ．．．

翌日、アユムは大量の執筆しっぴつ用の空白の製本された本が載のせられた馬車と共に〖ヴァレンド洞窟国〗へ向かうのだった．．．