45 / 393
3.魔法の森
9.焼けつく砂丘
しおりを挟む
さっきまで涼しかったのにもかかわらず、現在は暑くなっていた。あまりの落差に気分が悪くなっていた。コストイラは唾ごと吐き気を飲み込む。エンドローゼはすでに目が虚ろになっていた。
アシドが汗を拭う。
「エンドローゼのやつ、もうやばくね?大丈夫かよって、大丈夫ではねェよな」
「暑いし、足が砂にとられて体力は削られるし、ずっと砂の光景で精神が削れるし、砂場はきついな」
アシドが持っていた、まだ使っていないタオルをエンドローゼに被せる。
上からサラサラと砂が流れてくる。砂丘の上部分の砂が重力に負けたのだろう。自然な流れで上を見ると、何かがいた。逆光でよく見えず、目を凝らすとそれは殻を纏ったゴーレムだった。そう、いつかの時に苦い思いをさせられたマイトゴーレムだ。アストロはその時いなかったのであまりピンと来ていない。
「このクソ暑い時にクソ熱いやつを相手しなきゃいけねェのか」
コストイラがぼやくのと同じタイミングで、マイトゴーレムは両手に炎を纏う。落ちてくるマイトゴーレムに対して、アシドは蒼いオーラを纏い、攻撃を上手に往なす。そして、槍を振るい、マイトゴーレムの足を払い盛大にこけさせる。
砂が舞い上がる。
「うぇっぷ」
アレンは口の中に入った砂を唾ごと吐き出す。エンドローゼは目に入ったようで必死に目を掻いている。アストロは布で顔を守っていた。
『ゴォ』
流れ動き安定しない砂の上でマイトゴーレムは立ち上がろうとするが失敗してしまう。その姿にアシドが近づく。
「前回に比べて今回は簡単だったな」
アシドは流れるように槍を振るいゴーレムの核を潰す。ゴーレムは砂と同化するように崩れていった。
暫く歩くと砂丘は終わりを告げ、谷が見えてきた。アレン達は地図を見るために立ち止まっていた。
「あの谷の向こうが教えていただいたナカウみたいですね」
アレンは手にしていた地図から顔を離し、辺りの景色と見比べて指をさす。
「で、あとどれくらいで着きそうなの?」
アストロは明確な数値を求めて尋ねる。
「そうですね。まだ半分も進んでないですね」
「…………は?」
アストロは予想外の言葉に硬直する。これまでそれなりに歩いてきたはずなのに半分も来ていないと分かり、マジかと心の中で毒づく。全員がそうした。
ガサ。
気の緩みなど許さないと言わんばかりに次の戦闘が始まる。
6本の脚をガサガサと動かし、2本の鋏をガチガチと鳴らし、尾の針をブンブンと振る。誰がどう見てもサソリの魔物がいた。
このスカーレットやくもの存在が魔物とは何かという議論に拍車がかかった。普通のサソリや蜘蛛と比べ、ただ大きいだけの見た目。アルミラージのように角が生えているわけではなく、オルトロスのように頭が2つの分かれているわけでもない。
では、魔物とは何か?
一般的な見解は魔力を使い、魔術を扱える、人間に害をなす存在がそうだとされている。
スカーレットはグッと6本の脚に力を込める。
「来るぞ」
スカーレットは高く跳び上がり、その巨大な鋏は陽光を反射している。そして、着地点にいるコストイラを目掛けて鋏をクロス状に振るう。コストイラは辛うじて防いだがその刀は跳ね上げられる。無防備になった顔面にスカーレットは巨大な尾の針が飛んでくる。アシドはスカーレットの針を横から打ち、軌道を逸らす。針は振り上げられた腕の横を通り、着ていた服に穴を開けられる。コストイラは服が裂けるのも気にせず、刀を振り下ろす。
刀は外殻を砕き、その下に眠る肉の部分も斬っていく。砕かれた破片がくるくると舞い、落ちてくる。
「よし。谷を抜けようぜ」
アシドが汗を拭う。
「エンドローゼのやつ、もうやばくね?大丈夫かよって、大丈夫ではねェよな」
「暑いし、足が砂にとられて体力は削られるし、ずっと砂の光景で精神が削れるし、砂場はきついな」
アシドが持っていた、まだ使っていないタオルをエンドローゼに被せる。
上からサラサラと砂が流れてくる。砂丘の上部分の砂が重力に負けたのだろう。自然な流れで上を見ると、何かがいた。逆光でよく見えず、目を凝らすとそれは殻を纏ったゴーレムだった。そう、いつかの時に苦い思いをさせられたマイトゴーレムだ。アストロはその時いなかったのであまりピンと来ていない。
「このクソ暑い時にクソ熱いやつを相手しなきゃいけねェのか」
コストイラがぼやくのと同じタイミングで、マイトゴーレムは両手に炎を纏う。落ちてくるマイトゴーレムに対して、アシドは蒼いオーラを纏い、攻撃を上手に往なす。そして、槍を振るい、マイトゴーレムの足を払い盛大にこけさせる。
砂が舞い上がる。
「うぇっぷ」
アレンは口の中に入った砂を唾ごと吐き出す。エンドローゼは目に入ったようで必死に目を掻いている。アストロは布で顔を守っていた。
『ゴォ』
流れ動き安定しない砂の上でマイトゴーレムは立ち上がろうとするが失敗してしまう。その姿にアシドが近づく。
「前回に比べて今回は簡単だったな」
アシドは流れるように槍を振るいゴーレムの核を潰す。ゴーレムは砂と同化するように崩れていった。
暫く歩くと砂丘は終わりを告げ、谷が見えてきた。アレン達は地図を見るために立ち止まっていた。
「あの谷の向こうが教えていただいたナカウみたいですね」
アレンは手にしていた地図から顔を離し、辺りの景色と見比べて指をさす。
「で、あとどれくらいで着きそうなの?」
アストロは明確な数値を求めて尋ねる。
「そうですね。まだ半分も進んでないですね」
「…………は?」
アストロは予想外の言葉に硬直する。これまでそれなりに歩いてきたはずなのに半分も来ていないと分かり、マジかと心の中で毒づく。全員がそうした。
ガサ。
気の緩みなど許さないと言わんばかりに次の戦闘が始まる。
6本の脚をガサガサと動かし、2本の鋏をガチガチと鳴らし、尾の針をブンブンと振る。誰がどう見てもサソリの魔物がいた。
このスカーレットやくもの存在が魔物とは何かという議論に拍車がかかった。普通のサソリや蜘蛛と比べ、ただ大きいだけの見た目。アルミラージのように角が生えているわけではなく、オルトロスのように頭が2つの分かれているわけでもない。
では、魔物とは何か?
一般的な見解は魔力を使い、魔術を扱える、人間に害をなす存在がそうだとされている。
スカーレットはグッと6本の脚に力を込める。
「来るぞ」
スカーレットは高く跳び上がり、その巨大な鋏は陽光を反射している。そして、着地点にいるコストイラを目掛けて鋏をクロス状に振るう。コストイラは辛うじて防いだがその刀は跳ね上げられる。無防備になった顔面にスカーレットは巨大な尾の針が飛んでくる。アシドはスカーレットの針を横から打ち、軌道を逸らす。針は振り上げられた腕の横を通り、着ていた服に穴を開けられる。コストイラは服が裂けるのも気にせず、刀を振り下ろす。
刀は外殻を砕き、その下に眠る肉の部分も斬っていく。砕かれた破片がくるくると舞い、落ちてくる。
「よし。谷を抜けようぜ」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる