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047 ワニの尻尾肉
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「本当、シュウヤの言った通り、中に水が入ってる」
「たくさん入ってますねー! 周りの白い所は食べられるのですか?」
「果肉だな。食べられるぜ。味は微妙だがな」
「お水、美味しい、です」
アリシア達のもとへ帰還したら夕食を始めた。
まずは喉がカラカラなので、ヤシの実を割って水分を得る。
実を割る時の注意点としては、真ん中で割らないこと。
水は真ん中に貯まっている為、中央から開くとこぼれてしまう。
真ん中よりもやや上の辺りに刃を通すと良い。
「準備完了。あとは焼くだけだ」
水分補給が済むと本日のメインディッシュ。
全長3メートル級のワニの太くて長い尻尾だ。
「どうして皮を焼かないのですか? トカゲの時は皮ごと焼いていましたよね」
アリシアが不思議そうに見ている。
今回の調理法がオオトカゲの時とまるで違うからだ。
オオトカゲの時は皮を付けたまま焼いていたが、今回は剥いている。
人数分にカットして串焼きにする、という点は同じだ。
「このワニは皮と肉の両方で分厚すぎるからな。皮の上から焼いていたら、焼き終わるまでにかなりの時間がかかるだろう。それにワニの皮ってのは鞣して革にすると使えるからな。剥ぐのが基本だ」
「ワニの皮にそんな使い道が……鞣すというのはよく分かりませんが!」
「鞣すは、加工の一つ、です。引っ張ったり、叩いたり、液体に浸けたりして、布みたいな用途で使えるようにすること、です」
コニーが説明する。
俺よりも簡潔で的確な説明だ。
流石は工房で働く職人である。
アリシアも「なるほどです!」と声を弾ませた。
「そういえば工房でも革製品を作り始めているんだっけか」
「はいです! シュウヤ様に教わった方法や自分達で考えた方法を使っていますです!」
前に工房で猪からラードを抽出したことがある。
石鹸を作った時のことだ。
その際、皮の鞣し方についても簡単に説明、実演した。
以降、工房では革製品の作成にも取り組んでいるのだ。
主に猪やロイヤルクイーンスネークの皮が使われている。
「うん! 美味い!」
「程よく脂がのっていていいですねー!」
「ワニの尻尾、色々な料理に、使えそう」
「すごく美味しいです! 流石です! シュウヤ様!」
串焼きにしたワニの尻尾は手放しに絶賛できる味だった。
ジューシーだが胸焼けする程ではなく、食べやすくて美味い。
ワニの肉はタンパク質が豊富だ。
食べれば食べる程、全身に力が漲るような感覚を味わえた。
野外生活ではタンパク質の補給が難しいから、これはありがたい。
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
そんなこんなで無事に夕食を終えた。
時刻は18時前後といったところで、どうにか夕日が生き残っている。
もうすぐ日が沈んで夜になるだろう。
「寝るにしては少し早すぎるな」
「かといって活動するには残された時間が短すぎますねー」
アリシアと話す。
「でも、ミーシャ、もう眠い」
「コニーもおねむです」
一方、ミーシャとコニーの少女ペアは眠そうだ。
今回が初の野外活動で、しかも荷物持ちまで担当している。
俺達よりも疲労が蓄積しているのは無理のないことだった。
「二人は先に寝ていていいぞ。俺達は寝床を拡張するよ」
「ありがとうございますです」
「ありがと、おやすみ、シュウヤ、アリシア」
二人はドーム型の寝床に入り、隅のほうで固まる。
ミーシャは壁を向いて丸まり、コニーはミーシャの背中に抱きつく格好。
それからほどなくして、どちらもすやすやと寝息を立てて眠りに就いた。
「外なのに安心しきっていますね」
心地よさそうに眠る二人を見て頬を緩めるアリシア。
「アリシアもあんな感じだよ」
「いやいやいや! 私はもっと警戒していますよ!」
「どこがだよ!」
俺達は喋りながら寝床の拡張に入る。
寝床を作った時の要領でオコティーヨの茎を連結。
それを寝床の入口前でアーチ状にして並べていく。
その後、大きな葉っぱなどで茎と茎の隙間を覆う。
「これでよし」
寝床の前にある焚き火を守る屋根の完成だ。
立派な拠点が尚更に立派なものになってしまった。
「ちょうど日も暮れてきましたよ!」
「そうだな。適当に燃料を補充したら寝よう」
「了解です!」
焚き火の炎に照らされた範囲を探索。
着火後すぐの燃料として最適な小枝なども回収しておく。
今は不要でも、明日以降の火起こしで使えるからだ。
大きめの木材は直ちに炎の中へぶち込む。
その際、インディアン型の組み方を意識することを忘れない。
「焚き火よし、屋根よし、辺りは真っ暗」
「寝ますか!」
「だな」
全ての作業が終わったので、俺とアリシアも寝床に入った。
今回の寝床は何も敷いていない為、土のひんやり感が肌を走る。
「天井が高いといい感じですね」
「全くだ。前の寝床とは大違いだぜ」
アリシアと寝床の真ん中で並んで仰向けになる。
大型の寝床なので、スペースには十分の余裕があった。
「アリシア、今日はどうする?」
天井を眺めながら尋ねる。
「今日はって、その、もしかして……」
「いつも夜は色々と愉しんでから寝るだろ?」
何食わぬ顔で右手を動かし、アリシアの左手に当てた。
そのまま静かに恋人繋ぎをする。
「で、でも、私達の隣にはミーシャちゃんとコニーちゃんが」
「ぐっすり眠っているから、静かにやれば大丈夫だと思うが」
「たしかに……。じゃあ、します、か?」
アリシアが仰向けのまま身体をスライドさせる。
ゆっくりとこちらへ近づいてきて、肩が当たったところで止まった。
「俺はどうするか尋ねただけだが、やれやれ、積極的な女だな」
「あ、それ、酷いです。いいですよ、そんなこと言うなら、しません」
「うそうそ。冗談だよ」
俺はアリシアに跨がった。
無防備な態勢でこちらを見つめるアリシア。
何も始まっていないのに、既に恍惚とした表情をしている。
「二人が起きたら駄目だから、声は控え目にな」
「わ、分かっていますよぉ」
静かに上半身を倒し、唇を重ねた――。
「たくさん入ってますねー! 周りの白い所は食べられるのですか?」
「果肉だな。食べられるぜ。味は微妙だがな」
「お水、美味しい、です」
アリシア達のもとへ帰還したら夕食を始めた。
まずは喉がカラカラなので、ヤシの実を割って水分を得る。
実を割る時の注意点としては、真ん中で割らないこと。
水は真ん中に貯まっている為、中央から開くとこぼれてしまう。
真ん中よりもやや上の辺りに刃を通すと良い。
「準備完了。あとは焼くだけだ」
水分補給が済むと本日のメインディッシュ。
全長3メートル級のワニの太くて長い尻尾だ。
「どうして皮を焼かないのですか? トカゲの時は皮ごと焼いていましたよね」
アリシアが不思議そうに見ている。
今回の調理法がオオトカゲの時とまるで違うからだ。
オオトカゲの時は皮を付けたまま焼いていたが、今回は剥いている。
人数分にカットして串焼きにする、という点は同じだ。
「このワニは皮と肉の両方で分厚すぎるからな。皮の上から焼いていたら、焼き終わるまでにかなりの時間がかかるだろう。それにワニの皮ってのは鞣して革にすると使えるからな。剥ぐのが基本だ」
「ワニの皮にそんな使い道が……鞣すというのはよく分かりませんが!」
「鞣すは、加工の一つ、です。引っ張ったり、叩いたり、液体に浸けたりして、布みたいな用途で使えるようにすること、です」
コニーが説明する。
俺よりも簡潔で的確な説明だ。
流石は工房で働く職人である。
アリシアも「なるほどです!」と声を弾ませた。
「そういえば工房でも革製品を作り始めているんだっけか」
「はいです! シュウヤ様に教わった方法や自分達で考えた方法を使っていますです!」
前に工房で猪からラードを抽出したことがある。
石鹸を作った時のことだ。
その際、皮の鞣し方についても簡単に説明、実演した。
以降、工房では革製品の作成にも取り組んでいるのだ。
主に猪やロイヤルクイーンスネークの皮が使われている。
「うん! 美味い!」
「程よく脂がのっていていいですねー!」
「ワニの尻尾、色々な料理に、使えそう」
「すごく美味しいです! 流石です! シュウヤ様!」
串焼きにしたワニの尻尾は手放しに絶賛できる味だった。
ジューシーだが胸焼けする程ではなく、食べやすくて美味い。
ワニの肉はタンパク質が豊富だ。
食べれば食べる程、全身に力が漲るような感覚を味わえた。
野外生活ではタンパク質の補給が難しいから、これはありがたい。
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
そんなこんなで無事に夕食を終えた。
時刻は18時前後といったところで、どうにか夕日が生き残っている。
もうすぐ日が沈んで夜になるだろう。
「寝るにしては少し早すぎるな」
「かといって活動するには残された時間が短すぎますねー」
アリシアと話す。
「でも、ミーシャ、もう眠い」
「コニーもおねむです」
一方、ミーシャとコニーの少女ペアは眠そうだ。
今回が初の野外活動で、しかも荷物持ちまで担当している。
俺達よりも疲労が蓄積しているのは無理のないことだった。
「二人は先に寝ていていいぞ。俺達は寝床を拡張するよ」
「ありがとうございますです」
「ありがと、おやすみ、シュウヤ、アリシア」
二人はドーム型の寝床に入り、隅のほうで固まる。
ミーシャは壁を向いて丸まり、コニーはミーシャの背中に抱きつく格好。
それからほどなくして、どちらもすやすやと寝息を立てて眠りに就いた。
「外なのに安心しきっていますね」
心地よさそうに眠る二人を見て頬を緩めるアリシア。
「アリシアもあんな感じだよ」
「いやいやいや! 私はもっと警戒していますよ!」
「どこがだよ!」
俺達は喋りながら寝床の拡張に入る。
寝床を作った時の要領でオコティーヨの茎を連結。
それを寝床の入口前でアーチ状にして並べていく。
その後、大きな葉っぱなどで茎と茎の隙間を覆う。
「これでよし」
寝床の前にある焚き火を守る屋根の完成だ。
立派な拠点が尚更に立派なものになってしまった。
「ちょうど日も暮れてきましたよ!」
「そうだな。適当に燃料を補充したら寝よう」
「了解です!」
焚き火の炎に照らされた範囲を探索。
着火後すぐの燃料として最適な小枝なども回収しておく。
今は不要でも、明日以降の火起こしで使えるからだ。
大きめの木材は直ちに炎の中へぶち込む。
その際、インディアン型の組み方を意識することを忘れない。
「焚き火よし、屋根よし、辺りは真っ暗」
「寝ますか!」
「だな」
全ての作業が終わったので、俺とアリシアも寝床に入った。
今回の寝床は何も敷いていない為、土のひんやり感が肌を走る。
「天井が高いといい感じですね」
「全くだ。前の寝床とは大違いだぜ」
アリシアと寝床の真ん中で並んで仰向けになる。
大型の寝床なので、スペースには十分の余裕があった。
「アリシア、今日はどうする?」
天井を眺めながら尋ねる。
「今日はって、その、もしかして……」
「いつも夜は色々と愉しんでから寝るだろ?」
何食わぬ顔で右手を動かし、アリシアの左手に当てた。
そのまま静かに恋人繋ぎをする。
「で、でも、私達の隣にはミーシャちゃんとコニーちゃんが」
「ぐっすり眠っているから、静かにやれば大丈夫だと思うが」
「たしかに……。じゃあ、します、か?」
アリシアが仰向けのまま身体をスライドさせる。
ゆっくりとこちらへ近づいてきて、肩が当たったところで止まった。
「俺はどうするか尋ねただけだが、やれやれ、積極的な女だな」
「あ、それ、酷いです。いいですよ、そんなこと言うなら、しません」
「うそうそ。冗談だよ」
俺はアリシアに跨がった。
無防備な態勢でこちらを見つめるアリシア。
何も始まっていないのに、既に恍惚とした表情をしている。
「二人が起きたら駄目だから、声は控え目にな」
「わ、分かっていますよぉ」
静かに上半身を倒し、唇を重ねた――。
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