心カヨワセ

Yakijyake

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蹴飛ばした彼女は大きくよろめいて、後ろにゴロンと倒れてしまった。今にも介抱したいぐらいだったが、地獄は終わらなかった。蹴飛ばした瞬間盛り上がったが、すぐに静かになって、ある女子に言われた
 「あんた、蹴りが弱いね。わからないの?こうやってやるんだよ」
 そう言って、そいつは結構な力で彼女を蹴った。痛がっていた彼女に再び痛みが襲う。目を覆いたくなる光景だった。
 「さ、やれよ」
 もうどうでもいいや。蹴ってこの地獄が1秒でも早く終わるなら。僕はさっきより少しだけ強く蹴った。もう、それから彼女を見てないから、どうなったかはわからない。あの蹴った時の感触は、今でも嫌なぐらい、鮮明に覚えている。ただ必死に涙を堪えながら、この地獄が過ぎ去るのを待った。泣いたら、僕もやられる。此の期に及んでも、僕はそんな自分のことばかり考えていた。
 ひたすら自己嫌悪と罪悪感に耐え、他の人間がようやく満足したのかゾロゾロと帰り始めた。気がつくと、僕と彼女だけが取り残されていた。僕は今自分がやってしまったことを悔いながら、彼女に近寄った。でも、彼女は何もせぬまま、走ってどこかに行ってしまった。一人倉庫に取り残され、ようやく僕は自分が犯した罪の大きさを思い知った。走り去ってしまった彼女を追いかけようとした時にはすでにもう姿はどこにも見えなかった。
 夜になっても、罪の意識は消えなかった。
 「今日は本当にごめんなさい。本当に後悔してる。僕が全部悪い」
 そう送ったのに、そのメッセージに既読がつくことはなかった。僕のメッセージを見てさえくれない。罪の意識は重くなる一方だった。
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