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第五章 インターミッション ~ミスラのだいぼうけん
2. 光の勇者ミスラ
しおりを挟む■ 5.2.1
今ミスラは「レジーナ」というお船に乗っています。
でも、変なのです。
お船というのは、漁師のアレハトッムゼさんがいつも乗っているような、木で出来た川に浮いているのが、お船です。
でもこのお船は、ミスラのお家よりも大きくて、そしてどこにも水がありません。
変なことは他にもあります。
「レジーナ」というのは、いつも優しくしてくれる声だけのお姉さんの名前です。でも、お船の名前もレジーナなのです。
きっと、大きくなったら教えてもらえるのです。
このお船にはレジーナの他にもたくさん人が居ます。
チョーサイコーにカッコイ・・・イ? マサシというお兄さんは一番えらい人です。
一番最初に会ったルナは、顔はちょっと怖いけれど、本当はとっても優しいお姉さんです。甘いお菓子をたくさんくれます。
黒い髪と緑の眼のニュクスは、ミスラよりちょっと大きいだけなのですが、近所のおばさんみたいに何でも知っていて頼もしいのです。
それから、茶色い髪で眼鏡を掛けているアデールは村長さんみたいな喋り方をします。でも本当は照れ屋さんだというのをミスラは知っています。実はあれで結構カワイイ奴なんだ、とマサシも言っていました。
時々、ご飯の時に会うブラソンという人は、人類に良く似たオタッキーという生物で、いつも巣穴の中にもぐっていて食事の時だけ巣から出てくる生活をしているのだとマサシが言っていました。
(マ~サ~シ~? お主はレディに言うて良い事と悪い事の区別も付かぬのか~?)
(この台本書いたのはマサシか? ちょっと来い。表に出ろ。)
(私、怖いですか?)
(マサシてめえふざけんな。なんで自分だけカッ・・・)
うるさい。黙れ。
(はい)(はい)(はい)(はい)
(レジーナこえー)
そこ。聞こえてますよ。
・・・もとい。
レジーナは声だけのお姉さんですが、同じ様な声だけのお姉さんが他にも居るそうなのです。でもまだミスラはそのお姉さんと会った事はありません。
あ、声だけなので会うことは出来ませんね。
ニュクスが教えてくれました。ミスラは気絶している間におうちからとっても遠いところまで悪い人に連れて来られてしまったのだそうです。
ミスラを連れてきた悪い人は、レジーナのみんなが退治してくれました。
でも、みんなにもミスラのおうちがどこか分かりません。だから今、レジーナのみんなは、ミスラのおうちを探して一緒に旅をしているのです。
お父さんにもお母さんにも妹のアプラにも会えないのは淋しいけれど、でもレジーナには楽しい仲間達が居て、ご飯も美味しくて、「びでお」も面白いです。
だからミスラは寂しくてもなんとか泣かずにいられるのです。
そうそう、ビデオと言えば。
ミスラは、レジーナに来るまでビデオというものを知りませんでした。
お部屋の真ん中に人や物が出てきて、色んなお話をしてくれるのです。村の教場で時々、皆で劇をして村の皆に見てもらうことがありましたが、それと同じなのだとレジーナに教えてもらいました。
劇を演じることを仕事にしている人たちが居て、その人達の劇を取っておいて、いつでも取り出せるようにしたのがビデオなのだそうです。
レジーナは色々なビデオを持っていて、お願いすると見せてくれます。
ミスラの大好きなビデオは「ロード・オブ・ドラゴン」というビデオで、主人公のエドガーが魔法使いのジェニーや忍者のコジローや獣人のマリア達と一緒に旅をしながら、ドラゴンというとっても強い悪者を退治していくお話です。
(あれか。あのビデオは一方的に悪者にされたドラゴンさんが可哀相だろ)
・・・・ウィィィン・・・
(はいゴメンナサイ黙ります)
レジーナは、「ミスラ、あれはお伽噺なの。本当にあった事じゃないのよ」と言うけれど、とっても面白いのです。
いつか自分もあんな風に、仲間達と一緒に旅が出来たらいいなあ、と憧れています。
ミスラはふと思いつきました。
今からやったっていいじゃない!
とっても面白そうです。
ミスラは、自分のお部屋と台所とご飯を食べるところとルナとニュクスのお部屋くらいしか知りません。もちろん、他にもたくさんお部屋があることは知っています。
ちょっとわくわくしてきてしまいました。さあ、ぼうけんだー!
■ 5.2.2
ミスラは旅立ちの準備をしています。
でも、ミスラはもともとただの村人だったので、まだ武器を持っていません。そうだ、薬草と毒消しも必要です。
まずは、道具屋さんとアイテム屋さんに行って、装備と持ち物を手に入れなければなりません。
レジーナに言ってクローゼットを開けてもらいます。
最初の装備は、布の服(普通のTシャツ)、布のスカート(赤のタータンチェック)、布のグローブ(ただのキャラクター手袋)、布の靴(船内用吸着機能付きスニーカー)です。
クローゼットの中に、もっと良い防具があるのを見つけました!
◆ミスラはねこのきぐるみ(ルナお手製、三毛猫模様のツナギパジャマ)を手に入れた!
でも、これはちょっと強くなさそうです。これを着たら、獣人になってしまいます。ミスラがなりたいのは勇者なのです。
もっと他に良い物はないのでしょうか。
ありました。銀色に光るその装備は・・・
◆ミスラは伝説の勇者の鎧(レジーナスカジャン、赤色バージョン、ミスラ用)を手に入れた!
(いきなり最終装備かよ!)
ミスラは伝説の勇者の鎧を装備しました。ちょっと、いえ、かなり強くなった気がします。
これで旅立ちの装備が整いました。
次は道具屋さんに行ってお買い物です。
悪い魔物に見つからないように、ミスラはゆっくりと部屋のドアを開けて、通路に出ます。
辺りを見回して、何も居ない事を確認してから通路に出ます。
通路を忍び足で歩いて行きます。
「ミスラ、何をしておるのじゃ?」
突然後ろから声を掛けられました。油断していました。ミスラは、正面のキッチン、もとい道具屋さんにあるキャンディに思いを馳せていて、後ろは警戒していませんでした。
戦える体勢で後ろを振り向きます。
もっとも、戦える体勢と言っても武器もありませんが。
なんという事でしょう! ミスラの目の前に、真っ黒な服に身を包んだヴァンパイア(ニュクス、いつものゴスロリ服)が立ちふさがりました!
(まあ、自業自得じゃからこの扱いは文句は言わぬがのう・・・)
どうしましょう! 今のミスラではヴァンパイアと戦うのはまだ無理です!
ミスラ、お部屋から出て三歩でいきなりピンチです!
○ たたかう
● はなしあう
○ にげる
○ アイテム
ここは得意の話術で冷静かつ穏便に話し合いを行いミスラの今後の旅を継続可能とするためのお互いの要求と利益の妥協点と落とし所を手探りで図りつつ困難な交渉に直面した相手の隙を見て逃げる事にします。
「ルナにキャンディもらうの!」
「ほうか。食べ過ぎぬようにの。」
ヴァンパイアはミスラとは反対方向に歩いて行きました。
ミスラの華麗な話術の勝利です。
運良く他に魔物に出会うことも無く、ミスラは道具屋さんに到着しました。
「おはようございます、ミスラ。どうしましたか?」
道具屋のお姉さんから話しかけられました。
お姉さんは、銀色の髪に赤色の眼でミスラと同じ見た目なのですが、ミスラ達とは違う星の人なのです。実は宇宙人です。
「キャンディ欲しいの。」
「仕方無いですね。いつもの所にあります。すぐに朝ご飯ですから、あまり食べ過ぎてはいけませんよ?」
「はーい。」
お姉さんはコーヒーという苦くて真っ黒な邪悪な飲み物を手に持ってどこかに行ってしまいました。
これでじっくりと武器を選べます。
色々な形の武器が並んでいる中、ミスラはとびきりの武器を見つけました!
◆ミスラは伝説の勇者の剣(ダマスカス鉱包丁、刃渡り25cm、市販品、ルナの料理用)を手に入れた!
(またいきなり最終装備かよ!)
でも、よく見ると伝説の勇者の剣はとっても良く切れそうで、手を切ってしまいそうで危ないのでミスラは剣をそっと元あった所に戻しました。
他の武器を探していたミスラは、ちょうど良い武器を見つけました。
◆ミスラは木の棍棒(すりこぎ、山椒の木製、市販品、ルナの料理用)を手に入れた!
(初期装備に戻っちゃってるよ。落差激しいなおい)
他にもラウンドシールド(木製落とし蓋、杉製)や、フルフェイスヘルム(アルミ製寸胴鍋)、ラージホーリーメイス(鉄製フライパン、26cm)、魔術師の篭手(コットン製ミトン、ルナ用、ひまわりアップリケ付き)など、色々な武器防具が置いてあります。
さすがは道具屋さんです。
でも、ミスラはもう手頃な武器を手に入れたので、これ以上は欲張らないことにしました。
道具屋さん(キッチン)を出たミスラは、魔物を警戒しながらも、次に食堂(ダイニングルーム)に入りました。
食堂では、村人A(マサシ)が食事をしています。
「ミスラ、キャンディはもう良いのですか? 朝ご飯にしましょうか。そこに座って下さい。」
食堂の店員の村人B(ルナ)に声をかけられました。
そう言えば、お腹が空いています。ミスラは言われた通りテーブルに腰掛け、朝ご飯を待ちます。
店員の村人Bさんが、道具屋の店員さんにとても似ている気がしますが、気のせいです。きっとお腹が空いているせいでそう見えるのです。
朝ご飯を食べ終わって、お腹もいっぱいになって冒険再開です!
ミスラはもう一度道具屋さんに行くと、食料(キャンディ)を手に入れました。
食料の横に、ミスラはすごい物を見つけてしまいました!
◆ミスラはエリクサー(ミルクチョコレート、アーモンド入り、個別包装24個入りお徳用パック)を手に入れた!
(あ。それは後でこっそり食べようと思って私が取っておいた・・・)
他にも何かないでしょうか。
道具屋さんの店内には色々な戸棚があります。でも勝手にいじると、道具屋のお姉さんに怒られてしまいます。
戸棚と壁の隙間に何かあります。隙間に手を入れて、何とか手が届きました。
◆ミスラはファイヤーの魔法LV.10(料理用バーナー(改)、ルナお手製改造により火炎量調節可能)を手に入れた!
食料に回復薬、魔法も手に入れて、これで完璧です。
ミスラは意気揚々と道具屋を出ました。
通路を歩いていくと、「りふと」という管があります。この管の中に入ると何もしなくても違う階に行けるとっても便利な管です。
「ミスラ、リフトを使うのですか? 貨物室は危ないですよ。まあ、今はコンテナもありませんし、良いでしょう。」
ミスラがリフトに近づくと、どこからともなく妖精(レジーナ)の声が聞こえてきました。
ミスラは妖精の声に導かれて、村の外(貨物室)に出ました!
村の外には広大な原野(重ねて、貨物室)が広がっています。
ミスラは荒野(あくまで貨物室)を前にして、自らに与えられた使命の大きさと、待ち受ける波乱の運命に目眩を覚えるのでした。
実際の所、貨物室には今何もないので、ただ広いだけで遊んでもぜんぜん面白そうじゃありません。どっちかというと、そのつまらなさに失望して目眩を覚えた感じです。
「ここは誰もいませんし、何もないですよ。お部屋に戻ってビデオでも視ますか?」
ミスラの意志を砕こうとする、邪悪で怠惰な誘惑が聞こえます。
(おいまて。さっきは妖精だったよな?)
冒険を続けるためにはこの悪魔の声が届かないところに行かなくてはなりません。
ミスラは知っています。所々にこの邪悪な存在からミスラが見えなくなる場所(カメラの死角)があることを。
そんな場所のひとつにミスラは移動しました。
「ミスラ? かくれんぼですか? そこがカメラの死角になるとよく知っていますね。危ないので、マサシに言ってカメラを増設してもらわなければいけませんね。」
ふとミスラが脇を見ると、壁のドアが開いているのが見えます。普段は開いていない所です。
ミスラはドアの中を覗き込みました。
そこには闇の中に沈み、亡者の怨嗟渦巻き、どこまで続くとも分からないダンジョン(メンテナンス用通路、および配管配線スペース)が広がっています。
光の勇者であるミスラは、この世界を闇と邪悪から解き放つため、覚悟を決めて深淵なるダンジョンに足を踏み入れたのでした。
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