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毎日が怖くて仕方がなかった。


ヒスイさんが目を覚まさないのは、まだどこか怪我しているからではないか、そう思って治療をしようとしても回復魔法は発動しなかった。それはつまり、怪我は治り切っているということだ。


「ヒスイさん…」


自分よりも低い体温を持つヒスイさんの手は相変わらず冷たいままだった。


以前、ヒスイさんがルカの体温は落ち着くと言っていたことからずっと傍にはいるが、ルカはこれ以上どうしたらいいのか分からなかった。


ただ、早く目が覚めること祈って過ごす日々が重ねるのだ。


♦︎


ーずっと、このままでいたい。


何も考えなくて、何もしなくてもいいこの時間が楽だった。


もういっそのこと、目覚めたくないと思っていたのに、自分が求めている臭いが鼻に届く。気のせいかと思ったが、その臭いが消えることはなく、次第に温かい体温を感じ始める。


重たい瞼を開けてみると視界には懐かしい光景が目に広がり、無意識に手を伸ばしていた。


触れると同時に自分よりも小さな身体は驚いたように顔を上げ、視線が合うと涙を溜めて溢れ出す。弱い力で必死に拳を握り締める姿を働かない頭でぼんやりと眺めていた。


「っ、ひす、いさっ…ひすいさん…」


…ずっと会いたかった人がいる。


泣いていて可哀想なはずなのに、泣き止んで欲しいのに、自分に縋る姿が愛おしく感じてしまう。


「……ルカ?」


名前を呼ぶと、ルカはまた力を込めて更に泣き始める。さすがに胸が痛くなり始めて、ルカの身体を抱き締めるために身体を起こす。


「ルカ、こっち見て。」


首を振るので背中を優しく叩きながら、こちらをみるのを待っていると、ようやく赤くなった目で顔を上げてくれた。


「泣かないで。」


涙を拭おうとすると、手を叩かれて払い落とされる。予想外のことに驚いていると、ルカは胸ぐらを掴むように両手に力を込めてくる。


「ふざけないで!ヒスイさんのせいじゃん!俺は…ヒスイさんがっ、怪我して、目を覚まさなくて…もう本当に目を覚まさないんじゃないかって……」


「ごめん、俺が悪かった。」


「違う!何で、否定してくれないの?!ヒスイさんも怒ってよ!」


「ごめん…」


「だからっ、ゔー…」


ルカは自分でも心の整理がついていないかのように顔を歪ませて唸ると、また顔を埋めてしまった。ヒスイ自身もどう宥めていいのか分からなくて困惑した。


「なんで?何で、あんなに怪我してたの?」


「…どうでも良くなって。なんかもう、贖罪しても意味がないよなって…」


「贖罪?」


「そう…俺さ……、殺したんだ。仲間の竜人達を全員…。その罪を償うために、あいつに力を貰った。」

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