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「ヒスイさん!」
深いエメラルドグリーンの髪が揺れて振り返る。こちらに顔を向けるとヒスイさんは、柔らかな笑みを浮かべる。自分を見守ってくれる優しさを感じられて好きだった。
ヒスイさんが両手を広げでくれたので、そこに飛び込むように抱き付くと頭を撫でられる。
「ルカはすぐに俺を見つけるね。」
「へへっ、だってヒスイさんの気配は分かりやすいんだ!凄い優しくて、綺麗な感じなんだよ。」
「そうか…」
ヒスイさんのことを褒めると彼は決まって気まずそうに目を伏せる。俺はそれが嫌だった。まるで、自分にはそんな価値がないと思っているようで、胸が痛んだ。彼と出会って1週間が過ぎたが、この姿だけは当初から何も変わらない。
「俺、ヒスイさんが大好きだよ。」
「ルカは可笑しなことを言うね。」
「何で?普通のことだよ。ヒスイさんは優しくて、物知りで、カッコ良くて、とにかく凄いんだ!」
本当はもっと褒めたいところはあるが、あまり伝え過ぎると彼の負担になり過ぎてしまうと思った。でも、少しずつでも良いから、俺が言っていることを受け入れられるようになって欲しかった。
ヒスイさんは自分のことが好きではないのはすぐに分かった。でも、それが何故なのか分からない。俺はヒスイさんが自分のことを好きになって欲しかった。だから、彼に出会う度に好きなところをほぼ毎日教えていた。
「俺もルカが好きだよ。君は、…いつも眩しいね。」
首を傾げるとヒスイは身体を離して、かわりに手を握ってくる。
「今日は、湖に行こう。」
「うん!」
ヒスイさんは毎日、この世界のことについて教えてくれた。彼はこの世界について熟知をしており、赤子当然の俺に様々なことを教えてくれた。
現在、この世界には獣人と獣の2種類が住んでいるらしい。かつては、竜人も住んでいたが希少さや血の効力から他の者に狙われ、ほぼ亡くなってしまったらしい。ヒスイさんは唯一の生き残りで、長い年月を得て竜神と拝められる存在になった。
この世界には魔法が存在するが、治療系を取り扱う者は少ないらしい。軽傷を治すレベルがC級、風邪などの軽い病気を治せるのがB級、重傷を治せれるレベルがA級、重体を治療出来るのがS級に分類される。ヒスイさんはS級だが、俺の方が治癒効果が高いらしくSS級に値すると言われた。
前世では、何の取り柄もない自分がこれほど凄い力を手に入れられたのは不思議な気分だ。この世界なら両親からも愛されたのではないかと無駄に考えてしまう。
「ルカ。」
名前を呼ばれて視線を上げると、思わず息を呑んだ。太陽の光に照らされた彼の髪は輝き、浮世離れした容姿を更に際立たせる。
ヒスイは自分を眩しいと言ったけれど、俺からしたら彼の方が眩しくて仕方がない。本当は自分なんかが近くにいていいのかと自責に駆られるほどだ。
思わず手に力を込めると、ヒスイさんは不思議そうに顔を覗いてきた。
「ルカ、どうした?」
「…湖ってここにあったんだなって思って。」
「ああ、ここ綺麗だろ?」
「うん、綺麗だね。」
ヒスイさんの手を引くように足を進めると、彼は大人しくついてきてくれる。
神様がいたらこんな秀美な容姿をしているのかなとヒスイさんを見て、何度も思った。神様というとあのお調子者の神様を思い浮かべるが、この世界に来た時以来、会話をしたことはない。なので、俺からしてもよく分からない存在だ。
ヒスイさんは放浪の旅をしているらしい。ここに留まってくれるのは、俺の存在が理由だと教えてくれた。この世界の知識を一通り教えるまでは、どこにも行かないでくれるそうだ。俺の力は素晴らしいが人によっては悪行を重ねる道具になるとのことだ。危険も教えるためにも、ここに残ってくれている。
でも、神様が特典として、俺に加護と防御魔法を付けてくれた。だから、自分が危険な目にあっても、それらが守ってくれるのだ。でも、ヒスイさんには伝えていない。
俺は今世になって、ようやく自分の存在を認められていると感じることが出来た。こんなに優しくされたことも初めてで、彼ともっと一緒にいたいと願ってしまった。
深いエメラルドグリーンの髪が揺れて振り返る。こちらに顔を向けるとヒスイさんは、柔らかな笑みを浮かべる。自分を見守ってくれる優しさを感じられて好きだった。
ヒスイさんが両手を広げでくれたので、そこに飛び込むように抱き付くと頭を撫でられる。
「ルカはすぐに俺を見つけるね。」
「へへっ、だってヒスイさんの気配は分かりやすいんだ!凄い優しくて、綺麗な感じなんだよ。」
「そうか…」
ヒスイさんのことを褒めると彼は決まって気まずそうに目を伏せる。俺はそれが嫌だった。まるで、自分にはそんな価値がないと思っているようで、胸が痛んだ。彼と出会って1週間が過ぎたが、この姿だけは当初から何も変わらない。
「俺、ヒスイさんが大好きだよ。」
「ルカは可笑しなことを言うね。」
「何で?普通のことだよ。ヒスイさんは優しくて、物知りで、カッコ良くて、とにかく凄いんだ!」
本当はもっと褒めたいところはあるが、あまり伝え過ぎると彼の負担になり過ぎてしまうと思った。でも、少しずつでも良いから、俺が言っていることを受け入れられるようになって欲しかった。
ヒスイさんは自分のことが好きではないのはすぐに分かった。でも、それが何故なのか分からない。俺はヒスイさんが自分のことを好きになって欲しかった。だから、彼に出会う度に好きなところをほぼ毎日教えていた。
「俺もルカが好きだよ。君は、…いつも眩しいね。」
首を傾げるとヒスイは身体を離して、かわりに手を握ってくる。
「今日は、湖に行こう。」
「うん!」
ヒスイさんは毎日、この世界のことについて教えてくれた。彼はこの世界について熟知をしており、赤子当然の俺に様々なことを教えてくれた。
現在、この世界には獣人と獣の2種類が住んでいるらしい。かつては、竜人も住んでいたが希少さや血の効力から他の者に狙われ、ほぼ亡くなってしまったらしい。ヒスイさんは唯一の生き残りで、長い年月を得て竜神と拝められる存在になった。
この世界には魔法が存在するが、治療系を取り扱う者は少ないらしい。軽傷を治すレベルがC級、風邪などの軽い病気を治せるのがB級、重傷を治せれるレベルがA級、重体を治療出来るのがS級に分類される。ヒスイさんはS級だが、俺の方が治癒効果が高いらしくSS級に値すると言われた。
前世では、何の取り柄もない自分がこれほど凄い力を手に入れられたのは不思議な気分だ。この世界なら両親からも愛されたのではないかと無駄に考えてしまう。
「ルカ。」
名前を呼ばれて視線を上げると、思わず息を呑んだ。太陽の光に照らされた彼の髪は輝き、浮世離れした容姿を更に際立たせる。
ヒスイは自分を眩しいと言ったけれど、俺からしたら彼の方が眩しくて仕方がない。本当は自分なんかが近くにいていいのかと自責に駆られるほどだ。
思わず手に力を込めると、ヒスイさんは不思議そうに顔を覗いてきた。
「ルカ、どうした?」
「…湖ってここにあったんだなって思って。」
「ああ、ここ綺麗だろ?」
「うん、綺麗だね。」
ヒスイさんの手を引くように足を進めると、彼は大人しくついてきてくれる。
神様がいたらこんな秀美な容姿をしているのかなとヒスイさんを見て、何度も思った。神様というとあのお調子者の神様を思い浮かべるが、この世界に来た時以来、会話をしたことはない。なので、俺からしてもよく分からない存在だ。
ヒスイさんは放浪の旅をしているらしい。ここに留まってくれるのは、俺の存在が理由だと教えてくれた。この世界の知識を一通り教えるまでは、どこにも行かないでくれるそうだ。俺の力は素晴らしいが人によっては悪行を重ねる道具になるとのことだ。危険も教えるためにも、ここに残ってくれている。
でも、神様が特典として、俺に加護と防御魔法を付けてくれた。だから、自分が危険な目にあっても、それらが守ってくれるのだ。でも、ヒスイさんには伝えていない。
俺は今世になって、ようやく自分の存在を認められていると感じることが出来た。こんなに優しくされたことも初めてで、彼ともっと一緒にいたいと願ってしまった。
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