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葵ちゃんと関東エリア・第一港到着

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 時雨と奏音は艦長室を後にすると早速、あの三人の元へ向かった。
 時雨と奏音は部屋に着くと、ノックをし、中に入った。怜、柚奈、旭は眠りについており、誰も気づかなかった。
 奏音が部屋の電気をつけ、明るくした。丁度、レオの爆破音から二、三時間くらいだろうか窓からは少し、海の色が見えてきた。
 電気がつくとまず、柚奈が目を擦り起きた。

「うーん、誰ですかこんな時間に」
「おっはよ! 柚ちゃん」
「おはようございます。神野隊員」
「はぁ!? 時雨さんに奏音さん!? お、おはようございます」

 柚奈は時雨と奏音の姿を確認すると寝ぼけながら敬礼し、挨拶をした。しかし、部屋が明るくなっても起きない二人は、人の声がしたところでは、まだ目を覚まさなかった。困っている時雨を見兼ねた柚奈は二段ベットから降り、話を聞いた。

「こんな時間に一体どうしたのでしょうか?」
「実はこの方について」

 奏音はレオについて記載されている資料を見せると柚奈は息を飲んだ。

「彼とは私と旭ちゃんが同じくらい関わっています。私だけでも良さそうです」
「分かりました。では、艦長室へ」

 柚奈は二人の後をついて艦長室へと向かった。
 艦長室に着くと会議テーブルには大量の資料が散乱していた。柚奈は椅子に座るとレオの資料を渡され、読み始めた。

(これがレオについての資料。本名レオ・ブレイク。新総理大臣任命式の当日、式場のテロに加え、総理大臣殺人未遂で確保。その後は、牢に入れられるはずが、謎の奴らに襲撃され、逃亡。その後の情報は無しですか。とても短いですし、能力が画家って、全然違います。もしかしたら、所々のミスが)

 じっくり資料を読む柚奈に奏音が話しかけた。

「どこか間違っていると思うのであれば、それは違います。この資料を手がけた人はそんなミスをしない人ですから」
「!? そ、そうなんですね。では、ここの画家っていうのはどういう事でしょう」
「はぁ、神野さんもそう思うのですね。実は僕達もそこに引っ掛かってまして」

 すると困り果てる二人を見て時雨が立ち上がり話した。

「じゃ、これ作った人のところに行くなの!」
「えぇ!? いつですか」
「今日なの!」
「はぁ? だってあの方は多忙で相手してくれませんよ」
「いいなの、じゃないと本部に問い合わせるなの」
「こうなったら時雨さんは止まりませんね。では、一応あの方の部に連絡は入れときますね」

 奏音は走り出し、艦長室を後にした。すると時雨が艦長室のドアを閉め、柚奈だけに何かの電波機器を見せた。

「柚ちゃん。これをなの」
「こ、これは発信機!?」
「これはレオくんに私が治療するときに埋め込んだものなの。レオくんは今、ここ『貧民街』にいるなの」
「『貧民街』!?」

 柚奈は驚き、一歩下がった。驚いた柚奈に対し、時雨は一歩近づき、柚奈の耳元で話した。

「これは誰にも話してない情報なの。私の立場ではここには行けないなの。あっちについたら三人でいってほしいなの。もちろんこのことは他言なの」
「ですが、時雨さん。ここって……」
「よろしくなの!」

 時雨は笑顔で手を振ると艦長室を後にした。
 そして太陽が昇り、鮮やかな海を照らすと船は九時頃、関東エリア・第一港へ到着した。
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