【完結】これでよろしいかしら？

第二話

「どうしてですか？」
ライトの悲しい声が響いた。
ルイーザも両親も困惑していた。
「我々にもよくわからないんだ。視察に来た領主様のご子息が、ルイーザと結婚したいと。そのために、アルー子爵の養子にしたいと、そう言うんだよ」
「もうすぐ僕との結婚式なのに」
ライトの悲痛な声が部屋の温度を下げた。
「それはわかってる。領主様にもお願いしたんだが、ダメだった。ライトくんには悪いが、ルイーザは領主様のご子息に嫁ぐしかない。我々は領主様に逆らえない。ライトくん、つらいだろうが、あきらめてくれ」
ルイーザの父は、ため息をつきたくなった。
ルイーザが生まれてしばらくはよかった。
だんだん目鼻立ちがはっきりしてくると、ルイーザは非常に整った顔をしていた。父母どちらにも似ていない。
だが、不貞は考えられなかった。
満腹するほどは食事さえできない貧しい日々、妻のリースが必死に食事を工夫したり、農作業を毎日一緒にしている。
こんな暮らしで不貞だなんて思い付きもしなかった。

「ルイーザ」
まだ赤ちゃんなのに、こんなに神々しいなんて、将来どれだけ美しい子に育つのか、夫婦は戦慄した。
けれど、自分たちは農民だ。早めに気のいい婚約者を決めれば、問題は起きないだろう。貴族ではないのだから。
夫婦は無理矢理そう思って不安に蓋をした。

「母ちゃん、ルーもそれやりたい」
ルイーザは5歳になって、家の手伝いを一生懸命やるいい子に育った。他人がこわいらしく、笑顔を見せるのは両親にだけだ。
それと、幼馴染のライト。
ライトとは仲が良かった。
ライトはルイーザのこととなると、血相を変えた。もう独占欲丸出しだった。
3歳のときから、
「ルーは将来、僕のお嫁さん」
と言っていた。
ルイーザもライトを好きらしく、親としてはすっかり安心していた。