【完結】これでよろしいかしら?

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第三話

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「ルイーザ、ルイーザ!」
ライトは泣き叫んでいた。
だが、貧しい農民が貴族相手に何ができるだろう。ここの領主様は伯爵で、宮廷でも商会でもなかなかうまくやっていると評判だ。
ルイーザは着替えをさせられて、左右を侍女に囲まれて、連れて行かれてしまった。ドレスを着たルイーザは光り輝いていて、思わず目をつぶってしまうほどだった。
ルイーザの乗せられた馬車はもうすぐ見えなくなる。ライトは恥も外聞もなく泣いていた。
二度とルイーザには会えないだろう。
ルイーザのいない人生に何の意味があるだろう。

「ルイーザ様、ひざ掛けはいりますか?」カチコチに固まっているルイーザに侍女は優しく問いかけた。
最初は農民をトマス様のお嫁さんにするなんて大反対だったが、ルイーザを一目見て、アンナも意見を変えた。
専属侍女になりたいと思った。もう1人の侍女マリーもルイーザ様を見つめてぼぉっとしている。無理もない。
こんなに美しい人がこの世にいるなんて。

「ルーは、あっ、私はどこに行きますか?」
たどたどしい話し方すら可愛い。
アンナはニコニコ笑いかけながら、
「ルイーザ様の話たいように話して大丈夫ですよ。ルイーザ様をミッセ伯爵家にお連れします。トマス様が首を長くしてお待ちですよ」
「トマス様はお優しい方で、容姿も素晴らしく、ルイーザ様もきっと気に入りますわ」
アンナとマリーのふたりに、少しずつ慣れてきたルイーザは、
「あなたたちはなんというお名前ですか?」
たしか13歳と聞いているが、見た目はもう少し年上に見えて、中身はもう少し年下に感じるなあとアンナは思った。

ルイーザは人見知りだが、アンナとマリーは見た目の年も近いし、ニコニコ話しかけてくれるので、少しずつ2人に慣れて来た。やっと質問ができたのだ。
ルイーザにしてはよくやった。
置いて来た両親とライトは気になるが、
ルイーザには選択肢がなかった。
それなら、与えられた場所で頑張るしかないのだ。



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