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「フィランヌお嬢様は嫌なことを思い出されて、悲しくなってしまわれたのです」
リルは深く説明する気はなかった。
ダルナルトは簡単に納得しなかった。
「フィランヌ嬢はいつも一生懸命で冷静だ。あんな取り乱したりするようなことはなかなかないだろう。よほどのことがあったにちがいない」
それでもリルは勝手にフィランヌのことを話すことはなかった。
「コルト公爵令息さま、お嬢様を助けてくださってありがとうございました。それ以外のことは私の口から申し上げられません」
ダルナルトは基本的に他人に興味がない。けれど、唯一の弟子の涙の理由は気になって頭から離れない。
「だから、女は嫌なんだ」
そう頭を掻き回しながら、ぶつくさ言ってはいるものの、心のどこかがとまどっていた。こんなことは初めてだ。
自分が誰かのことを気にするなんて。
そして、情報入手の手段を考える冷静な自分もいる。フィランヌにいったい何があったのか。なぜあんなに泣いていたのか。
ダルナルトは自覚がなかったが、すべてを知りたいのだ。フィランヌのすべてを。
そんな風に思ったのは初めてだった。
「唯一の弟子だからな」
ダルナルトの見解はあくまで、そんな風だった。
調査の報告は、あっという間だった。ダルナルトが知らないだけで、フィランヌの婚約内定からの破局は有名だった。第三王子の対応はひどすきた。いくら内定とはいえ、こんな目にあったら、人間不信になっていても無理がない。フィランヌの強い心にダルナルトは感心した。
「あれだけ弟子入りを断ってさらにやって来たのは彼女だけだった」
ダルナルトはフィランヌのことをじっくり考えた。
自分は今まで通り厳しい師匠であろう。
彼女の師として誇れる存在であろう。
ダルナルトは自分が、誰かをそんな風に受け入れるのが初めてだと気づかなかった。
ダルナルトはただ真面目に誓っただけだ。
「弟子であることに喜びを感じるような師匠になろう」
それはまるで愛の言葉に似ていた。
リルは深く説明する気はなかった。
ダルナルトは簡単に納得しなかった。
「フィランヌ嬢はいつも一生懸命で冷静だ。あんな取り乱したりするようなことはなかなかないだろう。よほどのことがあったにちがいない」
それでもリルは勝手にフィランヌのことを話すことはなかった。
「コルト公爵令息さま、お嬢様を助けてくださってありがとうございました。それ以外のことは私の口から申し上げられません」
ダルナルトは基本的に他人に興味がない。けれど、唯一の弟子の涙の理由は気になって頭から離れない。
「だから、女は嫌なんだ」
そう頭を掻き回しながら、ぶつくさ言ってはいるものの、心のどこかがとまどっていた。こんなことは初めてだ。
自分が誰かのことを気にするなんて。
そして、情報入手の手段を考える冷静な自分もいる。フィランヌにいったい何があったのか。なぜあんなに泣いていたのか。
ダルナルトは自覚がなかったが、すべてを知りたいのだ。フィランヌのすべてを。
そんな風に思ったのは初めてだった。
「唯一の弟子だからな」
ダルナルトの見解はあくまで、そんな風だった。
調査の報告は、あっという間だった。ダルナルトが知らないだけで、フィランヌの婚約内定からの破局は有名だった。第三王子の対応はひどすきた。いくら内定とはいえ、こんな目にあったら、人間不信になっていても無理がない。フィランヌの強い心にダルナルトは感心した。
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自分は今まで通り厳しい師匠であろう。
彼女の師として誇れる存在であろう。
ダルナルトは自分が、誰かをそんな風に受け入れるのが初めてだと気づかなかった。
ダルナルトはただ真面目に誓っただけだ。
「弟子であることに喜びを感じるような師匠になろう」
それはまるで愛の言葉に似ていた。
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