【完結】薔薇の花と君と

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フィランヌは冷静になると、泣いたことが恥ずかしかった。でも、なんだかスッキリした。
ただ、ダルナルトを巻き込んでしまったのが申し訳ない。
「こんなことで、師匠をわずらわせるなんて」
弟子として不甲斐ない、そう思った。
「魔法のコントロールが甘いんだわ」
ますます修行に力を入れようと誓った。

数日後、誓った通り、フィランヌは魔法のコントロール訓練を再開した。氷を作る前にもっと完全に魔力をコントロールできるようにならなければ。ダルナルト師匠に恥ずかしくない弟子になる。フィランヌの夢だ。強い魔法使い。自分が受けた傷を乗り越える強さ。それがフィランヌのほしいものだ。自信と強さ。
「最高の師匠に見てもらっているんだから、頑張る」
フィランヌはまた誓う。真剣な瞳は輝いていた。


ダルナルトは前向きなフィランヌを見て、
ますます厳しく指導した。
けれど心のどこかで、フィランヌに対して何か引っかかることがあった。それはマイナスの感情ではない。
「魔法を強くする」
そうつぶやきながらも、何かわからないモヤモヤが心に残った。
魔法コントロールがうまくいったときのフィランヌの笑顔。つらかった過去を思い出して泣いていた顔。
それが時々頭をチラつくのだ。

「師匠、できました」
フィランヌの目の前にあるのは小さいが、確かに氷だった。
「よくやった」
ダルナルトにそう言われてフィランヌはうれしかった。飛び上がって誰彼かまわずこの喜びを伝えたいくらいだ。
「まだまだ、こんなレベルで満足するんじゃないぞ」
「当然です。私まだまだ頑張ります」
ダルナルトとフィランヌ、この師弟はより高みを目指して、止まることはない。
ただ、周囲はみんな気づいているのに、当人はわかっていない。
世紀の魔法使い夫婦が生まれるまで、まだまだ道のりは遠い。
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