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最初の夫婦と最初の娘たちの話

この世界で一番最初の猟師と料理人

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 広い広い大地には、人が最初の夫婦の二人と最初の夫婦の最初の娘と最初の双子の娘しかおりませんでした。
 夫の人はこの世で最初のお父さんで、この世で最初のお百姓さんでした。
 妻の人はこの世で最初のお母さんで、この世で最初の機織り職人さんでした。
 最初の娘はこの世で最初の赤ん坊で、この世で最初のお医者さんで、この世で最初のお産婆さんでした。
 次の娘たちはこの世で最初の双子で、この世で最初の猟師とこの世で最初の料理人になる人でした。

 何しろこの世で最初の双子の娘は、この世で一番最初の元気な子供たちでしたから、何よりまず自分達が食べるたくさんのご飯の心配をしなければならなかったのです。

 この世で最初のお百姓さんの畑は、まだたくさんの量も、たくさんの種類も採ることができませんでした。
 お百姓さんが一人しかいなかったからです。
 この世で最初のお母さんが作れる料理は、まだたくさんの量も、たくさんの種類もありませんでした。
 料理を作れる人が一人しかいなかったからです。

 この世で最初の双子の、後から手を出したのに先に生まれてきたマッハは、まず一番最初に柳の木で弓矢を作りました。
 それからその弓矢を背負って、荒れ地を歩き、砂漠を歩き、川の岸を歩き、山の中を歩き、泉の畔を歩きました。
 荒れ地で空を見上げてはをキジバトを探し、砂漠の小さな穴ぼこを覗き込んではスナネズミを探し、川の岩陰を探ってはカワウソを探し、山の洞穴に忍び込んではヤマクジラを探し、泉の近くに身を潜めてはスイロクを探しました。

 何分この世で最初の猟師さんですから、何が捕まえてよい生き物で、どれが人を襲う獣なのかが判りません。どこにどれほど群れているのか、何をどのように仕掛ければよいのか判りません。
 何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世に猟師さんは一人きりしかいないのですからね。
 誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違って襲われることもありました。間違って怪我をすることもありました。
 そういったわけですが、この世で最初の双子の先に生まれた娘は、この世に最初に生まれてきたときのはしっこさを、ますます鍛え、ますます生かし、素早く、元気で、丈夫な人になりました。

 そうしてこの世で最初の猟師さんのマッハは、少しずつ地形を見分け、食べるに良い得物を探し出し、上手に狩りをする方法を知り、それぞれの生き物の特徴を憶え、良い猟場を見付けました。
 マッハは弓矢を持って胸を張って歩き、いろいろな得物の肉や皮を背負って、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟に戻ってきました。

 この世で最初の双子の、先に手を出したものの後から生まれてきたジョカは、まず一番最初に赤い粘土で鍋を作りました。
 それからその鍋を背負って、荒れ地を歩き、砂漠を歩き、川の岸を歩き、山の中を歩き、泉の畔を歩きました。
 荒れ地の草を摘んでは甘い草を探し、砂漠の砂を掘っては辛い球根を探し捜し探し、川の岩陰を覗いては苦い葉っぱを探し、山の崖を掘ってはしょっぱい岩塩を探しを探し、泉の水辺に依っては酸っぱい木の実を探しました。

 何分この世で最初の料理人さんですから、何が味を引き立てるものでで、どれが味を悪くするものなのかが判りません。どこにどれほど咲いているのか、何をどのように組み合わせればよいのか判りません。
 何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世に料理人さんは一人きりしかいないのですからね。
 誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違ってとても食べられない味の物を囓るもありました。間違って怪我をすることもありました。

 そういったわけですが、この世で最初の双子の後に生まれた娘は、この世に最初に生まれてきたときの慎重さを、ますます鍛え、ますます生かし、注意深く、真面目で、丈夫な人になりました。
 そうしてこの世で最初の料理人さんのジョカは、少しずつ味を見分け、より美味しく食べる術を探し出し、上手な組み合わせ方法を知り、それぞれの食材の特徴を憶え、良い調理の仕方を見付けました。
 ジョカは鍋を持って胸を張って歩き、いろいろな香辛料や調味料を背負って、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟に戻ってきました。
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