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最初の夫婦と最初の娘たちの話

この世界で一番最初のお医者様。

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 広い広い大地には、人が最初の夫婦の二人と最初の夫婦の最初の娘しかおりませんでした。

 夫の人はこの世で最初のお父さんで、この世で最初のお百姓さんでした。
 妻の人はこの世で最初のお母さんで、この世で最初の機織り職人さんでした。
 娘はこの世で最初の赤ん坊で、この世で最初のお医者さんになる人でした。

 なにしろこの世で最初の娘は、この世で最初の大怪我人でしたから、何よりもまず自分の体を治療しなければならなりませんでした。
 そうしなければ、お父さんのお百姓仕事を手伝うことができませんし、お母さんの機織り仕事を手伝うことができないからです。

 この世で最初の娘のフッラはまず一番最初に桑の木で杖を作りました。それからその杖を突いて、荒れ地を歩き、砂漠を歩き、川の岸を歩き、山の中を歩き、泉の畔を歩きました。
 荒れ地の草を摘んでは薬草を探し、砂漠の小さな生き物を捕っては薬になる生き物を探し、川で釣りをしては薬になる魚を探し、山の土を掘っては薬石になる石を探し、泉の水を飲んでは水薬の湧く場所を探したのです。

 何分この世で最初のお医者さんですから、何が傷を治す薬で、どれが具合の悪くなる毒なのかが判りません。どれをどれほど調合すればよいのか、何を取り除けばよいのかも判りません。
 何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世にお医者さんは一人きりしかいないのですからね。
 誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違って毒を飲むこともありました。間違って怪我をすることもありました。

 こういったわけで、この世で最初の娘がこの世に最初に生まれたときに負った傷は、良くなっては悪くなり、悪くなっては良くなって、いつまでたっても足は片方引きずったまま、手は片方萎えたまま、耳は片方聞こえぬまま、目は片方見えぬままでした。
 それでもこの世で最初のお医者さんのフッラは、少しずつ薬になる草を見分け、薬になる生き物のことを探し出し、薬になる魚を知り、薬になる石を憶え、薬になる泉を見付けました。

 フッラは杖を突いて足を引きずり、いろいろな良い薬を背負って、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟に戻ってきました。
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