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前編
お前の夢
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『じいちゃん、お願いがあるんだけどさ』
次の日樹は1人、学校も行かず祖父の所に来ていた。
『なんじゃ樹。何か欲しい物でもできたか?』
樹の祖父は建設会社の会長だ。元々は職人でその仕事ぶりはなんとも大胆だった。
どうすれば手っ取り早く、かつ効率よく仕事を進められるか。その発想が常に常識を超えていて、だがそれ故にいつも大きな儲けを産み出してきた。
会長という座についてからは現場に出ることはなくなったが、会社の職人たちは彼を信頼していた。
人と夢について語り合ったり人の夢を聞いたりするのが好きで、そんな彼の周りには必ず人が集まった。
自分の会社とは別で趣味で人の夢に投資などもしていて、自分があると思えばどれだけ小さな見返りの為だとしても惜しまず金を出した。
見る目もあるのだろう。彼に金を出させた者たちは皆成功し彼への恩を忘れなかった。
そんな彼が何よりも可愛がってきたのがこの樹なのだ。
祖父はいつも言った。
『樹、夢を大切にしろ。夢を追い忘れるな。お前の夢の為ならワシはいくらでも出そう』
樹が「夢」という言葉に反応するのはそんな彼の教えと血筋なのだろう。
樹は最近起きた全てのこと、そして自分の気持ちを祖父に話した。
『…なるほどのう。それでなんじゃ、いっそ学校を転校するか?』
『いや、そうじゃなくてさぁ…負けない力っていうか友達を守れる強さが欲しいんだよ。親に言ってもさ、分かってもらえないと思うんだ』
『…ワシに…どうしろと?』
『あたしに格闘技習わせてくんないかな?じぃちゃんならそういう知り合いもいると思って』
『か!格闘技じゃと!?』
予想もしなかった樹のお願いに祖父は声を大にして驚いた。
樹と言えば絵を描くのが好きな普通の女の子だった。
小さい時から祖父の誕生日には必ず彼の似顔絵を描いて持ってきてくれたもので全て今も飾ってある。
あの樹がよりにもよって格闘技を習いたいなどと言い出すとは正直とても信じられなかった。
可愛い孫にはやりたいことなら何でもとことんやらせてあげたいとは思っていたが想像していたこととの差に祖父は頭を抱え悩んだ。
『…ワシはてっきりお前は絵描きになると思っとったんじゃが…』
『絵を描くのは好きだよ。でも夢かというと別に夢にしなくたって絵はずっと描くことができる』
好きなことを仕事にするか趣味としておくか考えた時、樹は絵を描くことをずっと好きでいたいと思ったのだろう。
それはそれで分かるし良いと思った。
『むぅ~。樹、お前の夢はなんじゃ?』
『夢って言うのか分からないけど神奈川一カッコいい女になりたい』
『その、カッコいい女とは?』
『強くてオシャレで自分を持ってる人』
祖父はそれを聞いてしばらく黙って考え込んだ。
孫で女の子の樹には正直心配だ。だが祖父の長年の勘が、このろくにスポーツもしたことがないインドア派の少女に「やらせてみるべき」と言っていた。
『…仕方ないの~。よし、ちょっと待っておよ』
祖父は色々な所に電話をかけ始めた。
決して誰かに任せるようなことはせず、一軒一軒自分で電話をかけ自らお願いをし、夕方までには近くの空いているテナントを契約し、すぐに必要な工事や物資やトレーナーなどの手配までが済んだ。
そうしてたった半月足らずでジムを完成させてしまった。
『どうじゃ樹。このジムは今日からお前のもんじゃ。夢に向かって思う存分やるがよい』
いやいや…習わせてくれればよかっただけなんだけどな。とは言えなかった。
『あ…ありがとう。じいちゃん…』
その日から樹のキックボクシングが始まった。
次の日樹は1人、学校も行かず祖父の所に来ていた。
『なんじゃ樹。何か欲しい物でもできたか?』
樹の祖父は建設会社の会長だ。元々は職人でその仕事ぶりはなんとも大胆だった。
どうすれば手っ取り早く、かつ効率よく仕事を進められるか。その発想が常に常識を超えていて、だがそれ故にいつも大きな儲けを産み出してきた。
会長という座についてからは現場に出ることはなくなったが、会社の職人たちは彼を信頼していた。
人と夢について語り合ったり人の夢を聞いたりするのが好きで、そんな彼の周りには必ず人が集まった。
自分の会社とは別で趣味で人の夢に投資などもしていて、自分があると思えばどれだけ小さな見返りの為だとしても惜しまず金を出した。
見る目もあるのだろう。彼に金を出させた者たちは皆成功し彼への恩を忘れなかった。
そんな彼が何よりも可愛がってきたのがこの樹なのだ。
祖父はいつも言った。
『樹、夢を大切にしろ。夢を追い忘れるな。お前の夢の為ならワシはいくらでも出そう』
樹が「夢」という言葉に反応するのはそんな彼の教えと血筋なのだろう。
樹は最近起きた全てのこと、そして自分の気持ちを祖父に話した。
『…なるほどのう。それでなんじゃ、いっそ学校を転校するか?』
『いや、そうじゃなくてさぁ…負けない力っていうか友達を守れる強さが欲しいんだよ。親に言ってもさ、分かってもらえないと思うんだ』
『…ワシに…どうしろと?』
『あたしに格闘技習わせてくんないかな?じぃちゃんならそういう知り合いもいると思って』
『か!格闘技じゃと!?』
予想もしなかった樹のお願いに祖父は声を大にして驚いた。
樹と言えば絵を描くのが好きな普通の女の子だった。
小さい時から祖父の誕生日には必ず彼の似顔絵を描いて持ってきてくれたもので全て今も飾ってある。
あの樹がよりにもよって格闘技を習いたいなどと言い出すとは正直とても信じられなかった。
可愛い孫にはやりたいことなら何でもとことんやらせてあげたいとは思っていたが想像していたこととの差に祖父は頭を抱え悩んだ。
『…ワシはてっきりお前は絵描きになると思っとったんじゃが…』
『絵を描くのは好きだよ。でも夢かというと別に夢にしなくたって絵はずっと描くことができる』
好きなことを仕事にするか趣味としておくか考えた時、樹は絵を描くことをずっと好きでいたいと思ったのだろう。
それはそれで分かるし良いと思った。
『むぅ~。樹、お前の夢はなんじゃ?』
『夢って言うのか分からないけど神奈川一カッコいい女になりたい』
『その、カッコいい女とは?』
『強くてオシャレで自分を持ってる人』
祖父はそれを聞いてしばらく黙って考え込んだ。
孫で女の子の樹には正直心配だ。だが祖父の長年の勘が、このろくにスポーツもしたことがないインドア派の少女に「やらせてみるべき」と言っていた。
『…仕方ないの~。よし、ちょっと待っておよ』
祖父は色々な所に電話をかけ始めた。
決して誰かに任せるようなことはせず、一軒一軒自分で電話をかけ自らお願いをし、夕方までには近くの空いているテナントを契約し、すぐに必要な工事や物資やトレーナーなどの手配までが済んだ。
そうしてたった半月足らずでジムを完成させてしまった。
『どうじゃ樹。このジムは今日からお前のもんじゃ。夢に向かって思う存分やるがよい』
いやいや…習わせてくれればよかっただけなんだけどな。とは言えなかった。
『あ…ありがとう。じいちゃん…』
その日から樹のキックボクシングが始まった。
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