不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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125.信じるの意味

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 じっとボスの傷の有無を確認する。そして首を捻る。だってさっき走ってたら崩れたとか落ちてきた飛んできたとか色々言っていたはずなのにボスにはどこにも怪我がない。擦り傷一つしていない。


「ボス怪我は?」


「ああ? あの程度でするわけでねぇだろ」


「???」


 あれっす? もしかして俺が思っているより外の状況は悪くないっすか???


 そう思ってしまうほどにボスはあっけらかんとしてそこにいる。でもいやいやと頭を振ってよく考えた。


 ボス、ビビったってさっき言ってたっすもん。大したことがないのならそんなこと言わな……あれ? 


「?」


 ……違うっすね。あれは俺に何かあったんじゃないかって心配して怖かったって意味っすから起こった現象に対してのことじゃないっすね。んん?


「…………」


 よくわからない。そんな俺にまだボスは呆れ顔継続中だ。


「あのなツキ。俺達はお前の不幸体質のことはよーーっく理解してわかってるつもりだ。もう十年以上も一緒にいるんだぞ? 今更山や洞窟の一つや二つが崩れようが割れようが落ちてこようが驚きゃしねぇし怖くもねぇよ」


「……流石にそれは驚かなきゃダメなような気がするっす……」


 落ちてくるのは流石にないと思うっすけど、ボスはもっと危機感というものを持ってほしいっす。


「ああ? 備えあれば憂いなしってよく言うだろ。最初っから起こるかもって思ってたもんが起こったからってビビりようもねぇだろ」


「…………」


 それでもこの事態は驚く必要があると思うっすよ? あと、ボスは俺をなんだと思ってるんっすかね?


 なんとなく複雑な気分になった。わかっているのはわかっているのだ。自分でもここまでではなくてもいつかやりそうだなとは思っていたから。だが、実際に面と向かって「いつかやると思った」と言われるとなんだかなぁと思ってしまう。言葉に言い表せられない複雑なこの気持ち。


「あのな、ツキ。お前はいい加減俺を……俺達を信じろよ」


「……信じる?」


 信じるって何をっすか……?


 またボスからこの台詞だ。ボス以外にも何回も聞いた言葉。ボス達のことは誰よりも信用して信頼している。ボスは俺を含む仲間達がピンチに陥れば必ず助けに来てくれる。それは逆でも同じだ。信じ、信じられ互いの背中を預けられる仲間達で仲間想いの仲間達。俺はそんな仲間達を尊敬し、信じている。それはボスだって知ってるはずだ。なのにボスは『信じろ』と言ってくる。俺のこの気持ちを疑っているのか? 


 意味がわからず、困り果ててボスを見上げ続けると、ボスは仕方ない奴だなと溜息を吐いた。


「あのな、お前が俺らを信用して信頼してくれてんのは知ってるけどな、肝心なところを全く信用してねぇだろ。矛盾してんだよお前は」


「矛盾……?」


「ああ。……お前、こんだけ長い間一緒にいても俺達がお前を拒絶するとでも思ってんのかよ」


「っ」


 ボスの金の目と目が合う。


「不幸体質? お前の不幸は他を巻き込む? 確かに怪我することもやべぇ目に遭うこともお前のせいじゃねぇとは言わねぇよ。けど、こうしてにいる連中はんなの全員承知の上で、古い奴らでいえば十年以上もお前と一緒にいて馬鹿やってる奴らばっかりなんだぞ? 今更怖いとか気味悪いとか言って出て行けなんていう奴等がいるわけねぇだろ」


「で、でも! 怖くないっすか? 俺みんなにいっぱい怪我させちゃって、こうして殺しちゃうこともできるんっすよ? いつそれが自分の番になるかわからなくないっすか!? ……っ嫌じゃないっすか? 怖くて一緒にいられなくないっすか? 俺っ……みんなのっ……なんの役にも立てないっすにっ、こ、こんな酷いことしかできないっすのに……っ」


「馬鹿か。だからんなの全員わかっててお前と一緒にいるんだろ? 役に立たない、酷いことしかできないと思うのはお前がそう思って勝手に自分を責めてるだけだ。誰か一人でも、お前をそう言って責めたことがあんのか? ねぇだろ」


「そ、それは……でもっ」


「でもなんだ? ……それともお前は、俺達が役に立たねぇからって一度仲間にした奴を途中で放り出すようなんな腐った奴等だっていいてぇのか」


「っそ、そんなことないっす!」


 慌てて首を横に振った。


「だろ? ……ツキ、お前はもっと仲間を信じろ。ちょっと怪我をするだけでぴーぴー泣いて謝って自分のせいでって怯えるガキに、よかったっつって泣きながら嬉しそうに、下手くそに笑うガキに俺達が何とも思わねぇと思うのか? 大丈夫だっつってお前を安心させて、笑って馬鹿やってガキ一人を笑わせるために強くなろうと努力する奴らだぞ? ……もうちょっとそんな馬鹿共を信じてやれよ」


「ボス……」


 ボスが苦笑する。それでも俺は顔を落としてしまう。


 ボスが立ち上がる気配を感じた。


「ツキ。確かに俺から見てもお前は結構な不幸体質の持ち主だと思うぞ? ――けど、それと同じくらいお前は幸運の持ち主だろ。そろそろちゃんと顔上げて、お前こそこの現実を見ろ」


「現実……?」


 ぐしゃっとボスに優しく髪を撫でられる。そして――


「――お! こっちにいたぞ!!」


「すっげぇ! 本当だ!」


「! あ……!」


 狭まっていた視界が一気に広がった気がした。




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