不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
127 / 150

126.向けられる感謝  

しおりを挟む



 聞こえた声にボスの後ろを見れば、モージーズー達をはじめとした狼絆の仲間達がそこにいた。みんな元気そうにこっちだあっちだと言いながら瓦礫や土砂を掻き分けて掘っている。


「すごいな。本当に生きてるぞ」


「「「フレイちゃんすげー!!」」」


「…………」


「レト兄? モージーズー……それに……フレイ君?」


 レト兄とモージーズー達が掘った瓦礫の底を覗き込んでいる。そしてそんなモーの肩には縄でぐるぐる巻きにされ項垂れ担がれているフレイ君がいた。


 ……いや、フレイ君に何があったんっすか?


 フレイ君の状態に呆気に取られ見ていると、フレイ君が何かをぶつぶつ言っているのに気付いた。


「……あり得ない。なんでラックの奴無傷なの? こっちもこっちで動くなって言ってんのに勝手に動いて僕に縄巻いてわーわーと。何考えてんの? それでなんでこっちもほぼ無傷? 体質対策にしても一体どんな訓練してるの? 意味わかんない。いつの間にかいなかった奴らも全員合流してるし、なんなの? 僕ってこんな扱い受けてもいいような立場だったっけ? 偉いはずなのに何この扱い。でももういいや……今は何にも考えたくない。どうせ姉様には死ぬほど怒られることになるんだし、今はいいよもうなんでも。何も考えたくないし、考えないでおこう無になろう…………」


「…………ボス、なんかフレイ君の目死んでないっすか?」


「あいつはいつもあんなんだろ」


「それはないっす」


 たまにあーなっちゃう時はあるっすけどいつもじゃないっす。それに今は初めて見る無の目っす。


「とりあえず引き上げるぞ」


「「「了解ー、いつでもいいぞー」」」


 フレイ君を肩に担いでるモーも、絶対フレイ君の様子がおかしいことに気付いてるレト兄やジーズーもみんなフレイ君を無視して瓦礫の底から何かを引き上げた。……いや、何かをじゃない。誰かをだ。


「……え?」


 そして、その誰かは一人ではなかった。


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫です。ありがとうございます」


「私達助かったの?」


 一人を引き上げた後、次から次へとレト兄の手に引かれて出てきた人達はさっき俺が守ろうとしていた人達だった。


「……なんで」


 そういえばさっきレト兄が生きてると言っていた。もしかしてそれはその人達のことだったのか。


 ……でもなんでっすか?


「よし坊主ももう大丈夫だからな」


「う゛ん……あ、お兄ちゃん!」


 ジーに抱き上げられ、次に出てきたのはあの男の子だった。涙ぐんでいるその子は俺を見つけるとジーに下ろしてもらってすぐにこちらへと駆けてくる。


「お兄ちゃん! ……この人達お兄ちゃんが言ってた仲間の人?」


「え? あ、そ、そうっす……」


 驚きすぎて言葉が上手くでなかった。


「そうなんだ……っよか……ぅぅっ~~あ、あのね、僕っ!! お、お兄ちゃんが頭抱えてしゃがんででって言ってくれてたから、おっきな石が落ちてきても、僕達大丈夫だったよ!!」


 涙ぐみながらもパッと俺を見て嬉しそうに語る男の子。でも――


「だから――」


「っ違うっすそれは俺のせいでっ!」


 男の子の言葉を遮ってそういえば、男の子はきょとんとした表情を浮かべる。


「お兄ちゃんの? 違うよ? お兄ちゃんのお陰で僕達助かったの!」


「っ」


 おかげ? 違う。違うっすのにっ――


「お兄ちゃん。いっぱい傷だらけ……っあのね、守ってくれて……たくさん頑張ってくれてありがと……っ! 助けてくれて……っありがとう。すっごく……すっごくかっこよかったよ!」


「っっ!!」


 怖かったはずなのに、涙で声を震わせながらもそれでも笑顔でお礼を言う男の子。


 なんっすか、なんなんっすかこのいい子は!!


「わっ!」


 思い余って男の子を抱きしめた。温かい。生きてる。生きててくれた。


「うぅ~~!! よがっだ。よがっだっず!! ありがとうっず!!!」


 情けないところをいっぱい見せてしまったのに、俺のせいでこんな目にあったのに、男の子はありがとうと笑顔でお礼を言ってくれた。かっこよかったと言ってくれた。俺のおかげ? ……わからない。それでも嬉しさがあふれてボロボロと涙が止まらなかった。ありがとうはこちらの台詞だ。


「お兄ちゃんどうしたの? 痛いの? 大丈夫?」


「ゔぅ~っ大丈夫っす。こんなの、っ全然痛くないっすよ……!」


 痛いのなんて、どっかへいったっす。


 痛みも苦しさも和らぐ。あれだけ悲しかったのに嬉しさでいっぱいだった。もう一度ぎゅっとその存在を確かめるように子どもを抱きしめ、温もりにまた涙をこぼしてそっと俺は男の子を離して笑った。


「無事で……よかったっす……!」


 本当に、本当に生きてよかったっす……。本当に……っ。


「っ……うぅ~~っ!」


「……ほらガキ。お前も他の奴らと一緒にここから出て、手当してもらいに行け。ちょっと顔擦ってるぞ」


「でも……」


「こいつなら大丈夫だ。ほら行ってこい」


「うん……」


 男の子はそうボスに促されると俺を心配そうに見てからジー達の方へと戻って行った。


「お! ツキが俺達に気付いてるぞ」


「本当だ」


「やっとかよ!」


「坊ちゃんのせいで全然気づかれなかったもんなぁ」


「あ……」


 そんな男の子の後ろ姿を見ていると、その視線に気づいたモーとレト兄、そしてジーズーが笑って俺に軽く手を振り上げた。他の捕まっていた女の人達も俺に気づくと、俺に向かってペコリとお辞儀をした。そのあとは戻ってきた男の子と共にモー達によって他の仲間達に預けられ、促され、瓦礫と土石の山を登り地上へと去っていった。


 そんな姿をボーっと見送ってから気付いた。


 ……さっきのお辞儀、もしかしてあの人達も俺に感謝をしたんっすか?







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

処理中です...