不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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83.わかんないことだらけっす…

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「はぁぁぁぁ……」


 テーブルに両肘をつき、その手に顔を伏せた姉さんはとても大きな溜息を吐いた。そして、顔を上げる。


「ツキちゃん。たぶんツキちゃんはツキちゃんが思っているよりラックのことが好きで未練に思っているはずよ」


「え? そんなことないっすよ?」


「……そこはもう少し悩んで答えてあげなさい」


 呆れた顔をする姉さん。フレイ君も同じような顔をしている。姉さんの後ろでは涙を拭うように目にハンカチを当てているレジヤさんもいる。


 ……え? なんで泣いてるんっすか? 流石レト兄のお父さん。涙の流し方そっくりっすね~。気づけば泣いてるところとかっす!


「……レジヤ。ツキちゃんの気が逸れるから泣くのをおやめなさい」


「申し訳ございません。あまりのラック様の憐れさについ……」


 憐れさ……?


「ねぇ、ツキちゃん」


「はいっす」


 レジヤさんの方から姉さんへと目を戻す。姉さんは真剣な表情で俺を見ていた。


「ツキちゃんはラックと恋人になる気はないと言っているけれど本当にそれでいいの?」


「……姉さん?」


 さっきと同じ質問だ。俺はそれでいいと言っているのになぜまた同じ質問をするのだろうか。俺はボスと恋人になる気はないのだ。


「いいえ。あなたはラックと恋人になりたいと思っているはずよ」


「……そんなこと思ってないっすよ?」


 もうとっくに諦めてるっす。


 なのに姉さんは首を横に振る。


「無自覚なら無自覚でよく自分の行動と気持ちを振り返って自覚しなさい。ラックのことが好きなのなら素直になりなさい。理由をつけて逃げて自分を納得させてはダメよ。後で絶対後悔するわよ? ……もし、どれだけ考えてもやっぱりラックと一緒になることができないと思うのなら、きっぱりとラックを振ってやりなさい(諦めないだろうけど)」


「…………」(諦めないですな)


「…………」(絶対に諦めないね)


「…………俺、振ったっすよ?」


 そう言うも、姉さんはまた首を横に振る。


「全然ダメよ足りないのよ。もっと強く言葉ではっきりと言ってやりなさい。ベタベタされるのも、噛み付かれるのも、嫌なら本気で嫌がって抵抗して拒絶しなさい。ラックならそれで(たぶん)止まるから(ちょっとだけ)」


「……拒絶……」


「ええ。あなたにはどこかあの子を受け入れている心があるの。だからラックはそこをついて好き勝手してくるのよ。いつもと同じ、慣れでとラックに隙を見せるのは完全にやめて、期待させるような態度もとらないで、本当に嫌なら今言ったことを完璧にやってみなさい。いいえ、やるべきよ。……ツキちゃん、もっとラックの気持ちのことも考えてあげて。あの子は本当にあなたのことが好きなのよ? 中途半端な愛は一番あの子を傷つけるだけ。今の考えが変わらないというのなら、本当にあの子のためを思ってあの子を拒絶すると言うのなら……私はあなたはラックから離れるべきだと思うわよ」


「離れっ……!?」


「ええ(ラックが許さないと思うけど)」


「…………」(無理ですな)


「…………」(たぶん嫌がっても逃げてもツキさんを連れ戻しに行くだろうなぁ)


「(……なんだか簡単に想像できて私何を言ってるのかしらって自問自答してしまいそう。文句を言うラックの幻聴まで聞こえてきそうだわ……) ……だからね、ツキちゃん。少しでもラックのことが好きで、離れたくないと思う気持ちがあるのならもう一度よく考えてみて。これはあなたのためでもあるの。ラックがどれだけあなたを想っているかはもう知ってるでしょう?(流石に無理矢理になってはツキちゃんが可哀想だわ。自分からラックの元へ行って欲しいの)」


「……はいっす」


 みんな真剣な顔をしている。姉さんの言葉はその一つ一つが俺の心に刺さりしょんぼりと肩を落としてしまった。


 ……ボスのことが好きだから、死んでほしくないからボスと一緒恋人にはなれないと思っていた。でも離れたくないから一緒にいたいと思っていた。……これは全部自分の気持ちで、ボスの気持ちなんて全然考えていないことだ。


 ……中途半端な愛はボスを傷つけるだけ。ボスのことを考えるならボスから離れた方がいい。本当にその通りかもしれないっす……。


 自分の気持ちばかりを考え、ボスに押し付け、俺はボスを拒絶ばかりしていた。愛してると言ってくれたのにそんなボスの気持ちに甘えていつも通りのボスに戻ることを願っていた。……離れたくはない。だが、不幸を考えればやはり恋人は無理だと思う。なら、姉さんの言う通り、ボスのことを考えるなら俺はボスから……


「…………」


「(やばいわ。このツキちゃんは)っ……ツキちゃん」


「……姉さん」


 俯いていた顔を恐る恐る上げ、姉さんを見る。姉さんは優しく微笑んでいた。


「キツイことを言ってごめんなさい。だけどそう結論を忙がないで。あなたが怖がる気持ちはよくわかるわ。でもね、私はツキちゃんとラック、二人に幸せになって欲しいと思っているの。そして、二人の仲を応援しているわ。だから、離れることを先に考えるのではなくて、ラックとのこれからを考えてあげて欲しいと思っている。……ツキちゃん、もっとラックを信用してあげて?」


「……信用? ……信用してるっすよ?」


 それはボスにも言われた言葉だ。ボスには信用も信頼も十分にしている。だから魔樹擬マジュギに捕まった時も冷静でいられたのだ。なのに姉さんはやっぱり首を横に振る。


「全然してないわよ。していれば悩むはずのないことで悩んでいるもの。まさか私もここまでとは思わなかったほどにね。これもさっきと同じ。よく考えなさい」


「…………コクン」


 一応頷くが何を考えるべなのか全然わからなかった。縋るように姉さんを見るも、もうこれ以上は何も言うつもりはないようでカップを手に取りお茶を飲んでいた。言葉の通り自分で考えろと言うことなんだと思うが、困惑で頭はいっぱいだった。


「……ふふ。ごめんなさいねせっかくの楽しい雰囲気を台無しにしてしまって」


 姉さんが苦笑する。そんなことないと頭を振った。


「じゃあ、仕切り直しましょうか。お菓子もまだまだたくさんあるからどんどん食べていってね?」


「いただきますっす……」


 姉さんに促されるままモシャリとクッキーを頬張る。美味しいが、頭の中は晴れない。胸にもモヤモヤとした感情が渦巻いている。


『信用しろ』


『もっとラックを信用してあげて』


 ……信用ってどういう意味なんっすかね……?


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