不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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82.え!? 

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「それでツキちゃん。さっきは何のお話しをしていたの?」


 手に持つカップをテーブルに置き、聞いてくる姉さん。俺は果物盛り沢山のケーキを頬張りながら首を傾げた。


「モグ? 何がっすか?」


 お菓子を食べ始めてしばらく経つが、俺のお腹はまだまだ全然入る。お菓子の方もなくなればすぐに違うお菓子が運ばれてくるから全然なくならない。変わらずテーブルの上にはお菓子があふれていた。ここは天国かもしれない。


「そのおでこの原因よ。玄関前でとっても楽しそうなお話をしていたでしょう? ラックと何かあったの?」


「……んーあったのはあったっすか?」


 色々と暴れちゃったり、ボスを振っちゃったりベタベタされたり噛まれたり……。


「へー……どうりで。ここ最近ラックの様子がおかしいからもしかしてと思っていたのだけれど、やっぱりツキちゃんと何かあったのね」


「ボスがっすか?」


 ピタリとケーキに刺そうとしたフォークを持つ手が止まる。ボスの様子がおかしい。姉さんの前でもそうなのか。どうおかしかったのだろうか。聞こうか? ……いや、


 やめとこっす。


 頭にニヤニヤとしたボスが浮かんだ。


 気にしたら負けっすよね。


 一人納得し、またケーキを頬張る。


 ん~♪ 甘くて美味しいっす~!


「……ラックのことなのに、おかしいって言ってるのにツキちゃんが何も尋ねてこない……。これは確実に二人の仲に何か進展があったわね」


「……進展かな?」


「♪」


「ほらツキちゃん。食べてばっかいないで何があったのかお姉さんにお話しして?」


「モグゥ?」


 んー


 今度は口にふんわりとした甘い焼き菓子を頬張りながら考えた。


 姉さんに話してもいいが少し話しづらい内容でもある気がする。だってボスを振り、なのにボスがベタベタしてきて噛んできて困っているというような内容だ。ボスの身内である姉さんにこんなことを話してもいいのだろうか? だが、ボスはイーラさんやモー達に続き、姉さんにも弱い。どれだけ姉さん相手に傍若無人なツンとした態度を取っていたとしてもだ。なので、話して、それで姉さんからもボスに注意してくれたのならボスの行動もまた大人しくなるかもしれない。そう思って話すことに決めた。


「実はっすね――」


 ーー


「――で、最近のボスはしょっちゅうくっついてきて変な触り方ばっかりしてくるんっすよ。さっきも頬っぺた噛まれたっすし姉さんどう思うっすか?」


「…………」


 まだまだあるお菓子の山を前に少し休憩をとお茶を飲む。


「……流石愚弟。おっさんみたいね」


「? ボス、老けてはないっすよ?」


「そう言う意味ではないのよツキちゃん。言動がエロ親父そのものだってことよ」


「エロ……」


 まさか姉さんの口からそんな言葉が出てくるとは思わず、目をパチクリさせてしまう。言葉の違和感が半端ない。


「……ダメね。この子全く意味がわかっていないわ」


「うんうん」


「?」


 姉さんがとてつもなく呆れた目で俺を見てくる。


「はぁぁ……ラックの様子からツキちゃんとの仲が進展したのかと思っていたらこれは逆に後退しているのではなくて?」


「うんうん。ボスさんはレーラ……様にはどんな様子だったんですか?」


「……気持ちが悪いほど機嫌が良かったわよ? はぐらかされたから理由まではわからなかったけどね。何を聞いてもずっとニヤニヤしているし……。まぁ、ラックがそうなる原因は大体ツキちゃんだから何か進展があったのかと思っていたのだれけどその割には何も言わないし、レトも苦笑するだけだったからおかしいなとは思っていたのよ。……ほんと、ツキちゃんの話を聞いたらどうしてラックがあそこまで自信ありげに笑っていたのか不思議だわ……」


「あ~」


「あまりにもニヤニヤ気持ち悪かったから仕事量を増やしてあげたのだけれど、増やしてよかったわね」


「でもその分癒しって言って余計にツキさんに絡みに行ってましたよ。アジトの方に襲撃があってからはさらに抱きつく頻度が酷くなりました」


「チッ」


 姉さんが舌打ちする。


 ……フレイ君、さっきまで姉さんのこと苦手だって言ってたっすのに普通に話してるっすね。お菓子効果っすか?


「……ねぇツキちゃん。ツキちゃんは本当にこのままでいいの?」


「え? 何がっすか?」


 お菓子が持つパワーについて考えていると、姉さんに話を振られた。


「そのままの意味よ。あなた達の元へ魔物が送られたことは聞いたわ。その時ツキちゃんが攫われかけたことも。……ラック、とてもツキちゃんを心配していたのよ? 助けられてよかったって、商人共絶対許さないって闘志を燃やしてたわ」


「そうなんっすか……」


「ええ。それだけラックがあなたを大切に思っているということよ。……ツキちゃんはラックを振った。それはラックを守りたいから。それはわかったけれど、でも、本当にそれでいいの? ラックと恋人になりたいとは思わないの? 後悔はしないの?」


 矢継ぎ早に言われた言葉に少し目を落としてしまう。


「…………後悔は……しないっすよ。俺にはやっぱりそういうのはいいっす」


 姉さんの言う通り、ボスが俺を心配し、大切に思ってくれていることは知っている。だが、俺は厄病神なのだ。今ボス達の側に居させてくれていることすら奇跡に近く、俺は今がすごく幸せなのだ。だからこそ、ボスとそういう関係になるのはとっくの昔に諦めている。これ以上を求めてしまえばこの幸せが崩れてしまうかもしれない。下手なリスクは犯せない。


「……私は、父があなたに犯した罪の分もあなたにも幸せになってほしいと思っているのだけれど?」


「充分幸せっすよ?」


 姉さんもしかして俺にも罪悪感、感じてたんっすか? 姉さんは関係ないっすのに。


 パッと笑えば今度は姉さんが目を伏せてしまう。そして顔を上げると――


「……そう。なら、今度ラックのお見合いをセッティングしてもいいかしら? あの子も今はあんなんだけれどこれから先どうなるかはわからないでしょう? 私も、いつまでもこの椅子領主の座に座り続けるつもりなんてないし、ちょうどお嫁さん候補の子達の絵姿もあるからこの後ラックに見せてあげましょうか」


「え!?」


 ボスがお見合いっすか!?


「クス……あら嫌なの? ラックだってそろそろいい年……「俺も見たいっす!」……え?」


 沈みかけていた気持ちが一気に浮上した。ボスのお嫁さん候補。とても興味がある。まして絵姿があるというのなら絶対見てみたい。もしかしてその人が本当にボスのお嫁さんになる可能性だってあるのだ! 絶対に見たいだろう!


 どんな絵っすかね~優しそうな人なら嬉しいんっすけどね~。ドキドキっすね~!


「……なんだかラックに同情してしまいそうだわ」


「……左様ですな」


「……ですね」


「姉さんいつ絵姿見せてくれるっすか? 今っすか?」


「……ないから無理よ」


 ゲンナリとした顔で、投げやり的に返された。


 あれ? さっきあるって言わなかったっすか?



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