不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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52.別っすね!

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 あ゛あ? って怖っわい声出すっすね……。


 俺はボスみたいな男になりたい。ボスみたいにかっこよくて頼りになって「ツキさんすごいです! 僕もツキさんみたいになりたいです!」ってフレイ君に憧れるような男になりたい。


「……ツキ、てめぇはほんと俺を持ち上げて落とすのが好きだよなァ?」


「え? ボ、ボス?」


 怖い声に引き続き、想像以上にドスの利いた声を出すボス。俯くボスから見える口元は弧を描いているように見えるがこれは……


 お、俺なんか怒らすことしたっすか?


 気合いに満ち溢れていた状況から一変、怖くて震える俺に対してボスもぷるぷると震えている。こう怒りの赤黒いオーラがボスから湧き出ているような感覚。いや、幻覚が見える。


 恐ろし怖いっす……っ。


「お、俺ボスのこと持ち上げてないっすし、落としてもないっすよ?」


 そんな腕力俺にはないっすよ?


「っそう言う意味じゃねぇよ、あとボスって呼ぶなっつってんだろ!!!」


「ヒィっ!?」


 あまりの迫力に涙が出てくる。いつもとちょっと違うような怒り方だ。さっきまでそんな雰囲気なかったというのに一体どうしたのか。


「……っ」


 わ、わからないっすっっ。


 考えてもわからなくて目にうるうると涙がたまる。そんな俺を見て追い討ちをかけるかのように「チッ!」とボスは大きな舌打ちをし、「あ゛ー!」っと自分の頭をガシガシ片手で掻いた。そんなボスにとうとう涙が決壊し、それでも怒るボスを前に我慢しなければと我慢泣きするような泣き方をしてしまった。


「~~っゔぅ~~っっ」ポロポロッ‼︎


「~~っ! あ~!! くそ可愛いな!!」


「!?」


 そんなわけのわからないことを言いながら、ボスが俺の方へと倒れこんでくる。そのまま俺はなすすべもなくボスに押し倒されてしまった。


「ふっ……うぅ……ボス?」


「お前は……っほんと俺のツボ押さえてんなァ」


「いひゃいっしゅ!」


 ボスは右手で俺の涙を掬うと、そのまま頬へと移動させ俺の頬っぺたを引っ張った。今のボスの顔は怒っているのか笑っているのか我慢しているのか焦っているのか微妙な余裕のない表情だ。


「……なぁツキ。お前ほんと生意気だな?」


「にゃにがっしゅかっ?」(何がっすかっ?)


「全部がだよ。何が甘えんのをやめるだ。ふざけんなよ俺の癒し。……なぁツキ、もういいだろ? そろそろいい加減はっきりさせようぜ」


「?」


 何をはっきりさせるんっすか? 真面目な話なら座って聞いた方がいいと思うっすよ……?


「今日は久しぶりに邪魔もいねぇ二人っきりだ。ムカつく同情に今日くらいあいつらも空気を読んでこのままにしてくれんだろ。……けど、今日が終わればお前、またフレイにくっついてこんなチャンスもなくなるだろ?」


「ボス……?」


 ボスの手が俺の頬から離れる。身体を起こしたいのに、俺の顔の両側にボスの手があって、足も同じようにボスの足が置かれているから起きるに起き上がれない。そんな状態なのにボスは真剣な表情で俺を見つめる。


「なぁ、ツキ」


「はいっす……?」


「お前俺のこと好きだよな?」


「? 好きっすよ?」


 いきなりの「俺のこと好きだよな」発言に目をパチクリさせてしまう。でもとりあえず素直に好きだと返した。

 
 だって当然っすよね?


 今はちょっと情緒不安定っぽいボスだが普段はかっこよく、優しく、頼りになる、尊敬できるボスなのだ。そんな人を好きじゃないわけがない。むしろ好きにならない要素なんてない。ボスのことはみんな好きだ。でもなんで急にそんなことを聞いてくるのか……


 ……あ、もしかしてあれっすか? 俺がボスにはもう甘えないとか言ったっすから、俺は頼りないのか! みたいに思っちゃったのかもしれないっすね。あ~だから怒っちゃったんっすね!


 そう考えれば辻褄が合うような気がした。ずっと甘えてきていた相手が急に甘えない発言をすれば何故かと思うし、何故かと思えば自分に不満があるからかと考えるかもしれない。じゃあこの「俺好きか」発言はつまるところ「俺は頼りないのか」とのこと。


 今回俺がボスに甘えないと決めた理由は、ボスに甘え過ぎていたことへの自覚と立派な男になるための決意。だが、言葉足らずな俺のせいでボスは自分が頼りないからだと勘違いし、そのプライドを傷つけてしまったのだろう。……となれば俺がやるべきことは一つ。


 ボスへの誤解を解いて、ボスをいっぱい褒めて傷ついたプライドを立て直してもらえばいいんっすね!


「ボ――」


「……おい、違うからな? 変な方向にまとめんな」


「?」


 あれ? 違うんっすか?


「あれっすよね? ボスの傷ついた自尊心を修復すればいいんっすよね?」


「は? 何言ってんだお前? 何がどうなってそうなった。俺が聞いた『好き』の意味はそう言う意味じゃねぇよ。お前が俺のことを恋愛感情で好きかってことを聞いてんだよっ」


「恋愛感情……?」


 ……恋愛……恋愛感情の好きってことはボスのこと愛してるかってことっすよね? 愛……。俺がボスを……? そんなの……。………………。


 ボスを見上げれば、ボスはじっと真剣な表情で俺を見つめ、俺からの言葉を待っている。だから――


「…………んー、それはないっすね」


「は?」


 目を見開くボスに、ニコリと笑って言った。


「ボスのことは好きっすけど恋愛感情の好きとは別っすね!」



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