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41.復活っす!
しおりを挟むそれから三日後。
「完・全・復・活・っすぅ!!」
ババーン! と両手を上に広げる。三日。ボスから頭を打ったのだがら三日は療養してろと言われ、動き回り、お仕事したいのを我慢してなんとか頑張って休んだこの三日間。ベッドから抜け出す計画を立てボスに怒られるという出来事もあったが、身も心も完全に復活した俺!
もう! たかがたん瘤くらいで三日も休んどけなんてボスは大袈裟なんっすよね! 動くな、立つな、座るなって三日もあって無理に決まってるっすし、怪我はもう平気なんっすからお仕事してもいいと思うっすのに! あと、ただ頭に思い描いただけの脱走計画を察知して潰そうとしてくるのもほんとやめてほしいっす!
色々と、ボスへと言いたい文句がたくさんある。だが、そんなものもうどうでもいい。今日という日で窮屈な日々も終わり、俺は今からお仕事に復帰しなければならないのだ。それと同時に今日はボスから罰を受ける日でもある。些事なことなど気にせず気合いを入れなければならないだろう。
「さぁボス! なんでも言って下さいっす! 何やればいいっすか! なんでもやるっすよ俺!」
「「「…………」」」
ボスやレト兄、イーラさんを前に、フングッ! とあまりない力瘤しを作った。話に聞けばフレイ君は勝手に抜け出して街に行った罰として、元はフレイ君を含む三人部屋だった部屋が五人部屋へと変わり、休む暇がないほど防具の手入れや畑仕事、調理、解体やらあちこちの雑用やらなにやらをやらされて働かされているらしい。
俺も早く参加しなきゃっす!
ふんすっ! っと気合いを込めるも、ボス達みんな呆れた顔や苦笑するだけで何も言わない。
「ボス?」
「……気合い入れてるとこ悪いがお前の罰は謹慎処分で一週間部屋から出ないことな?」
「…………え? なんでっすか?」
ボスの言葉にきょとんとする。何故フレイ君は働いているのに俺は謹慎なのか。
「もちろん反省文も書いてもらう」
「っそんなのお咎めなしと同じようなもんじゃないっすか!」
ダンっ! と足を踏み鳴らしボスに抗議した。
俺はもう十分反省してるんっす! 謹慎だなんてただ部屋にいるだけっすよね? 反省文書くだけっすよね? 反省文書き終わったらなんにもやることないじゃないっすか! そんなのお咎めじゃなくてただの休日と同じっす!!
「……んなこと言ってもお前働きたいんだろ?」
「そうっすよ! フレイ君みたいにたくさんお仕事下さいっす!」
続けてボスに抗議するも呆れた顔で「あほか」と言われた。
「仕事欲しい奴に仕事やっても意味ねぇだろ」
「!!!」
た、確かに!!
衝撃が走った。そうだ、確かにボスの言う通り、仕事が欲しい人に仕事を振ってもそれはもう罰ではないご褒美だ。
「っで、でも……」
しょんぼりと落ち込んで、俺は床にへたり込んでしまう。
……せっかく頑張るぞって気合い入れたっすのにまた閉じ込めっすか? 今度はベッドから部屋っすか……。行動範囲広がるっすね……。でも俺もフレイ君みたいに……あ、もしかして……
「……俺……邪魔だからっすか?」
ボスを見上げる。フレイ君みたいに皿洗いも、掃除も畑仕事も防具の手入れも俺は何も上手くできない。失敗ばかり。壊してばかり。だから仕事を任されるのではなく邪魔だからと部屋に閉じ込めるのかもしれな――
「あほ。んなわけねぇだろ」
「あうっ!」
俺のブルーな思考を断ち切るよう、ボスが俺のおでこをパシッと叩いた。そして、俺と目線を合わせるようにしゃがみこんだ。その目になんとなく優しさがあるような気がして、一縷の望みが灯る。
「失敗したとしても、お前はいっつもしっかり頑張ってるだろ」
「っボス!」
「理由はさっき言った通りで、邪魔だからとかじゃねぇよ。だから……――文句言ってないでさっさと行け」
「!? ガーン!! ボス!!」
淡い希望を跡形もなく消し去るほどの無慈悲な宣告。瞳の優しさも消え失せ、ショックを受ける俺をボスは鼻で笑った。
「んなショック受けるなら罰の意味がありそうだな。レト、早くこいつを部屋に連れて行け」
「そんなボス!」
「ほら、ツキ行くぞ」
「ツキ君またね」
「じゃあな」
「ボスぅぅう!!」
いつの間に背後にいたのか。レト兄に両脇を持ち上げられ、そのままズルズルと部屋の外へと引き摺られてしまう。
「希望もたせて落とすなんて酷いっすよー!!」
そうしてやっと訪れた俺の短い自由は終わりを告げた。
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