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39.どうしたんっすかね?
しおりを挟む暗い外からは引き続きザァーザァーとした雨の音が聞こえる。本当はボスと一緒に寝るということに不安に思うことは少しあるが、それはもう随分昔の話で今のボスならば大丈夫だろう。
今ちょっと弱ってるっすからね。ボスが一緒に寝てくれるって言うんならお言葉に甘えたいっす。
「はいっす」
モゾモゾと動いてボスが入ってきやすいようベッドにスペースを作った。そして、どうぞとそのスペースを叩いた。
「………………え? まじか?」
「?」
場所を作ったのにボスは口をポカンと開けたまま一向に来ない。
「ボス?」
「え? あ、いや、……いいのか?」
「? 何がっすか? あ……まだお仕事残ってるっすか?」
今が何時かはわからないが、外は真っ暗だ。ボスは日によっては遅くまで仕事をしているしまだ仕事が残っているのかもしれない。それか、思っているよりもまだ早い時間で寝る時間ではないのか。
「もしそれなら……」
「いや全く大丈夫だ。寝るか。一緒に」
ポカン顔から一変、いい笑顔を浮かべたボスは嬉々としてベッドの中に入って来ようとする。だが――
「「っ待て!! お前ナニするつもりだ!!」」
「?」
慌ててレト兄とイーラさんがボスの肩を掴んで止めた。そんな二人にボスは鬱陶しそうな目を向ける。
……ナニ?
「ああ? 別になんもしねぇよ」
「本当だなラック。信じていいんだな? 信じるからな? ほんっとうに信じるからな?」
「ラック本当にダメだよ? 言っとくけどツキ君怪我人だから。頭打ってるんだからね? ほんっとうに手を出しちゃダメなんだよ? 動かしちゃダメなんだよ? 信じていいの? 大丈夫なの?」
「……てめぇらの中でどんだけ俺は信用ならねぇ奴なんだよ。出すか」
真剣な表情で訴える二人にボスの顔が引き攣る。二人がボスを名前で呼ぶということはそれだけ切羽詰まる話をしているのだろうか。
でもなんの話してるんっすか?
「……本当だろうな?」
「いや、そんな簡単に信じちゃダメだよレト。あのボスだよ? ツキ君にお預けばっかり喰らわされてるボスだよ? 一緒に寝るなんて何年ぶりかなんだよ?」
「無理か……」
どこか遠い目をするレト兄に、ボスはイラッとした表情を浮かべた。
「無理じゃねぇよ。なんもしねぇって言ってんだろ? 流石の俺も怪我人相手に手ぇ出すほど馬鹿じゃねよ。わかったらさっさと部屋から出て行け。ツキの寝る邪魔になんだろうが。……イーラもな」
「「アウト!!」」
「っうっせぇ黙れ!! ボスの命令だぞ!? 素直に従えよ!」
「従えるか!! やっぱり無理だツキと一緒にだなんて! 俺達にイーラまで追い出して一体ナニしようと企んでんだ!!」
「ここは医務室だよ! 僕のテリトリーなんだよ!? 出ていくわけないし、変なこと企まないでよ!」
「なんも企んでねぇよ!!」
「「怪しいんだよ!!」」
「なんでだよ!!」
「?」
叫び合う三人。ボスはそのまま二人に部屋の隅へと連れて行かれ、ワーギャーと何かの話し合いを始めてしまう。
「一体どうしたんっすかね?」
「……さぁ?」
首を傾げながら、フレイ君と共に話し合いが終わるのを待った。
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