不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

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38.俺のせい、それは当然っす

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 フレイ君の目に浮かぶ涙にへにゃりと眉が下がる。こんなに泣いて、フレイ君にはびっくりさせてしまったようで申し訳ない。


 今回のことは全て俺の不幸体質が招いたこと。悪い奴らに見つかったのも、花瓶が落ちてきたのも俺のせい。それで怪我をしたのだからやっぱりこれも俺のせいだ。だからフレイ君は何も悪くない。それより……


「フレイ君……俺の方こそごめんっす。最後の花瓶、もうちょっとでフレイ君に……っ」


 あの時、上から落ちてくる花瓶に気付けていなければ、フレイ君に当たっていた。それを思い出し、身体が恐怖に震えた。


 ……フレイ君、喜んでたっすのに……。


 俺がこんな体質じゃなければ、あんな奴らすぐに撒いて逃げられたのだ。そもそもフレイ君の正体だってバレていなかっただろうし、あんなにも逃げ回る必要もなかったはずだ。他にもスリとか知らない人に体当たりされたり、飲み物かけられたり暴走馬から逃げたり、団体さんに列から跳ね飛ばされたりとか色々なかったはず。せっかく街に行ってあれだけ喜んではしゃいでいたのに、フレイ君には嫌な気持ちや怖い目にたくさん合わせてしまった。全部全部俺の体質のせいで、俺のせいで……


「……本当に……巻き込んでごめんっす」


「ツキさん……」


「……おい、あほツキ」


 目を下に落とし、落ち込んでいると、ボスにムニーっと上を向くように両頬をつねられ引っ張られた。


「……ボ、ボヒュ? い、いひゃいっしゅ!」


 しかも初めは軽くつねっている感じだったのに、だんだん指先の力が強くなっていった。


「お前は馬鹿か?」


「ひぇえ?」


「なんでお前だけが悪いって話になってんだよ。お前の体質についてはこいつフレイだって知ってたことだろ?」


「れ、れみょ……」


「今回起こったことについてはフレイのお前への体質への認識の甘さと対応が悪かったんだよ」


「ひょんなことは……」


「あるだろ。フレイから軽く話は聞いたが小さいのも合わせれば俺達と行動する三倍以上の問題が起こったんだろ? 俺らと街に行った時は両手で足りるくらいしかねぇのに。それがその証拠だろうが」


「…………」


 ……確かにそうっすけど……。


「だからツキ、お前はなにも悪くない。……いや、黙ってアジトから抜け出したのは悪いが……――一番悪いのはそもそもの元凶。抜け出しを考え実行したそいつだ」


「……すみません」


 ジロッとボスから睨まれたフレイ君は身を揺らし、小さくさせた。それを見て、俺は眉を下げ、またボスに視線を戻した。


「……ボス……でも……」


「でもじゃねぇよ。……お前がフレイのことを気に入ってんのは知ってるけどな、論点をずらすな。そもそもの話、フレイが街に行きたいっつって無理矢理実行しなきゃ今回のことは起こらなかったんだ。お前がさっき頭に挙げ連ねたであろう不幸も起きなかった。それはわかるだろ?」


「……はいっす」


「じゃあそれが全てだ。――あと、今回のこと、タダで済ます訳にはいかないこともわかってるな?」


「……はいっす」


 肩を落とし頷く。聞けば俺達がいなくなった後、ボスやアジトにいた仲間達は総出でアジト内(家、外両方)や周辺の山、森を中心に俺達を探し回り、わざわざ街にまで走って見に行ってくれた仲間達もいたようだ。フレイ君が怪我をした俺を転移で連れ帰ってきてくれたため、すれ違いになってしまったようだが、俺達が街にいて食べ歩いている間に、大変な騒ぎになってしまっていたようだった。


 ……基本、自由な組織であれど黙ってアジトから抜け出し、いなくなり、これ程までにボス達に迷惑をかけてしまったのだ。組織との名の通りここまでの勝手は許されず、怒られるだけで済むことではないことはわかっている。だが、ボスはすぐに何かを言うわけではなく一度息を吐き出すと、そっと俺の頭に手を置いた。


「……とりあえず今日のところはもう休め。たん瘤で済んだと言っても打ったのは頭だからな。話は明日以降また聞く」


「はいっす……」


 ……あんだけ痛かったっすのに俺、たん瘤で済んだんっすか?


 血が出ていると男達が言っていたような気がするのだが、俺の気のせいだったのだろうか。内心首を傾げるもお仕置きへの不安が勝り、おずおずとボスを見上げた。


「どうした? なんか心配事でもあんのか?」


「……お仕置き痛いっすか?」


 悪いことをしたというのはわかっているけれど、お仕置きは怖い。恐る恐る尋ねた俺にボスは苦笑する。


「俺がお前にんな痛みを与えるとでも? お仕置きだからってそんなことしねぇよ」


「……よく殴るっすよ?」


 馬鹿ツキ! って言ってよくボス俺の頭に拳骨落とすっすよ? あれ痛いっすよ?


「……それはまたちょっとちげぇだろ」


「……そうっすか」


 ……違うっすか……。


 微妙な顔をするボス。でも俺はホッとした。今はちょっとナイーブになってしまっているからか、お仕置きと言われると昔飼われていた時にされたことを思い出してしまう。


「じゃあフレイ君にも痛いことしないっすよね?」


 一応念のためにフレイ君のことも聞いてみた。するとさっきとは違い、ボスはスッと俺から目を逸らした。


「…………………………当たり前だろ」


「「……ため長いな」」


「うるせぇ」


 レト兄とイーラさんが呆れた目をボスに向けた。少し不安だが、ボスがしないと言ったのならしないだろう。


「ほら、もういいだろ? 早く寝ろ。……それとも一緒に寝てやろうか?」


 微妙な顔をする俺にボスは揶揄うようニヤリと笑った。それにいつもなら「いらないっすよ!」と言うところだ。そう、言うところだが……


「……はいっす」


「……………………は?」




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