不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
上 下
17 / 150

16.やっぱりいい子っす!  

しおりを挟む



 結局モージーズーの三人は渡すものを渡せばさっさと去って行ってしまった。


「……初めようっすかフレイ君」


「はい。……しっかり覚えて皆さんの役に立てるように頑張ります!」


「! いい子っす!」


 腕輪を手に付けたフレイ君は小さく両手に握り拳を作って意気込む。そんなフレイ君に一通り感動した後、俺は今いる建物の最上階となる三階から順に案内と組織について簡単な説明をしていった。


 この狼絆の傭兵団は大体六十人程度の人数で構成された組織で、フォレスティア領主に雇われ、領主邸がある主の街から街道を歩いて約一日半程度の場所にアジトがある。近道を使えば行き方により半日からその半分の時間で街に行くことも可能だ。フォレスティア領主から山辺近くの土地を貸してもらっているからそこでみんな暮らしているのだ。ちなみに暮らしている人達の年齢は下は一桁から上は六十代程。


 今、ボスや俺達が住んでいるこの建物は結構大きく、三階建てのみんなの宿舎みたいなものになっている。もちろんこの外に家を建てて住んでいる仲間達もいるが、このお家には食堂や医務室も、ボスが臭いと言ったから大きな浴場だってあるし、一階には遊戯室だってある。そこでみんなでカードゲームやボードゲーム、格闘技などをして遊んだりもする。この建物の裏には訓練所代わりの空地もあって、この間こっそりボスのあとをついて行った罰に組み手の稽古をさせられ酷い目に遭わされた。


「……ふぅ……――で! 改めてここが物干し場で、その向こうにある花壇は季節ごとに庭師のおっちゃんが花を植えてくれるっすよ!」


「…………庭師?」


「そうっす!」


 案内を開始した建物の横手の物干し場。そこではいい天気の空の下、そよそよと風に揺れてシーツや衣服が気持ち良さそうにそよいでいた。こういう日は簡単に魔法に頼らず天気干しするに限るらしい。そんな洗濯物達の向こうでは白やピンクやオレンジといったお花も可愛くそよいでいる。そんな光景を、フレイ君は建物の壁にもたれて座り、力無く眺めていた。


「……フレイ君、大丈夫っすか?」


 元気ないっすね……。


 フレイ君に近寄り、窺うようにしゃがみ込んで尋ねた。家の中からここまで案内するなかで、開いた窓から入り込んできた鳥の大群と格闘して追い出したり、糞や羽まみれになった廊下を綺麗に掃除して、その道具を片付けようとしたところで階段から滑って転んで俺が手放してしまった箒が後ろにいたフレイ君の顔面スレスレに飛んでいってしまって二人で固まったりした。さっきはさっきで外に出て物干し場に案内にきた瞬間、突然吹いた突風により飛ばされたシーツが俺とフレイ君に絡みついて取れなくなり、二人揃って転んでコロコロシーツに絡まりながらもがいて、とったらとったで泥だらけになってしまったシーツを二人で洗って干してと今ここだ。……少しフレイ君には大変だったかもしれない。


「……はい、すみません。話には聞いていましたけど実際体験してみるとすごいですね……」


「へへ/// そうっすか?」


「褒めてはいないです」


「……ごめんっす」


 しょぼんと肩を落として謝った。軽く俺の体質についてフレイ君には話しはし、大丈夫だとは言われていたが身をもってフレイ君は理解した様子だ。疲れ切ったフレイ君の様子に止めどない申し訳ない気持ちが湧き上がってくる。


「……あの、本当にごめんっすね。俺のせいで疲れたっすよね……。えと、家の中に戻るっすか? その、……お世話役、交代してもらうっすか?」


 俺やボス達には慣れたものだがフレイ君は今日が初めてだ。フレイ君の疲れようにもしかしてもう俺と一緒にいるのは嫌だと言われてしまうかもしれないと思った。


 ……でもそれも仕方がないっすよね。俺、こんなんっすから……。


 悲しさ半分、諦め半分に落ち込んでいると……


「……ツキさん。そんな悲しそうな顔しないで下さい」


 そんな言葉におずおずとフレイ君を見上げれば、フレイ君は苦笑した。


「確かにちょっと大変だなとは思いますけど大丈夫ですよ。ツキさんといるのとても楽しいですから、ツキさんでお願いします」


「っフレイ君!」


「だからもっと色々と教えて下さいね、先輩」


「!」


 先輩! お兄ちゃんとは違ういい響きっす!! なんていい子なんっすか!!


「はいっす! 任せて下さいっす!」


「ふふよろしくお願いします!」


 あーやっぱりフレイ君の微笑み癒されるっす!


 しょんぼりした気持ちから一転俄然やる気が湧いてきた。


「じゃ、じゃあ次行こうっすか! あ、でももうお昼前っすからご飯食べて、次は外の案内をするっすよ!」


「はい!」


 それから俺達は一旦俺の部屋に戻り、汚れて汗をかいた服を着替えた。フレイ君の服はまだないため俺のおさがりを渡している。


「……ツキさん持ってる服多いですね」


「はいっす。すぐ破れたりしてボロボロになっちゃうっすから」


 いけるところまでは頑張って繕うんっすけどね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
 離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。  狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。  表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。  権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は? 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう 【注意】※印は性的表現有ります

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

処理中です...