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18、冒険者たち

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 レイラの言葉通り、誰かがこちらにやってくるのが分かる。
 茂みをかき分けてくる音と、話し声が聞こえてきた。

「おい、さっきの咆哮を聞いたか?」

「ああ、気をつけろよ。ドリルホーンが吠える声だったが、凄い迫力だった。ありゃ、デカいぞ」

 男性二人の声がした後、女性の声が続く。

「そうね。やっぱりレイラと関係があるのかしら? そもそも、あんなところに家があるなんて。それにあの倉庫の壁に書かれてたのはレイラが書いた文字に間違いなかったわ」

 それに対して、先程の二人の男性が答えるのが聞こえてくる。

「確かにな。レイラに何かなければいいんだが……」

「ああ、レイラの事だから心配はないとは思うけどな」

 その時、少し離れた場所にある茂みをかき分けてその声の主である三人の人影が現れた。
 あの咆哮を聞いて警戒しているのだろう。
 皆、武器を手にしている。
 一人は背が高くがっしりとした体形で、大きな斧を手にした戦士のような雰囲気の短髪で栗毛の男性。
 そして、その横で剣を手に警戒したように周囲を見ながら姿を現したのは、背は高いが少し細身の剣士風でグレーの髪をした男性だ。
 二人に守られるようにして最後に姿を見せたのは、恐らくは同じパーティーの後衛なのだろう、杖を手にした清楚な感じのヒーラー風の衣装の女性。
 髪の色はエメラルドグリーンである。
 三人とも俺たちより少し年上で、十七、十八歳ぐらいだろうか。
 レイラは銀狼の姿から獣人の姿に戻ると、彼らに向かって手を振った。

「ジェイク、キース、アリシャ! 遅いじゃない、待ちくたびれたわよ」

 その声を聞いて、三人は一斉にこちらを見た。
 そして、レイラの傍に倒れている巨大なドリルホーンを見て目を丸くした。

「ちょっと! どういうこと、レイラ!?」

「おい、待てよ……そのドリルホーン、もしかしてスカーフェイスじゃないのか?」

「ああ、ジェイク。あの顔の傷、間違いない!」

 剣士風の男性が、斧を手にした精悍な男にそう言った。
 どうやら、戦士風のがっしりした人がジェイク。
 剣を手にしているのがキース。
 そして、ヒーラーらしき女性がアリシャのようだ。
 レイラは一匹狼だって言ってたから同じパーティーではないんだろうけど、とても仲は良さそうだ。
 彼らがレイラの仲間の冒険者に違いない。
 三人はこちらに駆けよりながら、興奮したように言う。

「やったな、レイラ!」

「ああ、こいつには金貨10枚の懸賞金がかけられてるからな! それにそのデカい角、高く売れるぞ」

 そして、アリシャと呼ばれた女性は俺たちとククルを見て言った。

「それに、その子がククルでしょ? どうやら、仕事もきっちり果たしたみたいね。でも、レイラ。その二人は?」

 そう言って彼女は首を傾げた。
 それを見てレイラは腰に手を当てて笑う。

「紹介するわ。この二人は、ユウキとナナよ。今回の仕事が上手くいったのは彼らのお蔭。それに驚くわよ。スカーフェイスを倒したのは私じゃないわ、ユウキよ。それもたった一人でね」

 レイラの言葉に三人は顔を見合わせる。

「おい、冗談だろ? レイラ、お前なら分からなくもないけどさ」

「嘘じゃないわよ、キース。見せたかったわ、ユウキがスカーフェイスの角を踏み台にして、頭上から見事に攻撃をする姿をね」

「ほんとかよ? こんなとんでもねえ奴の角を踏み台って、あり得ねえだろそんなの!?」

 最初は、信じられない様子だった三人も腰に手を当てながらそう話すレイラの言葉に嘘がないと分かったのか、驚きの表情でこちらを眺めている。
 だが、その後すぐにジェイクが俺に手を差し出した。

「詳しい事情は分からないが、とにかくレイラが世話になったみたいだな。ユウキって言ったか? 感謝するぜ、よろしくな!」

 精悍で豪快な笑みを浮かべる彼の手を俺は握る。

「こちらこそよろしく。ジェイクさん」

「はは、ジェイクでいいさユウキ。その方が気楽でいい」

 その言葉に、キースとアリシャも頷くと手を差し出す。

「私はアリシャよ。よろしくねユウキ」

「俺はキースだ。よろしくな、ユウキ」

 差し出された手を順番に握って俺も挨拶を返す。

「よろしく、アリシャ、キース!」

 レイラの仲間だけあって、良さそうな人たちだ。
 そんな中、ジェイクとキースがナナの方を眺めながら少し顔を赤らめている。

「お、おい……何だよあの子、凄く綺麗な子だな」

「あ、ああ。まるで妖精みたいだ。おい、キースお前から挨拶しろよ」

「は? 馬鹿言うなって、ジェイクお前が先にしろよな」

 どうやら、二人ともナナを見てどちらが先に挨拶するかを相談しているようだ。
 そんな中、アリシャが二人を呆れたように眺めながらナナに手を差し出す。

「まったく、二人とも大きな体して情けないんだから。ナナ、私はアリシャ。よろしくね!」

 ナナは頷くと答える。

「よろしく! アリシャ」

 それを見てジェイクとキースも我先にと急いで後に続く。

「お、俺はジェイク!」

「俺はさキースっていうんだ!」

 それを見てアリシャがまたふぅとため息をついた。
 ナナと握手をする二人。
 そんな中、アリシャがククルの頭を撫でている。

「貴方がククルね。良かったわ無事で」

「はう! ユウキお兄ちゃんとナナお姉ちゃんが守ってくれたです! それにレイラお姉ちゃんが悪者をやっつけて、ふわふわもこもこのベッドになってくれたです!」

 それを聞いてアリシャが首を傾げた。

「レイラがベッドに?」

 それを聞いてレイラがこほんと咳ばらいをした。
 そして、巨大なドリルホーンを眺めながら言った。

「それにしても、思わぬ収穫ね。角はとても高価だし、スカーフェイス討伐の証拠として持っていくとして、後はどうしようかしら?」

 アリシャが頷く。

「そうね、これだけ大きな角なんてスカーフェイスぐらいだろうし。角さえあれば、私たちも討伐の証人になるし報奨金はもらえると思うわ」

 それを聞いてジェイクとキースが顔を見合わせた。

「おいおい、まさかこんな立派な得物を角だけとって、ここに置いて行っちまうのか? 他の獣に食い荒らされちまうだけだぞ」

「ああ、ドリルホーンの肉は普通の猪よりもずっと旨いからな、高級な食材だ。これだけの大物となれば、解体して近くの村にでも売りさばけばかなりの金になるぞ?」

 それを聞いてレイラは少し考えこむ。

「確かにもったいないわね。あの悪党たちを運ぶのは少し遅れても問題ないし。ねえ、ユウキ貴方の得物よ、もし構わないならそうしたいんだけど」

 俺は彼らの言葉に頷いた。

「分かった。俺にはよく分からないけどさ、せっかくの得物だもんな。レイラたちに任せるよ」

 ジェイクとキースはそれを聞いてハイタッチする。
 そして俺に言った。

「話が分かるぜ、ユウキ!」

「せっかく倒した得物を、無駄にする手はないもんな」

 そんな中、ククルのお腹がまたくぅと鳴く。

「はう……ククル、お腹減ったです。さっきのきのこ食べたいのです」

 手に提げた木製のカバンの中にあるマルルナタケを見つめるククル。
 そういえばククルがお腹を鳴らしてたから、食材探しの為に森に入ったんだもんな。
 さっきは怖くて忘れていたんだろうけど、安心して自分が採ったきのこのことを思い出したのだろう。
 レイラはそんなククルの頭を撫でると言った。

「そうね。まずは私たちの朝食だわ。ククル、美味しいきのこが乗ったドリルホーンのステーキを食べさせてあげるわよ」


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 このたび著作の「追放王子の英雄紋! 追い出された元第六王子は、実は史上最強の英雄でした」がアルファポリス様から発売されました。
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